―東殿―[十五竜王が封じられた後の『混沌』の為か、気配のない青年がいつ広間に現れたのかは誰にも判らなかった。壁際に佇んで全てを記憶に刻んでいく姿は彫像と変わりない。青年自身が問うよりも他者の言葉に耳を傾ける方が重要であった。青年が気配を取り戻したのは広間を後にした回廊で、秘書としての務めから離れ外の景色に紺碧を向け知らずつめていた息を吐き出した時だった]