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[早朝、浅い眠りから目を覚ますとまだ眠ったままのゲルダの姿。
起こさないようにそっと頭をなで笑みをこぼす]
15年…か……。
[呟く。
ゲルダが起きれば笑顔でおはようと*むかえるだろう*]
─回想・広間─
ん、よぅマテウス。
[何をするでもなく広間のソファーに座っていると]
[マテウスがやってきてしばし話をする]
[団長のこと] [人狼のこと] [今後のこと]
[その会話の中でゼルギウスが人狼の存在を認めていることが窺い知れただろうか]
ああ、そうだ。
ライヒアルトから聞いたんだが──。
[人狼の対処法]
[人の姿をしている間は人と同様の方法で対処出来ると]
[場合によっては変化後でも勝てる可能性があると]
[自分が知る中では最も荒事に向いている男にその情報を明け渡した]
で、物置か薪小屋に使えるものがあるかもしれない。
俺じゃろくに振り回せないだろうけど、お前ならあるいは。
[武器と為り得るものの在り処も告げる]
[自分が出来ぬかも知れないことを彼に託そうと言う気持ちもあったことだろう]
[逃げにも近いが、確実な方法でもあった]
[その後、ゲルダが料理を持って広間へと現れる]
[その姿を見て思わず立ち上がった]
あ…。
……昨日は、ごめん。
あの後、料理食わせてもらった。
美味かったよ。
[まずは無視をしてしまったことに対する謝罪]
[そして料理に対する感謝]
[最初は済まなそうにしていたが、料理の評価をする時は気拙げながらも笑みを浮かべた]
[何度かの会話の後、食事を勧められるようならば相伴に与り]
[食事を終えた二人と別れる]
[もう少しだけ広間で暖を取り]
[温まったところで自室へと戻り寝台に入った]
[寝台に入ると直ぐに睡魔は襲ってくる]
[団長の死] [そしてその検死]
[ウェンデルとのやり取り] [ベアトリーチェとの約束]
[今日だけでまた色々なことがあった]
[深い眠り]
[隣室の僅かな物音には気付くことなく]
[ゼルギウスの意識は闇へと*落ちる*]
―回想・集会所裏―
なあ。
…団長が亡くなったのって、この先だったか?
[小さな炎を踵で消して。
声を掛ければ身構える相手]
少しだけ、行かせてくれ。
[言って歩き出す。
後ろで他団員を呼ぶ声が聞こえたが、歩調は変えずゆっくりと。
その場所は教わらなくてもまだ分かる状態だった]
村のために。
口癖だったね。昔も、今も。
揺るぎない強さはどこから来ていたんだろう。
[紅の残る雪面を見つめて呟き、瞑目する]
[再び降り始めた白に、少しずつ埋まってゆく痕]
Requiem eternam...
「勝手な行動をするな!」
[短い祈りは、背後から肩を掴まれて途切れる。
怒りに赤くなっている相手に、瞼を伏せて]
ああ、すまない。
戻るよ。
[連れ戻されるよに建物の中へ。
外套ないままで、雪に濡れた上着が重たかった]
[一端脱いで、最初に向かったのは洗面所。
そこにはまだ人の気配があった]
アーベルか。
顔色が悪い…のは、こんな状況じゃおかしくもない、か。
[そも他人のことを言えた顔色をしてはいなかっただろう。
外気に晒され冷え切った身体。
軽く絞り、重さを減じた上着を羽織る。
短い会話程度は成立しただろうか。
疑うのは誰。少女の足音。知らぬ部分の多い相手。
それは目の前の人物とて同じ]
…それじゃ。
[出て行ったのはどちらが先だったか。
寒さに小さく身震いすると、飲み物だけでも貰おうと厨房へ]
…ゲルダ。
[ここにも人の姿。
どんな表情をしていただろう]
すまない、お茶だけ欲しいんだ。
食事は…後で着替えたら、また。
[食事の用意をする合間にそう頼んで。
温もりにホッと息を吐く。
そのまま広間には寄らず二階へと上がっていったの*だった*]
―マテウスの部屋―
[閉じた瞼の裏で、夢が、過去が、逆回しに再生されていく。
マテウスとゼルギウスとの食卓の音、エーリッヒに躊躇いながら差し出したお茶の香り、そんなところから始まって。
この集会場に集められるよりも、もっとずっと前、突き当たる夢の終わりは、]
――…いて、…かな…で。
[眦から零れた一滴が、室内の微かな光を弾く]
[髪に触れる掌の感触を追うように、腕を持ち上げて。
けれど、叶わぬ態で、ぱたりと落ちる]
ん…。
[その音が覚醒を促したか、微かに睫毛が揺れて。
夢うつつの手の甲が目許を擦った]
…、マテウス、兄さん……?
[焦点のぼやけた翠玉に映ったその姿に、柔らかく息を吐いた]
[柔らかに吐く息の気配は安堵にも似て]
…おはよう。
[挨拶とともに、消えそうなほど微かな笑みを浮かべた。
擦られた目元には、既に先程の雫の名残は無い]
早いね。もう、起きてたんだ。
あたし、寝坊した?
[寝台から抜け出して、ちょいちょいと髪を手櫛で整える]
[交わした会話は幾事か。
目覚めたばかりでは、噛み合わないずれた返事なども返したり、不思議そうに首を傾げるだけになる事があったかもしれず]
あたし、着替えて来るね。
部屋に戻る。
[そう告げて、部屋の扉に手を掛け。
少しだけ振り返る]
一緒に居てくれて、ありがとう。
[時計はなくとも、身体が時の経過を告げる。
ろくに食事も取っていなければ、動けなくなるのは目に見えている。喉の渇きは耐え難い。何より、冷えていた]
…下に行くか。
[そっと扉を開く]
─ 一階・物置部屋─
さて、何かあるかもと言ってたけど、何があるのやら。
[身を護る術を得るべく、ゼルギウスは物置部屋へと足を踏み入れた]
[積まれたものに触れると埃が舞う]
[軽く咳き込みながらも静かに探索を続けた]
ごついものは要らない。
身を護れる程度で良い。
……使わないで済めば、一番良いのだけど。
[集会場に集められた中に人狼が居る]
[けれど皆ほぼ顔見知りで、彼らが人狼であるなどと考えにくい]
[否、考えたくない]
[だからどうしても、期待を抱いてしまう]
[相対してしまう状況にならないことを──]
…それでも、襲われる可能性はあるんだから。
身を護る術は得ておかないと。
[しばらく探し続けて]
[見つけたのは二振りの短剣]
[無いよりは良いと、それらを懐に仕舞った]
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