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[白梟を追いかけてゆくイレーネたちを見送り。
ふわりと舞う葉を追いかけてハインリヒたちが出てゆくのも見送り]
ここはもういいよね。
[まだ残っていた一人、陽光を宿した青年を振り返る]
エーリヒさん?
祭壇いくならいっしょにいきましょう!
[更に3本の鎖を外した。残るは4本。
既に変化は殆ど解いてしまい、かろうじて輪郭だけは人のそれ。
その状態で左手を振るう。鎖を束ねる紫水晶が光る。
右手はエーリヒの手を掴んで]
影より、影へ!
[そのまま姿が掻き消えた]
―…→祭壇―
力は律されるものだから仕方ないにしても、君たちは特にすごいね。
それとも君が、か? 時の竜、オトフリート。
[ため息を一つ。
手のひらに集まったかれらには、何のコトバを投げるか。]
何ゆえかな。
別に小さきものがわずか残ろうとも、この鍵にも何の影響も与えまい?
『僕の力を、残らずやろう――君たちが僕のことを守る代わりに』
[コトバは、いつの約束か。
時の竜を見据えたままに、苗床は――力を受け入れ、それを変化させるその器は、黒き本を、書を、白い手で強く握り締める]
さて、どうだろうな。
ただ、俺の力は強く律さなくては。
全てを変えてしまう事すら叶うもの。
……存在的には、その『書』と近しいのかも知れん。
[言いつつ。
ばさり、と大きく音を立てて翼が動く]
鍵に影響はない。
ただ。
……共に残されたものに近しき力は、広く混沌に浸蝕されるのみだ。
時とは難しきものだね。
[影を渡り飛んできた、精の様子を感じるも。
ただただ見やるは時の竜。
身体の奥で力は渦巻き、
果実がどくりと音をたてる。]
それを構わぬと僕が言うても、
それすら望むと僕が言うても、
君はそれを赦さぬというか?
[ふわりと増えた気配。
影輝の精霊と陽光の青年。
そちらに軽く視線を投げて]
どこにでもあり、しかしつかめぬ曖昧な存在だからな。
[再び翠樹の魔へと向く視線は、険しく]
ああ。
君ただ一人の問題であれば、捨て置きもする。
しかし、事は君ただ一人の問題ではない。
君と絆を結びし風の子。
そして、君が宿す翠樹の力、それを宿す幾多のもの。
君という存在を介して。
混沌はそれらをも浸蝕しよう。
……それをも、君は望むのか?
[迷宮内。覚束ない足取りで彷徨う漆黒衣の女性
彼女が歩いてきた背後には大量の砂が幾山も残されている]
「キシャーー……ギャァァッ」
[フラフラと歩くナターリエを襲おうとモンスターが襲い掛かる。一閃。そして、ドサリとまた新たな砂の山が作られる
その剣は、大剣から長剣へ姿を戻しているが、「斬れる」という特性を残している時点で元の状態とイコールでないのは明らか
そして彼女の眼も前髪に隠されその色を傍から窺うことは出来ない
果たして今の彼女を動かしているのは、ナターリエ自身なのか。あるいは……
その答えはわからないまま、まるで大きな力に引き寄せられるが如く、その足は一直線に祭壇の間へと向かっている]
[仮令、他に気配がふえども、時の竜へ向かうに、精神は使われる。
果実はいつしか一つの芽を吹き、同時に苗床の指に巻きつく。
厳しき瞳に返すは、しづか、しづかな、決意の瞳。]
今更、だよ、オトフリート。
僕はもう、決めてしまった。
僕はもう、決めている。
関わりあった絆もすべて切って、しまえば。
かれらに、なにも、問題はなかろ?
決めたときより決めていた。
僕は、ひとり、だ。
[口元に、笑み浮かせるも。
その、見えぬはずの金の瞳が――僅かゆらぐように見えるは、錯覚か?]
[近づく月闇の力には気づけども、今は]
彼らは、それを望むのか?
風の子は、翠樹の同胞たちは。
……ティル。
翠樹の領域、『誕生』は。
孤独の内では成立しないものではないのか……?
常に他と共にある事。それが翠樹の律と言えるはず。
[揺らぐように見える瞳を、じっと、見つめる]
[イレーネ、そして白梟と共に、辿りついた其処に二人がいた。]
[一言も言わず、じっと話を聞いていたが。]
……本当に、それでいいのかい?
この世界で生まれた絆も引き千切って。
ひとりになって。
引き千切られた痛み、きっと、簡単には忘れられないよ?
[呟くように、ただ静かに。]
[表情は長い前髪が影を作り見えないが、きっと寂しさを帯びていただろう。]
……さぁ、そこは僕の知るところでないよ。
[声に揺らぎが混じったのは、苗床自身も感じた。
一度、金とあおの瞳を、閉じる。
そうして再び開いたときには、その揺らぎは消えたようにも見えるか……
押し隠した、そのこころ。]
そうだろうね。
だけれど、僕がここに残れば、
少なくともかの女は生まれよう。
かの女と交わした約束を、僕は守るためにここに残るのを望むのだよ。
かの女がいづれ、生まれ、しあわせに、元気に生きることを……
[風の子のところにおいてきた小瓶。
大切に大切に持って――それではいけないのだと、居心地の良い場所だからいけないのだと、思っていても壊すことのできなかったあの小瓶を――思う。]
[漆黒のバイオリンを収めたケースは相変わらず背に。
自分はどうしたものかと考えあぐねている間に、世界の力はくるくると回り始めたようで]
…ちょ、ま。
[ブリスの面影をほんのりと残すそれが左手を掴めば自分は彼女と共に影を渡り祭壇の前に姿を現すのだろう]
…わーお。
[緊張感の欠片もない、けれど唇を揺らしたのは純粋な驚き]
[水の精の、さびしき言の葉。
一度、時の竜より目を離し、かれを、かの精を、目にいれる。
命の竜もそばにあるか。]
……僕は、魔族だからね。
他の誰より、何より……
約束を守ることを、願うよ。
[今更、迷っても。
苗床はそう呟くけれど。
迷いをあらわすように、種たちの動きは、今はとまり。]
君が、過去にどんな約束を交わしたのか、俺は知らない。
だから、それがどれだけ君にとって大切なのかも、知らない。
……だけど。
君は、風の子とは。
何も、約束を交わしていないのか……?
もし、交わしていたのなら。
君は、それを顧みぬという事になる。
……それでも?
―祭壇の間―
……長話が過ぎたね。そろそろ、封印をしようか?
[話すうちに広がる迷いを、振り払うように苗床は首を振る。
黒の書を掴みなおし――
届いた、言の葉。
届いた、質問。]
……それでもかれも、望んでいるよ。
この鍵が、なくなることを。
どうあがいても、無くせそうにないから、
ずっとずっと、なくなるに等しいように。
僕が封じることを――赦して、くれるだろ
[それはないと、かの風の子ならば、許しはしないと。
思っていても、思っていても。]
そのやり方でしか、約束は果たせないのかい?
少しずつ世界は変わってる……。
時を刻むと共に。
それでも、僕は君がこんなカタチでいなくなるのは……寂しいかな。
[ばさり、と。
真白の翼が。
大きく動いて大気を打つ]
……いい加減にしろ。
一人の自己満足に閉じこもるヤツの繰言は、もう、たくさんだ……!
[響く、怒声。
それは何故か、哀しみの響きをも帯びて]
そうして、残されし者の心を殺すか!
そして、俺のように、その悔いの中で存在し続けるつもりか!
その揺らいだ心で、そんな事ができるわけ、ねぇだろうが!!!
……ほんとうに?
彼は今もあなたのことを心配し続けているのに?
[内部を案じるように、風が遺跡の周囲を吹き渡っていた。
ユリアンがティルを心から心配していることを示すように。
気配を手繰る中でそれを感じて]
ほんとうに、それで、いいの?
違うかたちでは、できないの?
[水の精の言の葉は、
しっかりとその寂しさを感じさせる。
染み入るように、それを感じて、苗床は迷子になったような目を向ける。
それから、時の竜の、鋭い声。]
……だったら、どうしろという?
かの女のはじまりすらみえていないのに、
僕の終わりがもうすぐなんだ!
かの女の始まりまでずっと守るつもりができないのなら
変化のなきよう、これを封じる以外、何をすれば良いというんだ……!
[ティルの視線がこちらに向いて、思わずブリスの手が今も添えられた左ではなく右の手で自分の口を塞ぐ。
彼女たちのように風の力を感じることは出来なかったし、かと言って大声を上げるオトフリートに続くことも出来ず、右の手をゆるゆると下ろしながら]
…誰かが後悔する結末なんて…。
[そんなのいやだ、と続けようとしたけれどそれ以上紡げなかった。
自分にはそんな事をいう資格もない気がして]
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