―演奏会―
[そうして、月夜の演奏会が始まる。
冴え冴えとした月明かりの下、朗々と歌われるは『幻燈歌』
その内容を、男自身もよく知っていた。
古くから伝わるお伽。子供の頃、祖父が聞かせてくれた昔語りの一つだった]
(こうして聴くと、なんだか不思議な感じがするな)
[胸騒ぎにも似たそれがどういうものかは今はまだ知らず、同じ音楽家としての興味が赴くままに耳を傾ける。
時折聞こえる何かが軋む音>>#6も、演出であるかのように感じながら]
………そういえば、満月ですね、今夜は
[ぽつり、呟く声は誰かに聞こえただろうか。
それが、何かに符合すると、気付くものはまだいない。*]