─ 雪原 ─
[視界の片隅散った朱が見えて、一瞬マテウスに爪が届いたのかと思った。
けれど、イレーネの問いかけにそれはすぐに杞憂と解り。
視線を向ければ、丁度彼もこちらに顔を向けていた。
伏せられた瞳に緩やかな笑みを返すと、イレーネの頭に軽く手を伸ばして、撫ぜ]
アタシよりも、無茶した人の心配をする方が先ね。
…エルザも。
そのままでいたら、身体がどんどん冷えちゃうわ。
お風呂いって温まってらっしゃい。
イレーネ、一緒に行ってあげてくれる?
[そう声はかけたが、二人がライヒアルトを心配して離れないなら彼を中へ運ぶまでは一緒に居ることになったろうか。
アーベルが必死に声をかける彼の元へ向かい、一先ず止血を施して]