[武器もなく、手負いだけれど。女の子一人なら。
……無言で後を追う。彼女が向かったのは、手洗い場]
[入り口の脇に立って、少し逡巡した。
返り血と水で、ぐっしょりしたスカートやシャツが体に張り付く。冷たい。不快だ。
中から聞こえるのは泣き声]
[意を決して、静かに入り口に立った]
[ずり]
[足を引きずる音が、少し大きく鳴ってしまった。
手洗い場の正面に付いている鏡。
その鏡越しに、彼女の泣き顔と、その背後に立つ自分の顔を見る]
………ねぇ
[人殺しの顔は蒼白で。でも目だけが爛々と輝いていて。
自分でも醜いと思った]