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異端審問官、というのはですね。
一般的には神罰の代行者とされています。が。
[一度、言葉を切り。]
その実、やる事は『バケモノ退治』ですかね。
人に害成すものを打ち倒すお仕事なのですよ。
[メイの呟きに、答えを返す。]
……物凄く、脅えられてますね。
[ 男から牧師――否、異端審問官の神父へと視線を移し苦笑する。]
それで。如何してまた、其の様な格好を?
いやなに、大したことではないのです。
皆様が人狼の恐怖におびえられているようですから。
『退治屋』自らが姿を現した、という次第で。
もう安心です、と言ってあげたかっただけですよ。
[唇に人差し指を当て、悪戯っぽく笑む。
この場には、やや相応しくない笑み。]
神罰、ね。
[ 嘲笑うかの如き聲。]
神は何もしてくれない。
神の名を騙って、自分達の都合の好いように動きたいだけだろうに。
[ 其れは単に、異端を処分する為の口実にしか過ぎないのだ。]
お前らは何れだけ命を奪っているというんだ?
……ああ。
[ルーサーの説明に対し、こぼれた声は感情がやや、失せていたか]
ばーちゃんに、聞いた事があるよ……。
[小さく呟き。
それから、酷く脅える男性を振り返る。
何故ここまで脅えるのか、と、疑問を感じつつ]
大丈夫……?
[神父姿のルーサーの微笑には、動揺することなく微笑を湛えたまま]
――いいえ?私には神父様にしか見えませんわ?
それとも…自身が『何か別なもの』として身を潜めていらっしゃる可能性があるから、そんな言葉が?
[くすくすと小さな笑い声。少女には悪意は、無い――]
でも…本当にルーサーさんが『何か別なもの』として潜んでいるのでしたら…。わざわざこんな子供の言葉には反応なさらないと思いますけどね。
[さも楽しそうに、ルーサーの仕草を見つめている。]
[自身が味わった経験からか、感覚が麻痺し始めているのかも知れない――]
[ ルーサーの説明には一応納得の様子を見せるも、瞳は一瞬細められ再び苦笑。]
……余計、脅えている方もいらっしゃるようですが。
ああ、そういう事ですか。
確かに、ね。
ま、普段は無害な人物に見せかけていた方が有利な事も多いですから。
で。私が何者なのか、と申しますとね。
神父の皮を被った、死神ですよ。
[ウェンディに向かって、穏やかに微笑む。]
異端審問官。
異形を、そして、異能を狩る者。
ある意味では、味方。
でも、違う視点から見れば。
死者を『視る』力を持つ、異能の一族からすれば。
……敵と見なす事もできる、存在。
……だったっけ、ばーちゃん?
[今は崖の向こうの祖母に向け、心の奥で小さく、問う]
いやあ、そこまで私が計算出来る訳ないじゃないですか。
これを見て余計怯えた方は、彼が初めてですよ?
[相変わらず、その穏やかな微笑は崩れない。]
[ソファの背を][指が白くなるまで]
[ぎゅっ、と][強く掴み、]
ここ、いやだ。
でる…。
[逃げ場を探す様に][視線を彷徨わせ]
[と言うのは真っ赤な嘘だ。
この服を見て怯える相手は、過去にいくらでもいた。
これを見て怯える相手は、大抵相場が決まっている。
バケモノに組するものか、バケモノか。
その二つ。]
[今朝方まで高熱に魘され]
[また]
[ほんのしばらく前には酷い怪我を負っていた怪我人]
[である筈の]
[隙を突いて]
[素早い動きで駆け出し][扉の外へ]
[穏やかに微笑むルーサーの言葉に、少女はますます楽しそうにころころと笑い――]
『退治屋』さん、足元を掬われないように、我らをお守りください、ね…。
[胸の前で小さく十字を切る。既に神を捨てた少女にとって、その行為は冒涜以外の何者でもないのだが――]
[そして続けて付け加えられた言葉には、口許を緩めて]
死神…、一体誰に対してのでしょう…。
でも、死を司る神が…死に追い込まれないように、お願いいたしますね…。
[穏やかな微笑には、同等の笑みを――]
でるって、ちょっ……。
[押し止める間もなく。
動く事もままならないと思っていた男性は、素早い動きで扉の外へ]
……出るって……出られない、のに……。
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