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― 冷凍睡眠装置安置所 ―
[何時の間に眠りにおちたのか
蓋の開いたカプセルの中では、
緩やかなウェーブが小さな海の様に広がっていた]
ん…
[波間に開く二つの蒼]
――。
[そっと上半身を起こし眠たげな蒼が周囲を窺った]
あっ、ごめんなさい。
リーチェは耳で覚えるのね。
私の弾くピアノでも役に立てたりするかしら。
[盲目では楽譜が見られないということに遅れて気がつく。
点字の楽譜などもあるのだが、特にやろうとしなければ触れることもないだろう]
ユリアン、さん。
[そちらにも頭を下げる。
他に知らぬ人から名乗られれば同じようにするだろう]
[差し出されたダーヴィッドの手]
[微かな躊躇]
[そのあとに、重ねて、握り返す]
───よろ、しく。
[大きい手、だなあ]
[それから、目覚めた男を見る]
[綺麗な金色]
[少しだけ、写眞家としての気持ちが、うずいた]
>>603
[アーベルと握手を交わしたのち、また気配を感じてそちらを見る。
確かさっき、オトフリートと話している時にいた女性……]
おはようございます。休めましたか?
[上半身を起こし、こっちを窺う様子に、声をかけた。]
[蹴っても無駄と分かった後、私は一歩下がったところから成り行きを見ていたわけだが、カチャリという音がするとほぅと声を漏らす。]
……これはすごいな。
しかしまあ、どこでそんな技術を覚えたのか気になるところではあるが。
……もしもの時に使えるだろうから、覚えてみるのも手かな。
[ポツリと呟く。割と真面目に悩む私で*あった*。]
出られたって、目の見えない泥棒なんて、いると思うの?
盗むものが何かもわからないのに。
[少しだけ腹を立てた様子で扉の向こうへと。
杖の当たった先にロッカーがある。手で触ると、それがそうだと知った]
ここね。私の荷物、ちゃんと残ってるの、かな。
[いい名前?]
───そうかな。
[わからない]
[ダーヴィッドと握手していたその手がほどけ]
[ハインリヒに軽く首を傾げた]
[目が覚めた女の姿]
[こん、こん、こん]
[お、は、よう?]
[自分のいた装置の淵を、軽く拳で叩いた]
[並んだロッカーの数を杖で叩いて数えて行く]
3行って、10列目。下から、2番目。
[頭に浮かんだのは、眠る前に覚えたロッカーの場所。
パスワード式だったはずだが、鍵が壊れているのか何もせず開いた]
うん、私の、だ。
この感触、覚えてるもの。
[取り出した鞄はキルト生地。ボタンで留められているのをはずすと、中へ手を入れて確認する]
ブラシに、ゴムに、それから。
ん?
[歓声の上がる広間の方を見て。]
鍵、あいたみたい!
ロッカールームだって言ってたよ!
[大きく出そうとすると、少しかすれる声。
それでも見に行こうよ!と元気に駆け出す。]
[鞄の底から取り出した、小さなポシェット。中から取り出したのは、銀の鎖と小さな指輪]
ママ。
あれから、どれくらい経ったのかな…。
もう、誰も生きてないくらい、経ったのかな。
そんな事、ないよね。
[指輪と鎖をポシェットに戻す。他の荷物も鞄に詰めて、腕を通し背負った]
―部屋B―
そうだわ、ここの一番下の段。
[奥まった場所で見つけた鞄は酷くほつれていた。
お気に入りだった麻生地の鞄。どうしてそうなったのかは分からないが、中身共々完全に傷んでいた。
束ねてあった楽譜は張り付き、剥がそうとすれば崩れてしまう。手帳は染みだらけで読むことも書くこともできなくなっていた。
小物入れは無かった。入れ忘れたのか、消えてしまったのか]
そん、な。
[手にしたまましばらく呆然と立ち尽くして。よろよろと広間の方へ戻ると、ボロボロの鞄を抱えて端の方に座り込んだ]
>>611
[アーベルが新たに起きた女性に話しかけるようなノックを送る。その様は少しほほえましかった。彼は不器用なんだということがよくわかる。]
>>615
そうですか。ええ、それはよかったです。
[向けられた柔らかな笑みに、笑みを返す。
さっきは儚げな印象しかなかったけど、今度は親しみがわいた。]
お。
[広間から聞こえる歓声とゲルダの声。
幾つかあった扉が開いたのか。]
ロッカールームが開いたのか。
荷物…荷物か。
無事なら……
[その場に居る者へ、行こうかと促しの視線を向ける。]
[ダーヴィッドがこっちを少し見ていた気がした]
[なんだろう]
───うん。
[躊躇]
[そしてハインリヒに頷く]
[遠い歓声のような]
[なんだろう]
[軽く首を捻った]
全滅より、ましだ。
[数字を告げる声]
[こたえる]
[おぼろげな記憶を頼りに探す。
けれども何も見つからなくて。]
…ぁーぁ、無いみたい。
何処行っちゃったんだろう。
[左の手首には、日に焼けない色の肌がリング状に残っているのに、]
時計、ここにも無かったんだ。
[しょんぼりとうなだれた。]
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