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─2階・客室─
[光を感じて目を覚ます。
全身が、いいようもなく気だるいのは、強引な力の行使のせいだろうか]
「エーリ?」
[真白の妖精が呼びかけてくるのに、微かに笑んで、ゆっくりと起き上がる。
……昨夜は、念のためオルゴールを持って部屋に戻り、そこであらゆる意味で力尽きたものの。
未だ、問題は残されている]
……とにかく……このままじゃ、危険、なんだよな。
眠らせ、ないと……。
[とはいえ、それだけの力は、彼には発揮できず。
それが可能であろう魔は、対価なくしてはその力を振るおうとはしない]
対価……魂……過去は……どうしてたっけ?
[呟いて、自身のまとめたレポートを手に取る]
―音楽室―
[僅か色褪せた楽譜を手に取って、ぱらぱらと捲っていく。
自らの傷の所為で、端の方が赤く――今は赤黒く汚れてしまった其れ。
…あんな事があった今でも、結局此処が一番落ち着くらしい。
その事に僅か苦笑して]
[漆黒に染まるピアノの蓋を、かたんと無機質な音を立てながら外し、
譜面の並びを目で追いながら、正確に、撫ぜるように鍵盤に触れる。
左肩の傷で、弾く事は流石に叶わないけれど]
……ん……大抵は、騒ぎの発端……ないし、その場で特に力ある者を取り込んで……って。
……どこまでも、根性いいな、『お前』。
[呆れたように呟いて、傷の辺りを軽く撫でる。
そこからは、笑うような、揺らぐような波動が感じられて]
発端といえば、彼女……なんだろうけれど……。
[ふと、視線を窓の方へと向けるも]
力、ある者……か。
[ふと、脳裏を掠めたのは、昨夜対峙した存在。
アーベルに憑いていた魔は、どうなったのか。
もし、あれがまだ、彼の中に止まっているのだとしたら……]
……確かめた方が、いいな。
[小さく呟いて、立ち上がり。肩に真白、右手に銀を携えて、部屋を出る]
……さて、どこにいるか。
怪我人らしく大人しくしてるならいいけど……。
[廊下に出るなりこんな事を呟き、ひとまず客室へと向かうものの]
……いない……な。
[ノックをしても返事はなく、また、気配も感じられず]
と、いう事は……。
[他にいそうな所となると、一つしか思いつかず。
自然、足はそちらへと]
─…→音楽室─
─音楽室─
[階段を降りて、一階へ。
客たちが『目覚めた』事で、使用人たちは色々と忙しげに動き回っているようだった。
その合間を縫うように、音楽室へと向かい]
……ああ。
やっぱりここか。
[漆黒の前に佇む蒼の姿に、どこか呆れたような口調で声をかけ]
[近づく気配に鍵盤へ落としていた手を離し、ふと視線を上げる。
扉を微かに軋ませ部屋へと入ってきた人物を見やれば、僅かに目を瞬いた]
あれ、にーさん。
…どしたの。
[投げられた「やっぱり」という言葉に、僅か苦笑を浮べ。
その手に収まった銀の光に、無意識に眉を寄せるものの
さらりと青を揺らしながら首を傾げ問う]
ああ……ちょっと、気になる事があってな。
[眉を寄せる様に僅か、苦笑めいたものを過ぎらせた後、表情を引き締めて]
……お前に憑いていたもの……あの魔が、どうなったのか。
それが、気になってな。
消滅したのであれば、問題はないが、そうでなかったら……。
[いずれまた、同じ様に乗っ取られる可能性があると。
静かな声で告げて。
肩の真白も、不安げな瞳を蒼に向けているか]
気になること?
[何、と問いつつ黒い椅子の角度を変え、相手へと向き直る。
しかし続く言葉に、僅かに視線を伏せて]
―――消えては、いない…と思う。
大分、弱ってるのかすっごく微かに…だけど、
アイツの存在が、判るから。
[最近自覚したばかりだし、はっきりとは判んないけど。
と、傷跡へ柔く右手を添えながら、呟くように述べて。
真白の精霊の視線に気付けば、心配するな、と言う様にひらりと手を上げる]
……消えてはいない……か。
[その答えはある程度予測していたもので。
零れるのは、小さなため息。
真白の妖精も、小首を傾げるようにしつつ、不安げに鳴いて]
それで?
お前は……どうしたい?
俺のように特異な状況でない以上、次は……ないかも知れん。
……お前がそれを望むなら。
それを、引きずり出して切り離す事も、できなくはないが。
―客間―
ぐ…ぁ……
[苦痛なうめき声をあげながら目を覚ます。いや、目を覚ますというよりも、気を失っていたのから正気に戻ったというほうが正しいかもしれない。
依然、無茶をした代償は続いて、体に痛みと妙な熱は残り、起き上がることも困難だ。
周りを見渡すことさえも億劫なほど疲労がたまっている。
ただ、さすがに自分がどこにいるのかぐらい確認せぬわけには行くまい。なにせ、矢を放って倒れた後からの記憶が完全に途絶えているのだから。と、目をキョロキョロ、周囲を見る。
ここは、ここ数日で見慣れた自分に宛がわれた客室。そこでようやっと、自分の現在地がわかった。]
運ば、れたのか……
[次は無い、との言葉に、肩へと添える力が僅かに強まる。
其れこそ、今回は運良く戻れた様なものだとは自覚していた。
自分の意思を超えて動こうとする物を御する力は、持ち合わせていないのだし。
伏せ掛けた瞳が、続く言葉に僅かに目を見開いて]
……出来るの、か?
[――出来得るなら。
続きは、声に成らずに。それでも向ける視線が其れを物語って]
出来なきゃ、言わない……というか。
魔と共存なんて、楽な生き方じゃないってわかってるんだから。
知り合いが、無理にそんな状況になっているのを見過ごせるほど、俺は白状じゃありません。
[くすり、と冗談めかした笑みを浮かべつつ]
それに、オルゴールを再び眠らせるためにも。
力ある存在の魂の力が必要になる。
そういう意味でも、な。
[その力を使わせてもらいたいんだ、と。
苦笑しつつ、左手を差し伸べて。
その上に、ふわり、舞い落ちる、白き羽根]
……多少、強引だが……切り離させてもらうぜ?
[最後の言葉は、眠る魔へと向けられたものか。
白き羽根が舞い、蒼の青年の周囲をふわりと取り巻いて]
[普段なら寝たいところだが、苛む体に鞭を撃って起き上がり、ベルを鳴らす。
あの後、どうなったのか。確認しなければ。
ベルを鳴らすという行為が酷く重労働に感じながらも行い、使用人が来るのをそっと待ち…やってきて、話を聞く。
どうやら本当に終わったらしく]
そっか……やっ…とか…
[それは、安堵か、開放感か、途切れ途切れにいいながらもほっと息をつく]
[事情を説明してくれた使用人が、食事や飲み物は?などと聞かれるが丁重に断らせてもらう。
今食べても胃が受け付けず吐き出してしまいそうだし、自分の手を使うほどの気力も体力もない。
使用人に出て行ってもらい部屋に一人になると、またベッドに横になり、痛みや熱。その他諸々自分を苛む不快感に顔をしかめる。
魂を奪われていた人が皆がどうなったとか。色々気になったり、一連の出来事に思いを馳せたりなどなくもないが、今は回復に努めたい
ただ、今言えることといえば。]
あん…な異常な出来事も…真似事…も…二度とごめ…んだ
[なんて…そんなことを言うと*目を閉じた*]
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