─ 翌日・雪原 ─
[人として人を殺す。
いつもその場は疑心に満ちた闇のような世界だった。
閉ざされ逃げることも許されない中で人間たちは自ら殺し合いを望んだ。
私は毎夜血を啜りながら少しだけ人間の背中を押してやるだけ。
彼らはいつも泣きながら、または怒りを燃やしながら結局は人間を手に掛けた。
自分たちが生き残るために。
私とどこが違う?
彼らも結局は獣と変わらない。
商人を殺した場所に一人立つ。
すでに赤い色はなく真っ白な雪の上で手のひらを見つめる。
この手で二人殺した。
獣の爪や牙ではなく、この手で、人として。]
……なんだ。
もう何も無くなったのか。