……ようやく、逃げ出せたと思ったのに、ねぇ。
帰ってきて、もう大丈夫かな、って思ったら。
[白猫を抱えるその下、胸の膨らみの上。
そこに刻まれた、薔薇の刺青。
後援者となったとある貴族につけられた、『所有印』。
当の後援者が権力闘争に敗れた事と、父の死と。
それらの時期が重なったことで、その呪縛からは逃れることができて。
穏やかな島の暮らしの中、気ままに生きて絵を描くことで、離れていた間の暗い部分は忘れていられた]
なのに……今度は、これ、だものねぇ。
[浮かぶ笑みは、どこか、苦い。
それを案ずるように鳴く白猫の声に、僅かに眉を下げて]