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[ふ、と呼ばれた名に息を吐いてマテウスに向き直る]
おかえり、はあたしが言うこと。
…おかえりなさい。
[翠玉の眼差しは、頬を掻くその様子を真っ直ぐに捉える]
本当に悪かったと思うなら、それでいい。
今回の事は災難としか言えないけど…。
ん、会えて、少し痛そうだけど無事って分かって良かった。
それならばよろしいのですが、……と言ってもよいものか。
[苦笑を滲ませる]
いいえ、お気になさらずに。
…………何か、
[階下であったのか、と尋ねようとして、相手の体調を気遣い、言葉を止める]
おやすみなさいませ。よき眠りを。
ただいま。
戻るのにはちょっと勇気がいったけどな。
[懐かしむようにゲルダを見て]
ゲルダも大きくなったな。
15年かぁ……。
[この村に来て何度目かの思い]
ゲルダの方も元気そうでなによりだ、村の皆も。
だいぶ、変わってしまったけどな。
[じゃお先に、と廊下の二人に声をかけて]
[エーリッヒが確保してくれたであろう部屋を探し始める]
[ややあって自分の名が書かれたメモが挟まれた扉を見つける]
てことは隣のどっちかがベアタの部屋、と。
[どちらに居るのかノックで確認]
[返事のあった方に顔を覗かせ、体調の確認をしてから自分の部屋がどちらにあるのかを教える]
丁度寝台のある壁のが俺の部屋がある方だな。
急に苦しくなったりしたら壁を叩くか何か音を鳴らすと良い。
部屋に居る時はそれで気付けると思うから。
[そんな話をしてから、再びお休みと挨拶して]
[自分も隣の部屋に引っ込んだ]
そんじゃ、しばしの休息っと。
[仕事道具を寝台脇に置いて横になると、すぐさま意識は*夢の中へと*]
―広間―
[紅茶にミルクと砂糖の両方を入れ、両手で包む。
息を吹いて冷ましてから、こくり、口にした]
ナターリエもあたしも、家では一人だものね。
[両親を亡くした時は、真っ先に彼女を頼った。
そんな記憶が頭の隅を掠める]
食べ溜め。
せめて、もう少し量を食べられたらいいとは、いつも思う。
少なくとも、他人の手を煩わせずにすむ、という点ではいいことさ。
[苦笑には、こちらも苦笑で返し。
途切れた問いの内容は、察しがついたから、一つ、息を吐いて]
……下に、自衛団長殿がおいでだ。
今回の件についての説明をしてもらえるから、聞いておいた方がいい。
……もっとも、聞いて楽しい話じゃない、がな。
[最後の部分は、吐き捨てるような口調で言い。
良き眠りを、という挨拶にはああ、と頷いて、足早に自室と定めた部屋へ向かった]
楽しい話でしたら、あのような扱いは受けないでしょうね。
[その部分には同意を示すような言葉を返し、ライヒアルトとは反対の方向に歩みだした。階段を下り、広間へと入る。
先程の賑わいとは、やや種を異にした空気が漂っていた]
─二階・個室─
[部屋に入ると、零れ落ちるのは一際大きなため息。
直後、その場に膝をつく]
ち……ああ、大丈夫だ、ヴィンデ。
[肩から飛び降りた猫が案ずるように鳴くのに、笑みを向けて、立ち上がり。
ノートとカップを小さな机の上に置いて、倒れこむようにベッドに横になる]
……Es ist unheimlich nicht geworden verdorben.
Verunreinigung. haben Sie das Zögern nicht.
[掠れた声が、言葉を紡ぐ]
……けれど。
……悪夢は……もう、いらねぇ……。
[ついで、振り絞るような呟きが零れ。
意識は深い、*眠りの淵へ*]
うん。でも、戻ってきてくれてうれしい。
[ことん、と静かな頷き。
懐かしむ視線に首を傾げるも、表情は乏しく]
あたしの事ばかりは言えない。
大きくなったのはマテウス兄さんもだし。
……その顔の傷は、痛く無いの?
[稼業については手紙で知らされていたものの。
初めて見る頬の傷口を労るように指を伸ばした]
村は、変わった?
ずっといるから、あたしには分からない。
― 集会所一階・広間 ―
[先程見た顔は幾つかが消え、幾つかが増えている。
一つは、ライヒアルトの示した通り、自衛団の長たる老人。
もう一つは、]
……ゲルダ? 貴女まで、ここに?
[階段を誰かが下る音。
自然、翠玉の眼差しはそちらに向いた。
呼ばれる名に、こくり、頷いて]
うん。あたしも、容疑者だって。
ウェンデルもなんだよね。エーリッヒから、そう聞いた。
[淡々と語り、そして呟く]
でもあたしには人狼なんて、やっぱりお伽話にしか思えない。
本当はもっと早くもどってこれたらよかったんだけどな…。
[首をふって]
今さら後悔しても遅いことだけどな…。
一人にさせていて、悪かった。
[頬にゲルダの指が触れるのを感じながら]
昔についたものだ、今は痛くないさ。
そうか、俺も変わってるんだな、あのときから…。
[笑いかけて久しぶりの再開を喜び、
抱きしめようと手を伸ばしかけて、
ためらいがちに留まり]
村は、雰囲気はかわらないな。
住む人は、だいぶ変わった気がする。
幼馴染もなにもかも、見知った姿から変わっていた。
でも、皆…、変わらず俺のよく知った知り合いなんだとは思った。
そう……だったんだ。
ええ、僕も。
全く。なんと言っていいのか、わからない。
[幼馴染の中でも歳の近い彼女に対しては、口調はやや砕けたものになる。
言葉を続けようとした矢先、一つの単語が引っかかり、目を見開いた]
人、狼?
[ウェンデルの言葉に]
そういえば、そうかここにいるってことはゲルダも容疑者の一人ってことか…。
まったく…、なんでこんなことに……。
[呟いてからウェンデルに軽く手をあげて挨拶をし]
俺が容疑者って言われるのはわかるとして、
まったくもってゲルダもウェンデルもなんで呼ばれたんだろうな。
ああ、そうだゲルダ、俺にも紅茶いれてもらっていいか?
ウェンデルも、飲むよな?
[その様子は先ほどのことをごまかすかのようで、
ゲルダにはその様子がありありと伝わるであろうか?]
反省して。たくさん。
一人暮らしは、それなりに自由で楽しくもあったけど。
[半分は冗談。半分は本気。
そのような態で口調は語る。
傷口を撫でる指先は、言葉よりも雄弁に優しい]
うん。
…何も変わってなかったら驚きだけど。
でも、兄さんは兄さんのまま。あたしにとって。
[躊躇い留まる腕を、翠玉が不思議そうに眺め。
こつん、と額をマテウスの胸元に当てて離した]
きっと皆、根っこが元のままなのね。
あたしは、災難ね、で済ませたけど。
ウェンデルなら…神の試練とか言うかなって。
[相も変わらず、乏しい表情。
本気か冗談かは判りにくく]
…さっきの話しの時居なかったものね。
[自衛団長からの話しをかい摘まんでウェンデルに伝え]
だから暫く此処に居なくちゃみたい。
[視線は自衛団長へと移った。
老人は黙して頷き、声無き問いを肯定する]
……そのようなものが、
[眼を伏せて思考に陥りかけたところで、マテウスの声が届き顔を上げる。
おかげで、彼の不審な挙動には気づかなかった]
あ、はい。いただきます。
今から言っても仕方の無いことだし。
割り切った方が、早い。
――…マテウス兄さんが容疑者な理由も、私たちが容疑者な理由も、きっと似ている気がするけれど。
[じい、と翠玉はごまかそうとするマテウスの態を見て。
それは、どこか諌めるよう。
ポットから紅茶を注ぎ、*差し出す*]
どうぞ。
[ゲルダに図星を突かれ、やましくもないのに言葉に詰まる]
……へこたれては、いられないからね。
[苦笑と共に、遠回しな肯定。
しかしその表情も、彼女の説明を聞くにつれて失せていった]
神学校でも、幾度か聞かされた。
人狼は人間に仇なす者。
昏き闇より生まれ神の意にそぐわぬ者。
その存在を赦してはならないと。
[呟くうちに、言葉は呪詛めく。
睫毛の作る陰のためばかりでなく、その瞳は、くらい]
ああ、反省している。
ただ、これだけは信じてほしい。
皆ことを忘れた日はなかった、
ゲルダのことは気がかりだったんだ。
[胸元にゲルダの重みを感じて、
年月の経過をその重みにたしかなゲルダの存在を感じて]
ありがとう、ゲルダ。
[迷わず抱きしめて]
会いたかった、ずっと。
ずっと戻れるなら戻りたいとも思っていたんだ。
でも今、こうしてようやく会えた。
[少ししてゲルダを離し、
少し気恥ずかしそうにしながら]
ありがとう。
[差し出された紅茶を一口]
そうだな、容疑者の理由。
動機とかそういうのは一切関係無しって感じだったからな。
[ウェンデルの話す説明に顔をしかめながら]
だからってうちらをこんなめにあわせるのは…、
どうなのかね…。
そういえばウェンデルは何か知っていたりしないか?
その、人狼を見つける方法とかな。
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