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いえ。
今のは、僕も悪いので。
[遠慮なく手は借りる。
問われた言葉に瞬いて、笑った]
持ってますよ。
それにエーリッヒさんの服だと、僕の身体には大きすぎます。
[身体を見比べて、ね、とやってみせ。
肩の黒いものに気付いて、首を傾げて手を伸ばした]
─広間─
[短い返事と共に、暖炉へと向かう昔馴染みを見送って。
同時に入ってきたユリアンにも、や、と短い挨拶を]
うん、そう。
「少しでも、のんびりできますように」ってね。
[イレーネの問いには、冗談めかした口調でこう返す]
……祖母ちゃん譲りの、ちょっとしたお呪いですよ。
─広間─
水浴びって……この時期に何を無謀なことを。
[ユリアンをアホの子を見る目で見た。言いながらも紅茶をカップに注ぎ、ユリアンへと差し出す]
そうだな、貰えると嬉しい。
[イレーネにはそう言って頼んだ]
すまない。
…相変わらずだな。
[場所を開けつつ垂れているユリアンに苦笑を浮かべるが、疲れが滲むのは否めない。
暖炉前の床に座り、冷たい身を守るように膝を抱えた]
[ユリアンたちが戻ってもまだ埋葬された場所に残っていた。
引き摺るのは何か。引き摺られるのは何か。
見たいのは何か。
見たくないのは、何か。
ドサ、と針葉樹の枝から雪が落ちる。
その音に背を押されたかのようにして建物の方へ移動した]
ああ、一応俺のよりも小さいサイズの服もあるからな。
[子供用とは口にしなかった、以前のことがあったから]
あるならいいんだが。
さすがに俺の着てるサイズの服はな。
[伸びる手には気付かず。
特に隠すつもりもない様子で]
─広間─
少しでも、のんびりできますように…。
[冗談めかした口調のオトフリートの言葉。反芻するよに言って、カップに視線を落とした]
おまじない…。
そう言うのもあるんだ。
[初めて知った、とたゆたう色つきの水面を見つめる。縹色を瞬くと、水面に映った瞳も瞬いた]
―広間―
…………ユリちゃん。
何とかは風邪引かないっていうけど、それって迷信だからね?
[水浴び云々という声が聞こえれば、ホットレモネードの入ったマグカップを両手で持ったまま、そんな事を言う]
―勝手口から外―
村の連中を疑いたくないのはわかるがな。
[はあ、とため息をつく。
見えない表情は敢えて窺おうとはせず。
ただ震える手元に気付けば]
とにかくさみい。俺はさっきからずっと外にいんだ。
そろそろ凍えちまう。
お前さん、早く井戸で水汲んでこい。
[早く戻ろうと促した。
もちろん、寒いから震えているとは思っていなかったが]
─広間─
……ミーネ?
[暖炉の傍に座り込む姿。
いつになく、疲れたように見える様子に僅かに眉を寄せ]
……ユエ。
[小さく猫の名を呼び、目で暖炉の方を示す。
猫は相変わらず物言いたげにじいいいいい、とこちらを見上げていたものの、やがて、渋々という感じで足元を離れ、ヘルミーネの方へと向かった]
―広間―
あ、あたしも料理作るときとか、お酒注ぐときとか、おまじないするよー。
『おいしくなーれ、おいしくなーれ』
って、胸の中でお祈りするの。
[オトフリートとイレーネの会話にはそうやって割り込む]
―広間―
後で頂くよ。
[ローザに片手を上げながら、そう答える。
視線は再び暖炉の火へ。
ユリアンの水浴び発言には何も言わない、というか自分もやってたので言えなかった]
朱。
[燃える火を見つめて、呟く。
途端熱を持ったような痣に眉を顰め、そっと手で押さえた]
[食べれるならばという言葉には少なく首を横に振るのみで答え]
はぁ仕方ないだろ…エルザ運んだときに血がついちまったんだから
血まみれでうろついても構わない…はずないだろ?
会う度に叫び声と気絶をワンセットでお届けするやつもいるわけだし
[イレーネの視線やローザの言葉に肩を竦め答える]
[離れる前、そっとバンダナに手を触れた。
もう消えているはずの、感じられないはずの温もりを求めるように。
そして気がつけば光の中に、それでいて光の外に佇んでいた]
あぁ、商売品です?
[小さいサイズという言葉に、なんとなく納得したような声音になる。
流石に子供用とかは考えてないようだ]
ここに来るまでもけっこうありましたから、服は替えがあるんです。
――…?
[気にしない様子に、ちょっと指先で触れてみて]
これ、どうしたんですか?
[こういうのは見るのが初めてなようで、首を傾げた]
─広間─
[割り込むよに聞こえたローザの言葉。はた、と何かに思い当たる]
……あ。
もしかして、前にオトさんが言った、”気持ち”?
[紅茶のカップから視線を上げて、ローザとオトフリートを交互に見やる]
─広間─
ええ。
……前にもちょっと、言ったかな。気持ちの問題、っていうの。
あれも、同じですよ。
[カップに視線を落とすイレーネに、こう言って。
ローザの言葉に、そちらを振り返る]
ああ、なるほど。
それもあって、あれだけいい味が出るんですねぇ。
[返す言葉はのんびりとしたもの]
ま、これが一番今は楽ですから。
[たれたれもおふざけではないというようにヘルミーナに答え]
ヘル姉は疲れてるみたいだけど…大丈夫?
[続く朱という独り言には聞こえなかかったように表情は変えることなく振舞った]
―広間―
[イレーネには礼を言い、紅茶を左手で受け取った。
脇腹から手を離して、カップを両手で包む]
ん。
…嗚呼、ユエ。
[昔馴染の声に振り向き、直後その目は猫を見る。
撫でようと伸ばす手は、まだ大分冷たい]
─広間─
……それは、そうだけども。
沸かすぐらいはすれば良いのに。
ユリさんが風邪引いちゃう。
[血まみれでうろつく、との言葉には軽く眉根を寄せたが、そう続けて。でもユリアンなら風邪も引かなそう、と思ったのは口にしないでおいた]
でも、
[ハインリヒの返答は、聞いているのかいないのか。
彼の声が途切れたのちに唇が動く]
たとえ、村の人が、そうだとしたって。
僕は――……………
[促しに従うよう、少年の体が、一歩下がった。
しかし、そこからなかなか、動こうとはしない]
村の長たる者は、為すべきことを、為さなければならない。
[ひどく、冷えた声。
桶を持つ手が、持ち上がった]
[エルザの名が出れば、指先は微かに震えたか。
軽く目を閉じてから]
…まァ、な。
ちょっと、夢見が悪くて…
[呟きが聞こえていたとは知らずに、相変わらず垂れ続けるユリアンに振り向く。
原因は夢では無かったけれど、そう言って誤魔化した]
―広間―
「朱」
[小さな呟きが傍で聞こえた。
そういえば彼女には知られていたのだった]
蒼花。
ごめんなさい。
[朱花を宿している時は、その知らせを確りと受け取ることが出来なかった。苦しみすら理解が出来なかった。
けれど遺された対は苦しんでいる。表情からも窺い知れて小さく謝り手を添えた]
ああ、それな。忘れてた
正確にはそんな考え浮かぶような余地がなかった感じだな
[沸かすという言葉にはきぱっといった
イレーネに内心どう思われてるかについてはしらないまま]
今から温まればなんとかなるって。
[ぎょっとしてるオトフリートには気づかずに大丈夫大丈夫というように手をひらひらさせた。]
[イレーネの視線とオトフリートの反応に、にっこりと笑顔で]
ふふふふー。
料理は愛情、お酒は真心。すべてに共通するのは笑顔…ってーのが母さんから教わった基礎だから。
笑顔と愛情と真心が篭った料理は、多少失敗してもそれなりに美味しくなるんだよー?
[つまり、失敗した場合はすべて笑顔で誤魔化してきた、ということだ]
………うん、でも水浴びはやりすぎでしょー。
風邪引くよ、いくらユリちゃんでも。
─広間─
[言うに僅かに先んじて、イレーネが気づいた様子にほんの少し、笑む。
部屋の暖かさと紅茶の温かさに、大分、気が静まっていた。
だからと言って、抱える悩みが薄れるわけではなかったが]
[一方、猫は伸ばされる手を避けようとはせず。
案ずるように、自分からすり寄る仕種をしつつ、なぁ、と短く鳴いた]
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