―後日談(4)ウィー―
[ベアトリーチェの言葉は、とんでもなく酷かった。僕はさすがに面食らって、似た顔の姉を見た。翠の目が僕を捕らえている。少し感情が強かった。
姉の手はあたたかい。僕の手はつめたい。昔は逆だったなぁ、と、握った手の上からくるまれた手に視線を落として思った。引き寄せられて、抱きしめられる。
昔は、自分のほうが小さかったのに、今じゃ彼女のほうが小さい。髪の長さも、逆。今とは全部が反対だった]
酷いよ、ビー。僕は――
「ウィー。あなたが何を言ったって、何をやったって、たまたまかかわっただけで。
数日で。どうやって人の心に入り込もうっていうの。
出来る人なんて、あなたが言った、たとえばヘルムートさんとか。才能のある人ばかりよ。だから……」
[苦しくなるから、ずっとそういうことを考えるのはよしてと、姉は言った。
自分本位な言葉だ、とは思う。だけれど僕は、それだけでないのもわかった。たまにこういうことがある。前に姉に言ったら、ウィーは鈍いと文句を言われたけれど]