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(…ナターリエ?)
[漣に似る波紋のような。いまだ目覚めぬ人狼の呟きが、湖面に落とされた水滴の波紋が広がるように。声として、まだ届かないものの。]
- 1F・書斎 -
[論述書から童話まで。
ここの書斎には相当量の本が納められていた。
けれど...の目に留まったのは]
これは。
[何枚もの紙が纏めて綴じられた1冊の本。
中に詰まっていたのは数々の風刺画。
そして発行年月日が今から丁度14年前の物もその中に]
14年前…
[...が生まれた前後の]
……あんたも、な。
[変わってない、という言葉に呆れたように呟いて]
ま、お久しぶりとは言っとくが。
俺は別に、神に見守られてたつもりはねぇよ。
[返すのは、例によって素っ気無い言葉]
[クローゼットを漁るでもなく、柔らかなベッドを独占する時間。
鍛冶屋でも床で眠ることも珍しくなかったし、静かな環境など望むべくも無かった。
しかし贅沢とは恐ろしいもの。
ここ暫くは広い個室での静けさまでも自分のものとできていたユリアンには、少々騒がしさを感じたようだった]
もーうるせえなぁ…
[相変わらず服も替えず跳ねた髪はバンダナの下に押し込めて、貪った惰眠の証に眼をこすりこすり、自室の扉を開く]
なに、人の部屋の斜め向かいで騒いでんだよ……
『身分違いの恋!
翡翠の歌姫リベラと若きベルンシュタイン侯爵の奇跡の一夜』
『悲しき結末!
引き裂かれた歌姫は依然として行方も知れず』
『愚かなる貴族の掟!
冷たき侯爵一族は全てに沈黙したまま』
[添えられ踊る言葉は...にとってはどれも衝撃的な物ばかりで]
[呆然とする頭に、描かれた肖像がくっきりと映し込まれてゆく]
[冷たげな青い目をした金の髪の青年]
[寂しげな翠の目をした蒼の髪の女性]
[蒼い髪の女性。
エルザにそっくりな]
り、べ、ら?
[柔らかく響き渡る歌声]
[恋人を心から信じる声]
[弾けるように窓の外を振り返る]
[翡翠の瞳が交われば、微笑した歌姫は新しい歌を紡ぐ]
[それまでとは打って変わった強き歌声]
[己の全てを掛け、力を振るった女の声]
[聞こえてきたユリアンの声にちら、とそちらを見やり]
……別に、俺が騒いでる訳じゃねぇが。
[ため息混じりに言って。
まだわずかに濡れた前髪をぐしゃ、とかき上げる]
あっはっはっは。
[ぎくしゃくとクレメンスは立ち上がる。痛くなんてない痛くなんてないと、子供をあやす時のように自分に自己暗示をかけながら]
君が、一人で生きると言い出した時から、今、君がこうして生きていてくれるという事。
今こうやって、五体満足で再び出会えた事。
こんなに嬉しい事があるかい?
私は、神様がずっと君を見守ってくれていたのだと信じているよ。
[素っ気ない返事ごと包んでしまうような笑顔を浮かべた]
おっと、騒がしくしてしまってすまなかった。
[ユリアン(よく見えない)に振り返りながら頭を下げる]
[湯を流すのを止めて、bath towelで身体を拭いて――名残を振り払うように。]
食事、作らないといけませんね。
きっとおなかをすかせていますし…。
cheesecakeも作るのでしたっけ。
[doorに向かい、歩を進めるけれど。
めまい。
一度壁についた手を押して、open the door...]
……はあ。
[向けられる言葉と笑顔に対して出るのは、呆れたような、疲れたような、なんとも言えない一声]
『……っつか、調子、狂う……』
[声には出さず、心の奥で呟く。
生死ギリギリの世界に長く身を置いていたせいか、神父のマイペースさは、どうにもとっつき難く。
正直、苦手な相手と言えた]
ん…アーベルさんだったんだ。
まあ、騒いだりしないよなアーベルさんは。
…不審者でもいた?
[彼の部屋の前で尻餅をつく男を前にして、呆れた表情をしているアーベルに話しかけ、次いで推定不審人物であるところの尻餅男に目をやった]
アーベルさんは強いんだからな。
こそ泥程度簡単にとっ捕まえるし、何か妙なことしようとしても…
[ユリアンは腰に手を当て、男を見下ろす。
説教をする調子で、振り返り頭を下げるその顔を覗き込めば――]
――クレメンス神父!?…様?
あ、あん……あなた、までいらっしゃったんですか。
こりゃまたびっくり。
[失礼にならないよう、髪を撫で付けかけ違いのボタンを直しつつ]
いや!俺こそすいません。
よく考えてみりゃそれほど煩くもなかったし!
[whenever gold shift to blue.
いつのまにか金は青に戻っていたようで。]
熱が出るといつもsisterが、puddingを作ってくれたっけ。
あれが一番のご馳走だった。
['vox' spill out of the 'heart'...or 'what'?
心か、それとも他の何かか。
それらから零れ落ちる声]
ランプ屋 イレーネは、青年 アーベル を能力(占う)の対象に選びました。
―to corridor / 2nd floor[二階廊下]―
[doorの開く音は小さく。
...はそっと身を部屋から出す。
少し頬が熱いのは、きっとshowerを浴びたから。
そういうことにしてしまえばいい。]
…あ、ら?
[と、左を向けば人の姿。]
[読み終えた本をぱたりと閉じて、一息ついた。
まったく、ここの蔵書はすばらしい。
食事も設備も整って、文句のつけようもない。
地上の楽園といってもいいくらいだ。]
けれど。
[クローゼットにしまわれた、大きな縄はなんのため。
よく手入れがされて、
黒光りするボウガンはなんのため。
体力のない自分のためにあつらえたような、
都合のいい武器の数々。
這い上がる不安に、身がすくむ。
館にいる人間の多くと語らい、
害意のないことを確認しても、
扉をふさがずには眠れない。]
ああ。
[騒いだりしない、と言われれば、短く言いつつ頷いて。
神父と気づいて慌て始めるユリアンの様子には、やれやれ、と苦笑]
というか、ここで駄弁らんでくれ、と。
え…えーと君は…、
[必死にユリアンを凝視。後ろではアーベルが溜息をついているようだったが、必死すぎて、クレメンスには残念な事に聞こえなかったようだ]
あ、君、君は確かナターリエと何時も仲がいい…そう、ユリアンじゃないか。…ユリアン=マルトリッツ…は君の本名だったのか。
いやいや、廊下で五月蝿くしてしまったのは確かだよ。
アーベルと会えたのが、とっても嬉しくてね。
[髭を一度撫でて、にっこりと]
奇遇だなあ。
こんなにも知り合いと出会えるだなんて。
主は、何らかの意図で関係あるもの達を集められたのだろうか。
…そうだ、アーベル。
久しぶりに出会ったのだから、抱擁は駄目でも握手ぐらいはしてくれるかい?
[にこにこ]
(…。)
[やはり気のせいではない。
ナターリエの声が聞こえる。
また風邪を引いたのか。
今、ナターリエの声が聞こえるのは…一体…。]
……やっぱ、どーにもこのおっさん……。
…………あわねぇ。
[これならまだ、オトフリートと『仕事』の話をしている方が、気楽かも知れない。
ふと、そんな事を考え、そんな自分に、微かな頭痛]
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