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[トン、と飛び上がって、頭上にせり出した屋根の縁に片手でぶら下がる。そこを支点に身体を引き上げ、足先が空中に判弧を描くように回転、寮の屋根の上へ。]
さて、
お毀れを頂戴しに行くとするか。
……しかしこれは随分と姑息だね。
……誇り高き捕食者であるということは
武士道精神とは直接的に繋がらない。
[夜半の猫のように足音も立てず、
微かに傾いだ屋根の上を歩いて行く。]
手段は選ばないか。
[眼下に桜の花。]
結果的には効率良く、望んだ世界へ
近付いて行く。
[その下で佇む人影。]
[疑問への答えは返ったか。
いずれにしろ、状況が全てを物語っている……と言えるのだが。
そして、不意に、上に感じた気配。戸惑いが消え、表情が険しくなる]
……俺……ちょっと、上を見てきます。
[呆然とするヒサタカに、小さく告げて。
……仔犬に視線を向けられたなら、微かに苦笑を浮かべるだろうか。
そのまま、校舎へと向かい、階段を駆け上がり──]
……っ!?
……ちょっと……待ってくれよ。
[階段を楽しげに降りてきた姿。
鮮やかな白と紅をまとった姿に、気取られぬように気遣いながら小さく呟く]
まさか……彼女、が……。
[こちらには気づかないまま、下へと降りて行くマイコの姿に、小さく呟き。
ふるり、と頭を振る]
……人は……いくらでも人を殺せる……か。
[妙に冷めた呟きをもらして。気配が十分に遠のいたのを確かめてから、再び屋上へと駆ける]
─…→屋上─
[寮の屋根、端まで歩いた。
輪郭が溶け……否、無数の桜の花弁と化して崩れた。]
それに、
契機がどうあれ
[校舎屋上、細い手すりの上に佇み、
各務誠人へ頬笑む。]
いまの在りようを選んだのは人間自身だ。
刃を取ったのも、人の手、人の意志。
[たどり着いた屋上。
扉にかけられていた力は、大分薄れて難なく抜けられた。
そうして、抜けた先──倒れ伏した姿にほんの一瞬、痛ましげなものが表情を掠める。
けれど]
……確かに、そうかも知れない。
『憑魔』は、人から生じたもの、だから。
[聞こえた言葉に感情の揺らぎは消え、静かな声が零れ落ちる]
……どうも。お散歩ですか?
憑魔は人から生じたもの
憑魔が宿るは人の心
それを否定するお前達は一体何なんだろうね。
水月海は私の事を化け物と言った。
それならお前は一体
何と呼ぶのが相応しいんだろうね。
……それは、ちょっと困りますね。
彼まで、食べられたくないし。
[予想通りの言葉に、表情はやや険しさを帯びて]
人の心を否定はしない。
だけど、『憑魔』のなす事は、容認できない。
それだけのこと。
俺が何なのか……そんなものは、俺が聞きたい……そう、思っていた。
[けれど、と。
そこで、言葉は一度、途切れる]
今は……何だろうと、構いやしない。
人でも、化け物でも。呼びたい者が呼びたいように呼べばいい。
[桜の樹をとんと蹴り、彼女は宙を漂う。水の中に似た感覚が心地よくて。だけども、知っている。もう自分は泳げない魚である事を。]
[幾つもの緋が咲き誇る地上を見下ろし。]
ああ、殺し合いは止まらないんだね。
血塗られた手を現実に、あの人たちは生きられるのかしら?人として。
[言いながら、陽の光へと手を翳す。]
私は、血塗られた手を持つ者にならなくて良かったのかも知れない。
―――そんな手で、大輝に触れたくないもの。
[近づく様子に、自分も同じように歩みを進め]
他に、言いようがありませんから。
[静かに言い放ち。
出てきた名前に、一つ、瞬く]
ウミが……護ろうと……って。
え……。
なん……で?
[目の前で語る者に問うたとて、答えなど得られない。
わかっていても、その疑問は口を突いて]
コトネは……だって……。
[彼女を殺めたのは憑魔。救えなかったのは自分。
いや、憑魔を引き寄せた原因からして、自分と言えるのに。
それだけのはずなのに]
二人……俺と……ケン?
どうして……。
[疑問の呟きは、更に進められた歩みに途切れる。
亡骸を護る位置に立ち、手にした木刀を、下段に構え]
さぁ………………?
[答えが得られぬことを知っていながら問われたと
それを知りながらも尚、嘲るような笑みを浮かべて答えた。
中空から抜き放つ、白い刃。
前後に脚を開いて立ち、上段に構える。]
[嘲るような笑みに、軽く唇をかみ締めた後。
す、と感情の色彩は影を潜めるか]
……触れさせない。
[紡がれるのは、ただ、自身がなすと定めた事のみ。
風がゆらりと、周囲に舞って]
[繰り出された突きは、下段から振り上げた木刀で打ち払おうと。
後ろに庇った状態。
動きが鈍るのは、承知の上。
それでも引かない決意と共に、振り上げの頂点から、振り下ろしの一撃へと繋げて行く]
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