―自宅―[小川から水を汲んだ手桶を寝台の脇に置く。寝台の上には、結界樹の傍で、結局気を失ってしまったエリカが、眠っていた。アヤメの家に連れて帰らなかったのは、どうしてこうなったのかの説明が面倒だったこともあったが、収められぬままの異形の翼が人目につかぬように運ぶには、人のあまり来ないこの家が都合が良かったからでもあった]落ちないところ、か。[エリカの言葉の真意は汲み取れない。しかしここは湖からも海からも遠かった。どこにも「落ちる」ことはないだろう]