─ 演奏会 ─
[大きな拍手>>160に振り向けば、音の主は大工 イヴァンだった。
ユリアンは不安な面持ちで彼と旅の歌い手の顔を見比べる。
数時間前の広間で、「おばあちゃんになっちゃったなぁ」>>159と、
しみじみした声でビルケに語りかけた彼は、
『幻燈歌』にも、数ある歌の中からこれを選んだ歌い手にも、違和感を感じていないらしく。
ビルケを撫でて良いかと問われた>>159こと、自分が笑顔で頷いたことを思い出すと、
ユリアンはしばし思案した。
この胸騒ぎを彼に伝えてみようか、と。
けれども、素直に楽しんでいるイヴァンを暗い気持ちにさせてしまうだけかもしれないと考え直し、
結局、いつものように口を閉ざす。
その場に他の者がいるならば、ユリアンの落ち着かない様子に気づいただろうか?]**