[立ち上がったけれど、その場を離れなかった。
それは、ただ、近寄れなかったから。
エーリッヒの様子が違うのに、焦るような声に、――そして先ほどまでのエーリッヒを思い返して。
彼が、死ぬのか、と。
妙にすとんと頭の中に入りこんだ。
だけれど、ブリジットの声に我に返り、彼女の方へと視線を向けて]
うん。僕は生きるよ、生きるつもりだ。でもね、ここに相棒はいない。
あの時は僕を守ってくれた相棒がいないんだ。
[泣きそうな彼女に、困ったように笑うと、そっと手を伸ばして少女の頭を撫でよう]
まあ、大丈夫だよ。そう簡単に死ぬつもりはないしね。僕は。
……ただ、僕が言えば亡くならなかった子供がいた。僕はね、もう子供を、僕より若い子を、殺すのも、嫌なんだ。
でも、あんまりこのことは、言うつもりはないけれどね。
もちろん、エルにも。
[首の後ろは、隠せていないけれど。
それだけ言って、笑った]