─それから月日は流れ─
[村を発つことを決めた頃。
病魔に冒されることは少なくなり、同年代の子供と比べて低かった背は平均以上に伸びて、細かった腕にもそれなりに筋肉がついたし、武術も学んだ。
当時のいじめっ子たちに怯えることもなくなって、泣くよりも笑うことが、多くなっていた。一番の笑顔を向けるのは、大切な人相手だったけれど]
……父さま、母さま、お爺さま。
行って、参ります。
[幾度も繰り返した説得に、両親が頷いたのは、つい数日前のこと。
逞しくなったフォルカーを、父は相変わらずの渋面で、母は涙を浮かべ、祖父は笑みを湛えて見送る。ちゃんと手紙を書くようにと言われて、困ったように笑う。
住み慣れた我が家を離れるときには、後ろを振り向かなかった。
村の入り口に幼なじみを見つけ、駆け寄っていく]
―――――お待たせ、レーネ。
[伸ばした手は以前より大きくなっていたし、声からは少年特有の高さは消えている。
けれど浮かべる笑みも、交わした約束も、変わってはいなかった**]