[アーベルがレナーテを運び込んだのに気付いたのは、彼が聖堂内に戻ってきてから。
気付き次第手を貸して、この旅人の借りていた部屋へと運び込んだ。
アーベルの手にあった銀十字は、彼の手で元の持ち主へと返されたろうか。
誰の手で十字が返されたかはともかく、司書を一人にはしておけないからと日中はイレーネとエルザが、夜は男性陣が交代で傍に付き添って]
……あら、起こしちゃったかしら?
[ベッドの傍ら、小さなランタンの灯りで本を読んでいた所に感じた気配で顔を上げ。
微か体を起こした司書に、本を閉じながら苦笑を向けた。
水差しから注いだ水を渡しながら、少しお話しましょうか、と声をかけ]
寝てばかりも暇でしょうし。
お説教するって言ったでしょう?
[向ける微笑みは穏やかだが、声は低く、落として*]
なんで、一人で行ったりしたの。