―果樹園―
[濃い緑の木々の中を、私は緩慢に歩みゆく。
赤い果実を見れば、喉の渇きと何も食べていない事を思い出して。
私は指先を伸ばし、赤い果実へと触れる]
…いただきまする。
[樹に感謝と謝罪の言葉を呟き、持ち上げるように動かせば、赤はあえなく枝から離れて手の内へと収まった。
私は樹の恵みを両手で掲げるよに持ち、色の薄い唇を寄せる]
[小さく、幾度も齧る音が響く]
[やがて手の内に残るは、果実の種を抱く芯。
私は日当たりの良い場所を探し、土をよけてそれを埋める。
結ばれた実が願う事―― 子孫を残さんとするを果たせるように]