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エーリッヒ君。
ならば、私にもっと生き続けて、貴方の周りの人を全て死なせたいのですか?
家族も、友達も、好きな人も、全てなくしてしまう前に終わらせるのは今更の話なのですか?
……どうしても、私を生き残らせたいのならば、その代わりに全てを失う覚悟がある、ということですよね?
[醜い。
凄惨な生き残り競争]
――…誰が、それを引き起こしたと。
貴女がたの、存在が全ての、元凶では。
[傍らに置いたカップ。
掴む手が震える。
思考が遠くなり、朱い花が熱を抱く。
真実を知らぬ、若い聖職者は人狼の悪を信じている]
諦めだよ。
これじゃ、あの人はおさまらないもの。それはおばあさまも知ってるはずなのに…。
「場」が何かはわたしには分からないけど、きっとそういうことだと思う。
[ヨハナの返答に静かに頷きながら]
そうか…、
人か人狼か…、どちからが息絶えるまでが…
[手を握り胸を押さながら]
どうする…、皆が…やりにくいというなら汚れ役…かってもいいが?
[自分は意を決したように皆にそう告げた]
[もしも、ヨハナが人狼でなければ、終わりは来ない]
[それでも、彼女自身が人として、終わりを望むならば]
………?
[子供は眉を寄せる。青い花がじくりと痛みを与えた]
……いいや。
もうこれ以上失うのは沢山だ。
[全てをなくす。そんなことに耐えられるはずがない]
俺は選ぶよ。
それは、ヨハナ婆じゃ、ない。
[既に一度、老婆を貫いた冷たい金属を。
再び手に取ろうとする]
[予想していた物とは少し違う宣告。
だが妥当な宣告にふんと呟いて。]
婆もまた、在る様に生きるか。
[死んだ能力者達はその道を違える事なく逝った。獣の子もまた。
自身の今の際にすら、残したものを省みるより獣の末路を喜んだ。
省みて心を残すよりはずっといいと思って、そうした部分もあるが。]
しかし…こうも道に従順に生きさせる事が出来る。
恐ろしいものだな。
[場という存在も、教会という場所も。]
[朱花の主の熱が移ったかのように、胸の炎が熱くなる、けれど、それを冷ますような痛みも去らず、子供は混乱する]
ヨハナ………
ヨハナは、ほんとうに………
[どちらでも良いはずだ。終わらせるのが役目。子供は信仰によってではなく、ただ植え付けられた役割を演じているだけ。疑問など、抱いてはいけない]
ウェンデル坊や。
私が醜いと言っているのは、少しでも自分と違うところがあったのならば排除しようとする人間の姿勢ですよ。
人間は、人間を殺す。
人狼は、人狼を殺さない。
なんて……恐ろしい種族。
そもそも、人狼でさえ―――「人間」が作り上げたのに!
……確かに、御婦人がここで身代わりになったとて、『場』は開かれない、が……。
[呟いて。
目に入った動き]
……家主殿……?
[刃を取ろうとする動き。
微か、眉が寄った]
…気のせいかもだけど、殺すときのウェンデルさんやエーファちゃんはちょっと嬉しそう。
わたしたちに似てる。
[周りの声も聞かず、ウェンデルは険しい表情をヨハナに向けていた。
今にも襲いかからんばかりに。
しかし叫ぶような声に、目を見開く]
――…人間、が?
いや。
マテウスはやめておいてくれ。
ゲルダのためにも。
[汚れ役。全幅の信頼を置いているのだろう相手を。
彼女から奪いたくなかった]
今のゼルギウスにやらせるのも、嫌だしね。
[それは優しい言葉をくれた老婆への想いの残滓。
そして右手に冷たい銀色を抜き取って]
[噛み合わない。
言葉を交わして思い浮かんだのは、そんな言の葉]
あたしは、ヨハナ様が終わりを望むのなら、叶えたいと思うけど。
あたしが人狼だったとして。
同じようなことを言った気はするし。
[たった一つの懸念は、誰がそれをやるのかと言う事。
名乗り出たマテウスに、翠玉の眼差しを送る]
…マテウス兄さん。
……ああ。
ここまでの『束縛』を、他者に与える。
……恐らくは、それすらも、『信仰』に基づくのだろうな。
[ナターリエの言葉に、小さく呟いて。
ベアトリーチェの呟き。
また、嘆息が漏れた]
……それは、気のせいではない。
『要素』として与えられた役割に殉じるならば、快楽が与えられる。
抗えば、同等の苦痛が、な。
[青い花がうずく、子供は自らの肩を抱いた。老婆の言葉、それを、子供は、聞いた事がある。失われた記憶のその向こう側で]
…………エー、ファ…………
[人狼は人間により作られた]
[それには、へぇ、と小さく声を漏らす]
[お伽噺として聞いていた人狼は実在し]
[それは人の手により作られた]
[何もかも発端は、ヒト]
[理由もなく、滑稽に思えた]
[周囲から自分の名を紡ぐのが聞こえた]
[真紅はそちらへと流れる]
[それは先日ヨハナを刺した人物]
[彼がまた、手を下すと言うのか]
フン。
死にてェって言ってんなら、とっとと殺しゃァいいじゃねェか。
[声][口唇に笑み引き]
[宙から][見下ろし]
ダレが手を下そうが、どうせ同じなんだからさァ。
思い知っておきなさい。
「探すもの」も、
「守護するもの」も、
「象徴たるもの」も、
「牙をもつもの」も、
全て、同じ場所で作られた兄弟だということを。
貴方達は既に、兄弟を手にかけているということを!
[エーリッヒの言葉にうなづいて]
気遣いは、ありがたいが―――
[言葉を返そうとして]
人が……作り上げた?
[ヨハナの告白に驚いたように、その真意を確かめるように視線を向ける]
へえ、すてきな皮肉ね。
うん、ますます好きになっちゃう、エーファちゃん。
[わたしは、うっとりと呟く。]
あたしは、エーリッヒが壊れるのだって、嫌なんだけどな。
[小さく落ちる言の葉が届いたとして。
気には、ならなかった。
人間が作った。
告げられたそれを考えるほうが、よほど優先されたから]
……それは。
あの時の、答えの意味……?
[かつて、師父に向けて投げた、問い。
何故、人である師父が。
何故、神の使徒たる貴方が。
問いに、師父は答えず、哂った。
そうして、自分とっては、皆同じ、なのだと。
自分も、友も、人狼も、全てが、と──]
[聞こえた声。
軽く、視線を向けて]
……お前か。
[アーベルであり、彼でないもの。
それと確かめると、小さくこう呟いた]
[けれど、それは口にされてはいけないことだ]
どうして…
[止めなければ]
そんなことを…
[子供は、武器を手にしていないことに気付く、視線が彷徨い、エーリッヒの手元に止まった]
同じ――…
[人間も人狼も、同じく生けるもの。
そうであるのなら。
同じく、神の作った子。
その事すら、思考から外していたというのに。
同じ場所? 兄弟?]
………っ、嘘を、言うな!
[老婆の言を肯定すれば、全てを否定する事となる]
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