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…いいえ。
[謝られて、また首を横に振る]
私、言わなかったんだもの。
石化病が治るまでは内緒にするって約束したから。
[カルテの改竄。それが意味あったのかどうかは別として、権利が消えないようにと約束した]
心が苦しい…。
そう、見てるだけって苦しいの。
[優しい手の下で、小さく震えた。
甘えさせてくれる人がいると、甘えてしまう]
でも。
向こうにいる人だって苦しいのよね。
心も身体も、両方。
[それが生きているということ。
羨望と、同情のような何かと。声の響きは複雑になった]
[違和感。
ゲルダの様子に眸を眇める。
…この症状は…よく、知っている。]
――…あまり、強く抑えないほうがいい。
[喉元を押さえるゲルダに落ち着いた声で告げて
自分の喉元を抑えて]
…多分、ここに来てる。
薬を使えば落ち着いて…喋れるようになるだろうから。
それまでの辛抱だ。
[足取りはしっかりとしたゲルダに頷いて]
…
[1人は危険。右側だけ松葉杖をついて立ち上がり
少しだけ不思議そうな顔をしてブリジットへ顔を向ける。]
…私は、1人じゃないわ。
[それとも一緒に来てくれるのかと思い、足を運ぶのを止めた。]
云わないように、か。
此方の事情を知ってる人が、近くに居られたんだね。
……イレーネさんを、とても心配した人が。
[イレーネの言葉の意味合いが分って、微笑む。
持病が分かれば、選に漏れると考えた人がいたのだろう。
そう考えれば――きっと彼女は、愛されていたのだと。]
うん。見ているだけって辛いね。
僕も一緒だ……。
[髪を撫でていた手は、
彼女をあやすように背をポンポンと撫でる。
あちらの世界には届かない、声もこの手も。
だから、せめて……]
僕でよければ、辛かったら話して欲しいな。
例えば、生きている人が羨ましいとか、そんな感情だとしても。
[こちらの世界で、護れるものがあるのならば。
それがきっと――自分が此処に在る理由だと。
複雑な感情が混じる声に、浮かべるのは微笑。]
独りじゃないよ。
[それはイレーネだけに向けた言葉でなく。
リディにも――そして、カルメンにも。]
兄さんが医者だったの。
抽選といっても、人の手が関わることだからって。
少しでも研究に近い人のところは、良く行っていたみたい。
[可能性に賭けて、それでも家族で選ばれることが出来たのは自分一人だったけれど]
エーリッヒさんも辛いの?
…そうだわ。同じなんだもの。
[あやすように背中を撫でられて。
瑠璃で見上げると、そっと手を伸ばしてもう片方の手を、その腕ごと握り締めようとした。
疲れていても抱きしめてくれた兄にしていたように]
[ハインリヒの言葉にうなずいて、笑おうとした。
けれど、きっと情けない顔にしかならなかっただろう。
倒れて眠るダーヴ。それに寄り添ったまま辛そうなヘルムートさん。
心配そうに、見つめる。]
……1人では ない?
[ただ不思議そうに その言葉を繰りかえす。
下に行くなら
見るだろうか彼女を
カルメンを 確かめるのが 怖い。
――要らない
――意味などないと、もう]
…、蛇を追い払うくらいは、出来てよ。きっと。
[と、階段を昇る。
それから、階段の上からハインリヒを見下ろして
暫く見つめて]
…後で薬を打って頂戴。
あ〜……なるほど、お兄さんが。
イレーネさんの、お兄さんなら、僕と年齢近いのかな。
[イレーネの印象的な瑠璃を見るたび、記憶の端に引っかかる人。
学部内の新勧コンパで少しだけ話した、
同じ瑠璃が印象的な先輩が
――そうかどうかは分からないけれど。
イメージとして、優しいその青年を、彼女の兄のイメージに重ねる。]
そう。同じだよ……。
[もう片方の腕を握り締められれば、少し驚いた顔をして。
けれど、彼女の兄がしていただろうことをなどるように、
――優しく落ち着けるように、抱きしめた。]
―6の部屋―
うーん、そろそろ大丈夫そうです。
それに見張りもあきたです。
[拳を握り、腕を回して感触を確かめる。
問題ない、痛みは多少あるが周りの人間に比べたら軽症だ。
それに、じっとしてるのはあまり得意じゃなかった]
羨ましい。生きているのは羨ましいわ。
だって触れることも話すこともできるんだもの。
私だって死にたくなんかなかった。
なんで私が死ななくちゃいけなかったの…!?
[話していいと言われて、暗い感情の一部を吐き出す。
心の苦しさが少しだけ減った気がした]
独り、じゃない。
そう。私だけじゃないよね…。
[浮かべられた微笑にも宥められる。
リディを、カルメンを、ギュンターを。瑠璃の向けられる範囲にいるなら順番に見て、息を吐いた]
うん、大丈夫。
独りじゃなかったら、きっと見ていられると思うの。
苦しくても、我慢できると思う。
[ハインリヒとブリジットの疑問形の言葉に
そっと胸元に手を置いて表情を緩めた。]
糸もある。
だけど…蛇は、そうね――お願い。
でも、貴方も…好きじゃないでしょう?
[核心めいたような言葉を伝えて
注射器の入った箱はハインリヒ辺りに預ければ
松葉杖をつきながら歩きだす。]
[吐き出される感情を、唯、抱きしめて受け取る。
やがて落ち着いて行く、少女の頭を、
抱きしめたままで、もう一度撫でた。]
ん。でも、我慢しすぎないようにね。
[少しだけ距離を開けて、
パチリ――と、片目を瞑ってみせる。]
27歳かぁ、僕と4つ違いだね。
同じ大学だったら、どこかですれ違っていたりして。
[きっとお兄さんのように思ってくれているのだろう。
相手の仕草に、そう悟る。]
あはは。うん。同じだね。
多分、君と僕の憤りは――近いんだろうなぁ。
[皆までは言わない――殺された部分が同じだとは。
視界の端にカルメンが映る。
少しだけ困った表情を浮かべた。
聖人君主ではないから。
クスリの副作用かもしれないと思っても、
それでも、自分を殺した人は憎い。
――カルメンがそうだとは云えなくとも。
脳裏をよぎるのは、ナイフを構えていた、彼女の狂気。]
アーベル、大人しくしてるですよ?
僕は外に行ってくる、です。
[ドアを開いてとまった。
念のため釘をさしておくのも悪くないと思った]
勝手に動いたら、ツヴァイにまたさっきと同じ事してもらうように頼んでおくです。
[反論が帰ってくるのは容易に予想できた。
ドアを手早く閉めて逃げるように外へと出た]
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