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ト、ビー……?
[”あんたが死なせたんだ”悲鳴のような叫びは、いつかの夜、目が合った時に笑った彼の印象とは掛け離れた声。
そしてくぐもった殴打の音。
なにかが倒れる音と、神父を呼ぶ少女の声。
いくつもの音が交差し、よく聞き取れない。
急に薄くなったように思える空気を、ヘンリエッタは吸い込んで、騒ぎの中心へと歩を進めた。]
全く、人狼というものはこれだから。
[大仰に肩を竦め。]
流石に苺と人間を同格にしたくありませんよ。
苺に失礼でしょう。
[そっちか。]
ぁあ、……ぅあ。
[ゼヒ、ゼヒ、ゼィ、]
[呼吸音][喉が鳴り]
[声を出すのも儘ならぬ][そんな様に眼を泳がせ]
[手を喉元に]
[苦痛に喘ぐ][涙で歪んだ視界]
[青年の怒声と][弾き飛ばされた少年が目に映る]
……!!
[ぐったりと倒れた少年]
[蹌踉めきつつも][必死に其処へと近付こうとするが]
まあ。何にせよ。
ナサニエルさんとウェンディに託しておいたメッセージが役に立つ事を祈りましょうか。
[手を組んで祈り、十字を切る。]
誰か…
[医者を…言いかけて思い出す
医者は、来ない]
『……ぅ…』
[トビーが微かに呻いて、その顔を覗き込む]
しっかりしろ、な?大丈夫だ、これくらい……
[嘘。
このままじゃ助からない]
『……何で…ろ…さん……まも……』
もう良い!何も言うな…もう……
[少年の言葉が、少しずつ弱くなる]
……あ。
[トビーがナサニエルに殴りかかって。
ナサニエルがトビーを殴り飛ばして。
その瞬間]
……やめて。
[異能の視界は、ふわりと飛び立つ少年の影を、捉えて]
いやだよ……?
[呟くけれど。
『声』が。
聴こえて]
われらにとっては、人間など搾取するべき資源に過ぎないのだ。
[すっと人の形を取り、彼を覗き込むようにその顎をとる。]
あなたは、苺のほうが人間より可哀想だと、いうのだな。
…そして、職務のためならためらわず誰でも殺せると。
[其れは為らず][もどかしい程の緩慢さで]
[恐慌][不安]
[青い髪の青年が、動かぬ少年を抱き上げようとし]
[少年の頭と][床が][血に染んで]
…こんな話を知っているか?
人狼の牙に襲われて、それでも死ななかった人間は…
その毒に侵され、いずれ獣になると。
われらのような生まれながらのモノとはちがうが、な。
…彼は、殺したな。
大切なものを壊された腹いせに。
[くつり…動かなくなった少年と、うろたえる男をみて哂う。]
まあ、順番に答えましょうか。
[顎を取られても、一切動じず。]
苺云々は言葉の綾ですって。大袈裟ですねえ。
[しばし沈黙。]
……今回の事件が起きるまでは、そうでした。
死んだ今だからこそ明かしますが、ウェンディを実の娘のように思っている事に気付いたのです。
故に、彼女がもし人狼だったのなら殺せたかどうかわかりませんね。あはは。
[自嘲的に笑う。]
/中/
修羅場の途中ですが。
銃型自動結界張り機(だからネーミングセンスが(略))の紋を赤い猫→赤い狗に変えて良いですかorzファビオラさんなので(謎
ちなみにこの紋は施設のマーク也。
…そう、お互い殺し合うのは人間だけ。
神から爪も牙も与えられなかったが故に、
自ら作った禁断の爪と牙で、お互い殺し合う。
[感じた思念に、そうつぶやいて哂う。
既に己の声は其方には届かぬが。]
[抱き起こす、その腕の中で
少年は力を失くして
ぱたり
腕が床に落ちる]
…トビー?
……俺が、殺した……?
[呆然と、目の前の事実を確かめるように呟く]
俺が……
[半ば放心したように、座り込んで]
……毒に侵され、獣に。
へえ。その話は初耳ですね。
生きていれば、手記でも出して書いて差し上げようと思ったのに。
[くつくつ哂う。]
…義兄は姉を殺したのに、お前はあの子を殺せぬのか?
お前の方がよほど、誰でも殺しそうに思うのだが。
[よくわからぬと、困惑の顔。]
[広間の前迄来た時、不意に一瞬だけ、怒声が途絶えた。
ふわりとどこからかスープの匂い。
食欲をそそるはずの南瓜の甘い香りが、何故か場に不似合いに感じた。
そして、少年の名を呼ぶ声。
それに答える声は、聞こえない。]
[閃き][断片]
[血に染んだ骸。]
[……否、其れは肉塊ですらなく。残骸。]
[……嗚呼。]
[斯うして俺は、罪を背負い、]
[自らも罰せられ]
ナサニエルさんがトビー君を殺したのは、単なる弾みですよ。
『殺した』のではなく、『事故』です。
言葉は慎みなさい。
[静かな声色で、感情の色はなく。]
─父さん…母さん…ねぇさ…………………おにいさん…─
[それは、聞きなれた少年の声で。
今朝、自分を必死に呼んでくれた声で。
それが意味する事なんて、理解したくないのに。
巫女の力は。
それを。
現実を突きつけてきて]
……ねえ……どうして?
[掠れた問いは、誰に対して投げられたのか]
あはははは。
人を大量殺人鬼みたいに言わないで下さいよ。
まあ、傍から見れば一緒ですかね。
人の姿をした人狼と人、区別付きませんから。
[くすくす。]
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