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―――そうか、奇遇だな。
[何に対しての返事なのか、僅か目を細めて言葉を返し。
相手の表情に見え隠れする深さに気付きながらも、尚その笑みは絶えず。
一歩狭まった距離に、臆する事無く視線を向けて]
綺麗になりたいと思うのは自然かもしれないけど。
無理にそれをしようとしたら、どこかでおかしくなると思います。
自然の中で、どれだけ磨くか…じゃないかしら。
[自分でもわかっていないようで彼女は少し首をかしげ]
色は、ほんの少しずつ、変わるものだもの。
ほんの少しでも違うわ。
[それは特に、彼女の目だからか
視線を追い、二人の青年の姿を見る]
自然のままが、一番素敵よ。
思いを込めて、育てられた姿が。
作られたものが。
生まれた、形が。
[場の、張り詰めた空気はそこに居るものたちに何をもたらすか。
エーリッヒの言葉に対抗するかのようなユーディットの微笑み。
その場を逃れようとするユリアンをその力で捕らえて]
まったく、狡猾よの。しかし…
[先程エーリッヒが口にした言葉
人の子よ
で、あるならばそこにいるのは魔ではなく。
であるならば何故このような事が適うのか。やはりオルゴールのせいなのか、それとも]
まだ、何かあるのかも知れんが、の……
[そういえば、後から来る筈の執事が未だ現れぬ事に今更気付く]
……おかしなものよの。
[その執事が、今まさに、魔、と対峙しているとは欠片も思わずに]
[エーリッヒの言葉にクスクスと哂うと]
まさか
貴方様は私の祖先の魂を祖先の持っていたオルゴールに閉じ込めただけ
その容れ物も中身も、全部私の祖先のものでしょう
だから、貴方に権利なんてあるはずがない
分? あはは、それこそ貴方様のエゴじゃないですか
貴方様に私の何がわかると?
[しっかりとこちらが逃げようする退路をふさぎつつ、威嚇までするユーディット。
だがそれもどこか遠い。
恐れ。などそんなものよりも困惑のほうが多く、見事にハイな気分になってんね。俺。なんて自覚しつつも
ったく、なんだよさっきから、ユーディットもなんか違うと思ったらそりゃまあオルゴール持ってんだからしゃあだろうが、エーリッヒもなにかいつもと違うってもうわけわからん]
はぁ…
[と、そんな渦巻く思考をため息一つで問答無用で吐き出す。時間は待ってくれないだろうし、相変わらず危ないのは変わりないんだから]
[『所有者』を主張する女に『創造者』であると返す青年。
その手に生み出される白はユーディットにはどう映るか]
やれ、無理はなされぬようにの。
[それは魔を宿せし青年の身を案じてか。聞こえることはないのだが。
じりじりと張り詰める気配の中、ただその光景を*見守って*]
だが、それを望みしは『歌姫』自身。
嗚呼。知らぬのであれば、教えてやろう。
我は、『望まぬもの』には、何も為さぬよ?
自らの意思を持たずに、ただ、願うものに興味などはない。
[くつり、と。笑みが零れる]
何もわからぬさ、囚われの人の子。
ただ、魅入られるのみで意思を失った……その事にすら気づけずに踊る、取るに足らない存在の事など、な。
[ふわり、ゆらり。
降り積もった羽根が舞い上がり、空間を舞い踊る。
銀のオルゴールは、それに応えるように震えようか]
[はいはい、動きませんよ。とばかりに動きを止めつつ
いい加減驚いてばかりで飽きた。とばかりに二人の言葉にも耳を傾ける。
血筋ってそういう意味か。とか。そもそも作ったのあんたですかい。とか考えていたが、エーリッヒの奥のほうで動く影にそっち驚いた]
なっ、イレーネ。
何来ようとしてんだ。危険なのはわかるだろ……来るな
[普段は気遣う声も若干苛立ちながら]
……そんなの…知らなぁぃ…
私は…私のやりたいように…しただけだものぉ……
[結局の所、少女は魔。
人である女性とは、存在意義そのものが違うから理解できない。
――過去形で語るのは、少女がもう散った華だから]
…ぇ…?
オトフリートは…まだわかるけど……アーベルもぉ…?
[視線の先、青年達は穏やかな談笑ではなく、魔の気配を漂わせる一直即発の雰囲気。
未熟な魔はその存在に気付いていなかったのか、幾度も瞬く]
変質しないように、すれば、何もかも綺麗だと思いますよ。
[伝わっていようがいまいが彼女には関係なく
目の前の光景に*どこか疲れたようなため息を吐いた*]
―――…、
[緩やかに瞬く瞳が、青へ触れる感触と共に微かに揺れる。
紅玉の光は、薄らと蒼を孕んで]
…『アーベル』を起こすのが目的ならば、薦めないが?
[それでも、愉快気に歪む口唇からは、青年の寄りも低い響きを伴って]
だからそのようなことは些細な事
問題となるのはその経緯ではなくて、ただオルゴールと歌姫の魂という存在、なのですから
[そして、囚われているという言葉には]
そんなことない!! 私は私ですわ!! それを捕らえられているなんて
[激昂し、エーリッヒを睨み付ける]
[名を呼ばれる声に向ける蒼が、若干紫掛かっているのは相手には見えようか。]
だって、リジィが・・・っ
だから、これ以上は・・・・
[来るなと言う声に、いつもは薄い表情が珍しく歪んだ。首を横に振って反発の声を上げるも、事実動くことはできないのだが。]
いえいえ。
別段、それが目的という訳ではありませんから。
[白に覆われた手は青の髪を軽く梳けば、
そこから下り、親指の腹で頬を柔く撫ぜようと]
単に、ここ暫く食事をしておらず――空腹なもので。
[目を眇めて紡ぐ言葉は、傍から聞けば突飛にも聞こえたか。
もっとも魔なれば、それが唯の“食事”ではないのはわかろうが]
……人とは、面白きもの。
自らの祖が、何よりも忌避していたことを。
当然の事として為しているのだからな。
[音楽室に響く笑い声は、はっきりそれとわかる嘲りを帯びて]
己が為している事、その意味すら理解しておらぬというのに。
それでも、囚われてはおらぬ、と言うか。
……埒が開かぬな。
そのままでは、お前も取り込まれるぞ?
昨夜の女のように。
[睨みつけられても、魔は動じる様子もなく。
ただ、淡々と言葉を紡ぐ]
……それがお前の『望み』であるなら、我にそれを阻む事はできぬが、な?
[最後の言葉、それと共に浮かぶのは、冷たき艶笑]
[女性の言葉に、少女は苦い笑みを浮かべる。
咲き誇る深紅の薔薇が抱くのは、穢れの黒。
深紅が変質した薔薇――それが魔の少女の本質なのだから]
………ぁ…
[女性のため息に重なるように、少女も小さく息を吐く。
そうして、目の前で繰り広げられる光景に、ただ*見入っていた*]
[イレーネの瞳が蒼じゃない。
…でも関係ない]
そうか…ブリジットが…ま、嘘つくわけもないか
[と一つ瞑目した後。すぐまた目を開き]
大丈夫…な〜んてこと欠片もないが、危険になる人数が増えるのはよろしくないだろ
[なんて、イレーネを落ち着けるためか、どこか日常的なふざけた口調で言う。
…そう関係ない、瞳の色が変われども、それは今までどおりのイレーネならば]
―――生気を欲するか。
目的は違えど…十分に起こしかねん。
[撫ぜられる頬に、くつと喉が鳴る。
更に薄らと蒼み掛かる瞳を隠すように、さらりと、青が零れて]
…何時もなら、多少くれてやっても面白いが
[今は、そういう訳にも行かないんでね。
薄い口唇から呟きを零せば、触れる指を緩やかに外そうと]
煩い! 五月蠅い五月蝿いうるさーい!!
私は歌姫に歌を歌い続けさせる!
それが、子孫としての義務と権利なんだから!
だから私が飲まれる事なんてない!
あるはずがない!!
[耳を押さえ、頭を振って、エーリッヒの言葉を否定をしていたかと思うと、扉とは逆。窓のほうに向かって走り出す
そして窓ガラスを突き破って屋外へ飛び出すと、庭園の方へと駆けていく]
普段なら、頂かないのですけれどね。
流石に、主の客人相手には。
[つまりは異なれば――
主に仇名すものとなれば、別という事。
ある意味では、宣戦布告のようなものだろうか。
外そうとする手に、邸の方角から聞こえた物音に、白は離れて]
おやおや、弁償して頂かねば……
[場違いに暢気に言うと、視線を緩く気配のする方角へ向ける。
吹き抜ける風が花弁や木の葉を揺らし、樹々をざわめかせた]
……やれ、やれ。
[駆け出していくユーディットの様子に、魔が零すのは呆れたような呟き]
……『歌姫』の真意など、何者も知らぬ……か。
[呟きと共に、翠が閉じられる。
……次に開かれた時、翠は数回、瞬いて。
ふるり、頭が数回振られる]
……ったく……話をややこしくするな、『メルヒオル』っ!
[苛立ちを込めて吐き捨てるその口調は、いつもの彼のそれで。
破られた窓の外へ向け、躊躇せずに走り出す]
[口を挟むこともせず脳内で
ユーディットが激昂しているさまはどうにもこうにもどこかで見たような。って昨日だ。とかなんとか。思いつついい加減に落ち着こうと。
首に乱雑にかけただけの薔薇の装飾を軽く弄くる。
そして落ち着いてみて、見事に足枷だねー。なんて、考えていれば
部屋中に響く嘲笑と、それに対抗するような叫び声と、そして窓ガラスを突き破る音]
っっ……
[飛び散る破片に思わず手で顔を覆う。]
それは、気をつけねば成るまいな。
[言の葉の意味を理解したのか、執事の紡ぐ言葉に、くつりと笑みを深める。
そうして、邸から聞えた物音に、ゆるりと紅の視線を向けて。]
―――…来たか。
[まるで、判っていたかの様な。愉しげな響き]
それは、そう・・・だけど。
[何処かいつも通りの言葉に虚を突かれたか、若干口籠った。確かに其方に行けたところで如何にもならないだろう。]
・・・でも、
[続く言葉は、叫び声と割れる硝子の音に遮られた。]
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