[居間へと足を運ぶ。ソファに座り、紅茶を口へと運ぶ。
テーブルに置かれた、一冊の古惚けた写真集。
娘のために、購入したものだった。生まれた孫が気に入って、ここへ来るたびに開き中を見ていた。
写眞家の名前はAbel=Schachbrett。
いつか、見せてあげたかった]
[テレビからニュースが流れる。その3つ目、懐かしい場所を見た。崩れた古城。カメラが入ったそこは、朽ちた茨と崩れた石像、そして蛇の楽園と化していて。ただ、崩れる城を映した映像の影に、何か飛ぶ姿があった。
TV局か軍隊か警察か。けれど、その影はどこか遠くへと消えていく]
ここは、あの城か。何故、今頃になって崩れた?
あの、石像の中に、あの子が、リーが……。
[テレビに掴みかかるようにして、ソファから降りた。息子に止められて、又ソファへと座る]
「テレビ、消すよ。いい?」
[音が消える。その、数分後に流れるニュース。施設の、生存者を伝えるものだった。
次の日には知れるだろう。52年の歳月を経て、施設から出てきた数名のことを**]