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─ 屋敷へと向かう少し前 ─
[金具を手に家を出たところで村役場の人に呼び止められる]
え? 住民票の更新?
あれ、やってなかったっけ?
[けろっ、とすっかり忘れている顔でイヴァンは役人を見た。
その様子に役人は呆れた表情を浮かべる]
あはは、悪い悪い忘れてた。
今ここで書いちまえば良いよな?
[そう言って書類を受け取り文字を走らせた。
立ちながらだと言うのもあるが、字はお世辞にも上手いとは言えない]
──────────────────
■名前:イヴァン・アルホフ Iwan=Allhoff
■年齢:28歳
■職業:大工
■経歴:村で代々大工を営む家の息子。村人が住む家の建設や修理を始め、村で採れる木を使って家具を作ったりもする。製作する家具は村の収入源の一つ。
細かいことは気にしない性質で大雑把な性格に取られがちだが、仕事への姿勢は真摯で自分なりの拘りを持つ、いわゆる職人気質。
両親健在で大工の師匠でもある父とは喧嘩することもあるが、家族仲は良い方。
──────────────────
これで良い?
よし!
[役人は微妙な表情をしていたが、とりあえず良いと言うことになり。
イヴァンは書類を役人へと返し豪快に笑った]
そんじゃな!
[急ぐから、と役人に告げてイヴァンは湖の屋敷へと急ぐのだった*]
[玄関で待っていれば扉が開きエーファの姿>>92が見える。
迎える言葉に表情をやわらげて]
こんにちは、エーファ。
ああ、ギュンターさんに、これを。
[両手に抱えた木箱を軽く掲げてみせる。
蓋のない木箱の中には葡萄酒の瓶が詰められていた。
赴任したばかりの頃、彼には世話になったこともあり
日頃の感謝をこめて新酒を贈るももう五度目となった。
大きく開かれた扉を会釈して通り抜け]
地下に運んでおいていいかな。
[許しを請うて、地下に続く階段の方へと足を向ける。]
─ 自宅 ─
…にしても。
痛い所、ついていったわね。
[持ち運びが楽な様にと、結び目で持ち手を作りながら先に出ていった男の捨て台詞を思い返す。
婚約者に逃げられた女。
正しくもあるが間違いでもある自身のレッテルは、今も尚両親にとっての汚点であり、娘に対しての後ろめたさを抱かせるものなのだろう。
娘の家庭教師でもあった若い画家──彼に今後も援助を望むならと破棄を迫ったのは両親だから。
けれど、それはお門違いな話だと娘は思う]
─ 自宅 ─
…お父様達が何もしなくても、あの人に結婚までする気は無かったし。
[きっと彼はパトロンである両親からより多くの援助を得る為に、私を利用したかっただけだ。
それを見抜けなかった私が一人熱を上げて婚約なんて話になって、引くに引けなくなっただけだった、と。
事実、両親からの反対を受けたあの人は、見るからに安堵した顔で婚約破棄を申し出ていた。
今も覚えている。
離れるのは嫌だと、好きなのにと言い募る私に、向けられた冷たい視線と]
『画家気取りのお嬢さんのご機嫌伺いは、もう終わりだ』
[別人の様に冷めた声で、投げ捨てられた言葉を]
─ 自宅 ─
[結局、彼はより活動しやすい拠点を求めて村を出ていった。
また両親も、娘の醜聞を避けて村を離れ、利便性の高い都市へと移転した。
二人は娘も一緒に来るものだと思っていたらしいけれど、私は彼らに付いていかぬまま、今に至る。
以来、離れて住む両親が幾度となく見合い相手を送り込んでくるのも、また共に暮らしたいからだろう。
娘を想ってくれる気持ちは嬉しいが、けれどもう、諦めて欲しい]
悔しいけど、あの人の言ってたことは間違っていないものね。
[絵で生計を立てる様になった今ですら、女は自身を画家と称したことは無い。
入る仕事は殆どが親の伝手だし、自分自身の絵に惚れ込んで来てくれる人はどれ程いてくれるかもわからない。
せめて、胸を張って画家だと名乗る事が出来るまでは、この意地を通したい。
そのためにも、両親の側から離れている現状を維持したいのだが、どれだけ続けられるだろうか。
そんな思いを深いため息に乗せて吐き出すと、綺麗に包んだキャンバスといつも持ち歩く鞄を持って家を出た]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
…そういえば、久しぶりに外に出たわね。
小父様の所の堤、今年も綺麗に出来てるかしら。
[ぎゅ、ぎゅ、と雪を踏みしめながら毎年この時期の風物詩でもある氷の堤を思い浮かべる。
いつもと変わらぬ様に見える所から細やかな変化を見つける事は、密かな楽しみでもあって]
…ご迷惑でなければ、今年も写させてもらいたいものだけど。
[毎年内外から客人を迎えている屋敷だから、余程でない限り断られる事は無いだろうけれど、と思いながら歩いていたら>>84後ろから声が飛んできた]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
あら、イヴァン。
お前もってことは、貴方も?
[振り向くと早足で向かってくる青年の姿が見えたので、こちらも歩く速さを緩め隣に並び歩くのを待って。
差し伸べられた手から頭一つ分以上高い顔を見上げると、先程自宅で男性に向けていた無表情とは正反対の表情で微笑み]
ありがとう、お願いできる?
重いものじゃないけれど、ちょっと嵩張って持ちにくくって。
小父様からの頼まれものだから、落としたりしたらどうしようって思ってたの。
[なんのてらいもなく包みを手渡すのは、相手がイヴァンだからだ。
子供の頃のお転婆も知っていて、婚約する前も後も変わらない数少ない相手だからこそ、素直にその厚意を受け取れるのだ、と彼は知っているかどうか]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
[イヴァンから頼まれものについて詳しく聞かれたなら、小父様に描いて欲しいと頼まれていた、と答えたりもした後]
イヴァンは小父様の所に何の御用?
やっぱりお仕事?
[歩く速度は緩めぬまま、大工である彼が向かう用事はやはり大工仕事だろうと首を傾げて問いかけ。
その他にも他愛ない話をしながら、湖上の館へと向かっていった**]
─ →ギュンターの屋敷 ─
へぇー、じっちゃんが絵を。
カルメン上手ぇもんなー。
あ、仕事で行くのもそうなんだけど、今じっちゃんのところにオトフリートが来ててさ。
覚えてるか? ベッカーさんとこの。
今楽団に居るらしくて、演奏聞かせてもらおうと思ってんの。
カルメンも一緒にどうだ?
[荷物の中身を聞いたり、問いに答えたりして。
その中でオトフリートのことも話題に出す。
演奏鑑賞に誘いをかけ、返事を貰ったところでギュンターの屋敷へと辿り着いた]
─ ギュンターの屋敷 ─
ほい、到着。
[扉を開け、カルメンを先に中へと通す。
自分も玄関へと入ったところで、脇に抱えた荷物を両手で持ち]
なんならじっちゃんのところまで運ぶけど?
[そう問いかけて、返答の是非を聞いてから次へと行動を移した*]
─ 廊下 ─
[テラスから、という言葉になんでそんなとこから、と訝りながらも指抜きはポケットへ。
こちらのぼやきを感じたのか、何度も頷くユリアンの様子>>94に、この人も人付き合いしない方だよもんなー、なんて思ったのは許されてほしい。
自分も前はそうだったから、その心境はわからなくもないわけで]
うん、他じゃ中々見れない、っていう人多いよね。
……毎年見てると、そうなんだー、って思うけど。
[氷の堤は綺麗だとは思うけれど、この小島で暮らすようになってからは実は死活問題にもつながる事に気づいて、ちょっと見方が変わっている。
場所によっては孤立する、なんて、冗談交じりに教えられて。
その夜は、氷の割れる音が怖くて眠れなかったくらいだった]
ん、たまにはそういう賑やかなのも悪くないしね。
……まあ、寒いのに、っていうのは同意、同意。
[呟き>>95に同意して視線を追えば、共に歩く老犬が目に入る。
経緯は詳しくは聞いていないが、大事な存在だから、と。
そう聞かされているこの犬、自分は別に気にしていないがこちらの相棒的な存在である黒猫は苦手視しているらしい。
理由はわからないのだが]
ん、寒かったら、お茶、好きに飲んでていいからねー。
[ユリアンたちと別れる前にはこう付け加え。
その後はぱたぱた、玄関へと急ぎ足。*]
─ 玄関 ─
あ、じっちゃんに、いつものか。
[示された木箱>>103に、来訪の理由は即知れた]
うん、ありがとね。
置き場は、いつもと同じで大丈夫。
あ、じっちゃん、まだ部屋にいると思うよ。
[広間には降りてきていないから、そう告げて]
そだ、用事終わったら、広間に来てよ。
さっき焼いたばっかりのアップルパイ、まだ残ってるからさ。
[力仕事は手伝うどころか邪魔になる。
故に、ちょっと情けない笑みと共にそう言って。
地下へと向かうのを見送った後、改めて広間へと足を向けた。]
─ →ギュンターの屋敷・厨房 ─
[カルメンとのやり取りを終えて、自分の仕事へと戻る。
途中、エーファに会うことがあれば、今から作業する旨を伝えた。
広間にも寄り、置いていった仕事道具を回収。
ユリアンが居れば、「おー、居たのかー」と声をかけて厨房へと向かった]
さぁて、やるかね。
[一言呟いて道具を手に取り、先ずは金具の歪み具合を確認。
扉側の取り付け部分も劣化してきているようであるため、固定する部分は場所をずらすことにした。
古い金具を取り外し、正しい位置で新しい金具を取り付け、劣化していた以前の取り付け部は補強を兼ねて新しい板を打ち付けておく。
何度か開閉してみて上下左右共にぶつかったり隙間が空いたりしていないことを確認。
勝手口の下部、人が通るために磨耗しやすい場所も、折角だからとテラス修理で余った木材を使って新しいものにしておいた]
こんなもんかなー。
エーファに確認してもらわねーと。
[ひとまず隙間風はなくなった、はずだ。
けれど修理は依頼主に確認してもらうまで終了とはならない。
居るなら広間かな、と考え、片付けた道具を手に広間へと向かった]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
エーファ居るかー?
勝手口の修理終わったぞ、確認してくれ。
[扉からひょいと顔を覗かせ、エーファの姿を見つけるのもそこそこに目的を告げた*]
― 玄関 ―
[いつもと同じでとエーファが言えば>>115頷き]
ああ。
……じゃあ、後で部屋に寄らせてもらうよ。
[ギュンターが在宅である事を確認すれば
挨拶に寄る旨を軽く伝える。
続く言葉に瞬きをしてから、淡く笑み]
――ン。
アップルパイか、それは愉しみだな。
[是非、と嬉しそうな声を向けてから、
木箱を抱えなおして、地下へと向かった。]
─ 広間 ─
[広間に向かう足は急ぎ足。
戻った先には、先に別れた姿も見えて]
あ、やっぱさむ……っと!
[寒いんだなあ、と言うのと、黒猫がこちらにすっ飛んでくるのはどちらが先か]
あー、ほらほらモリオン、落ち着けよ。
大丈夫だろってば、別に意地悪してくるわけじゃないんだし。
[自分の周りをうろうろする猫に軽い口調で言いながら、新たな来客のためのお茶の準備を始めた所で、戻って来たイヴァンから声をかけられた。>>116]
あ、うん、お願いしまーす。
[軽い口調で言いながら、それでも、誠意を込めてぺこりと頭を下げる。
それから改めてユリアンのためのお茶とパイを用意したり、次に使うカップを温めたり、と動き回って]
あ、終わったの?
さっすがにーさん、はっやいなあ。
[再び顔を出したイヴァン>>118に向けて、にぱ、と笑う]
じゃ、お菓子の追加もしたいし、見に行くよ。
ほら、お前もこい。
[イヴァンに頷いた後、黒猫をひょい、と抱え上げる。
黒猫は、にー、と鳴いて、大人しく腕の中に納まった。*]
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