職人見習い ユリアン

〔その中に、沁み渡るように、柔らかな音色が響いていく。

　開かれた窓から流れ込む風が、
　黒塗りのピアノの前に腰掛ける青年の、
　冬の夜空に似た青い髪を揺らす。
　音を紡ぐ白い指を辿ると、長袖の先、
　雪の華を模った銀細工を連ね、
　中央に石を配したブレスレットが覗いていた。
　陽のひかりを弾いて、煌めく、あお。

　眼は、閉じられていた。
　白と黒の鍵盤を、銀と蒼の腕飾りを、見ることはなく。
　瞼裏の闇に、懐かしき思い出が浮かんでは、夢幻の白に霞み、消える。

　天より降りる淡い花弁が、大地を白く染めてあげてゆく。
　祈りを抱いた旋律が、澄みわたった蒼い空に流れてゆく。

　ほどけて、とけて、混ざり合った。〕