―後日談(5)未来―
[何がしたいのかまだ決めきれないので、旅に出ます。
少年はそんなことを言って、村を出た。あきれた顔をした姉に、いってきますと手を振って。
冬の時期をあの村で過ごすことはない。
ただ、緑のにおいがする頃、雪解けでまだ濡れたような土を踏みしめて、その村に入る。
毎年、というわけでもない。時期は決まっておらず、そして人数も。一人で来る時もあれば、数人というときもあった。
数人の時は、奏者や歌手が一緒にいる。未だ花の忘れられない墓の前で、音楽が奏でられる。
人と話していくことも、いかないことも。
その時次第であったけれど、必ず白い花が供えられている。この並んだ墓と、木々に隠れた小さな墓とに]