[村を案内してくれと言われる事は時々あったから、その日の申し出も疑うことなく承諾した。
村の中でも人気の少ない外れまで来た時、それまでにこにこしていたその客が急に怖い顔になって、強い力で腕を掴まれた。
客の顔はもうおぼろげにしか思い出せないけれど、その時感じた恐怖心は今でもはっきりと覚えている。
何とか逃げ出して、家に帰り着けた後も、その幻影には苦しめられた。
最初は単に、そいつが戻ってくるのではないかという恐怖。
それが次第に、やってくる他の客が仲間なのではという猜疑心に変わり。
やがては元からの住人まで疑うようになっていた。
あの時探しに出てくれた自衛団の人たちにだけは、変わらず接する事ができたけれど。
半年も経てば流石にもうその手の警戒はなくなったけれど、それでも後遺症のようなものは残った。
優しい振りをしていても、男はいつかみんな、あんな風になるんじゃないか。
あんな風に裏切られるのではないか、と、そう思うようになっていた。
だから極力、関わるのを避けようと思った]