― 東殿・回廊 ― 大丈夫という言葉ほど、 信用できないものはないかと。< 水分を含んだ衣服は無論、濡れた艶やかな黒からも、その合間を通り抜けた指先からも、ぱたぱたと滴が落ちた。 二者が中に入るのを待ち受けていたように雷鳴が轟く。 嵐が来る、そう呟きかけた刹那、内から強い力の波動が感じられた。鋭く向けた視線は足早に回廊を行く老竜の姿を捉える > ……あれは。