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よくも!よくもやってくれた!!
私の大事な人達を!全て!余すことなく!よくも殺してくれた!!
貴様が、一体どのような想いを抱いていようが、もう容赦することは無いと思え!!
全ての繋がりを消し去ってくれた者の恐ろしさをとくと味わえ!!
この身!この魂!滅ぼされたとしても!必ず貴様に恨みを晴らすのを忘れるな!!
[虚空を睨みながら、神楽が呪詛の言葉を吐き出す。
そして、その瞬間。
神楽に恐るべき執念でもって、憑魔を滅ぼすべき方法をその様子とは裏腹に冷静に分析させる結果となった]
─中央広場─
[右手に持つサバイバルナイフを振り、血糊を飛ばす。
赤が地面に弾け飛んだ時、問う声が聞こえた]
……………。
[ハンチング帽の下から相手を見遣れば、もう一人の気に食わない男。
顔にも血糊をつけたまま、帽子のつばの下で眉根を寄せた]
何って。
見りゃ分かるだろ。
襲われたから、やり返した。
[右手の袖で、顔についた血糊を拭う。
それと同時に、横で倒れている躯が花弁となり宙に舞った]
残り───5人!
どうやれば、憑魔を確実に滅せられる?
[頭の中には、9人が一堂に介したあの場面。
あれから、今までに死亡した人間を抜き、残るのは、神楽、史人、百華、千恵、伽矢]
私は当然除外。
そして、百華が憑魔である可能性はかなり低い。
あの場面で仲間を殺して信用を得る必要性があるかと問われるのならば、まず無い。それどころか、雪夜に関係が深いものに殺される可能性すらある以上、あまりにも危ない橋。
更には、あの時点で、仲間を減らし、1人になるなどありえる話ではない。
[そして、視界の外れ。
自分が雪夜の元へと歩き出そうとしているときに、彼女は黒江にも襲いかかろうとしていたのを思い出す]
これも、憑魔ならば、おかしい。結果的に司ではなかったが、そういう匂いを感じていたのならば、憑魔ならば食おうとするはず。それを凶器で殺そうとして、警戒させることなどありえない。
以上のことから、百華は、憑魔の可能性は「低い」
そして、問題なのは───
[更に、9人が集まったときのことを思い出す]
───伽矢。千恵。百華の3人がほぼグループになっていること。
もう一人が憑魔ならば、これほど容易いことは無いが、もしも違う場合。彼を殺した後に、私が1人となる。その場合、私の劣勢を覆すことは不可能。
つまり、私は彼と手を組まなければいけない。彼が憑魔だったとしても、これは絶対条件だ。
彼を狙えず、百華も狙わない。
ならば、私が今手にかけなければいけないのは……伽矢。もしくは、千恵。どちらかだろう。
[そこまで思考を続けると、神楽がほの暗い目で前方を見据える。
そこには、まだ礼斗の顔が見えているような気がして、神楽は薄く笑った]
ひふみん。
私は、冷静だよ。
狂わず、自棄にもならず、憑魔を滅す手段を考えられている。
これにより、私は魔に囚われるかもしれないけど……その程度で、今の私は止められない。
全ての繋がりを消された私を、鬼とも魔とも呼ぶのなら、好きに呼んで。
私は、前に進まなきゃいけないから。
[ダン!と力強く、神楽がどちらかの終焉への一歩を踏みしめ、歩き始めた]
……そう、か。
[『殺されちゃったから』。端的な説明。
笑っているのに、泣いているような顔。
その後に続いた言葉は、予測の裏づけ]
……『司』を喰らう事で、『憑魔』はより大きな力を得られるから、な。
[零れるしずく。
伸ばされる手が空を掻く様。
少女が少年を慕っていたのは、言葉を尽くすまでもなく、知れて]
……こんなものまで。
二度目。
[零れ落ちたのは、小さな呟き。
瑞穂にかける言葉は思いつかず。
ふ、と、目を伏せた]
[彷徨う視線は、やがて、見知った者の姿を捉える]
……史さん。
[昔馴染み。
先に奇妙な消滅をした黒江と、自分の死。
それが、彼にどんな影響を与えるのか。
一抹の不安を感じるのと、どこからか、叫びが聞こえるのは、どちらが先だったか]
……この、声……神楽?
[物理的な障害を受けぬ死せるもの。
その場へ向かうのは容易かった。
たどり着いた先、聞こえる絶叫。
嘆息の仕種の後、目を伏せるものの]
……ああ。
ほんと、冷静だな。
[向けられた言葉。薄い笑み。
届きはしないけれど、小さく呟く]
……それだけ、前向きなら。
大丈夫、だろ。
そう……信じるさ。
だから……。
[死ぬなよ、と。
紡ぐのは、小さな言葉]
[今はだいぶ落ち着いたのか膝を抱えて俯き桜の木の下のあたりに座っている。
小さな呟きは聞こえていた。]
静音さん、無事に帰れるといいね。
[神楽の悲鳴に顔をあげると礼斗の姿が見えなくなった。
呟いた言葉は聞こえただろうか?
自分はその場を動く気にはまだなれなかった]
― 繁華街・稲田家周辺 ―
[礼斗君を見送ってから、私は繁華街に戻った]
鍵、開いてるのね。
……誰かいるー?
[玄関に入り、大きめの声をかける。けれど誰の返事も無い]
伽矢も千恵ちゃんも瑞穂ちゃんもいないか。
[私は、礼斗君が調査の結果を持って来てくれると思い込んでいた。
朝の薄い日差しの中、玄関口に座り込み、しばらく待つ。
けれど、いつまで経っても彼は現れなかった]
―中央広場―
……おそ、われた?
[頭の中は空白に近い。
風にさらわれていく花片。
昔馴染みの身体はもう、亡い。
――還せなかったな。
誰かの溜息が聞こえた、気がした]
[それと共に、少しずつ思考が廻り始める。
少年の言葉が蘇る]
……あやみんに、襲われた?
[もう一度繰り返す。
あり得ない、と思う。
けれどいつだったか、『憑かれる気はない』と言っていた彼が、もし本当に襲ったのだとしたら、それは多分――]
……、
[ぐ、と拳を握り締めて、口を開く]
……へぇ。
そっかぁ。
[発されたのは、少し低い声。
思っていたのとは違う言葉]
どうしてだろうな?
そんなことする奴じゃないと思ってたのにさぁ。
[内側で起こる困惑は、外にまでは伝わらない]
─中央広場─
…あいつがなんつーやつかは知らねぇけど。
急に襲いかかって来た。
[名前を聞く機会は無かった。
聞く必要も無かった。
名を呼ぶ必要が無かったから]
アンタがあいつのことをどう思おうが知らねぇよ。
オレはオレの身を護っただけだ。
[相手の男を見遣る翠の瞳は、昏い]
───繁華街───
[ようやっと道を把握したと気づいたのは、裏通りの銭湯を見つけてからだ]
じいちゃん。死んじゃったのかな。
[そう呟くが、すでに感慨は無い。
今の神楽に、誰かの死などはどうでもいいことだった]
……。
[銭湯を通り過ぎ、人の集まりやすい中央公園に向かって歩いていく途中、何処かの家の玄関で人の気配]
───。
[今、誰かがいるということは、4人の中の誰か。もしも、伽矢か千恵ならば非常にまずいと思い、神楽の警戒しながらそれに慎重に近づき、相手を見定める]
……。
[果たしてそこで出会ったのは、幸か不幸か。人間の可能性が高く、3人グループの1人である百華の姿。しばし、どうしようかと思い悩んだ末に、神楽がそれに近づいていった]
どうしたんです?誰かと待ち合わせですか?
―回想・中央公園―
千恵ちゃん。
[黒瞳を開き少女の姿を映す]
司じゃないよ。憑魔でもない。
桜の力を借りていたから。
[その意味を問われても微笑むだけで答えない。
感情を抑えていた時より感情の読みにくい微笑。
千恵の目にはどう映っただろう]
司が還してくれたならきっと。
それからどこへゆくかは、あの人次第。
[風が桜の枝を鳴らした]
―回想・中央公園―
かえる。そうだね。かえらないとね。
[歪みとなる前に還らないと。
答えながら、駆け寄ってくる千恵を抱き止める。
その手に握られたものも、そのまま身体で受け止めた]
桜花にもかえさないと。
[返さないと。
突き立てられた「お守り」に引き出されるように、花弁の形を取った力が流れ出してゆく]
(ありがとう)
[唇は空気を震わせず。
全てを手放し、桜へと委ねた]
[何度も使える程便利じゃないと、礼斗君は言っていた。
きっと時間がかかるモノ。そう考えて、私は玄関で待ち続けた。
そこへ、コンクリートが擦れる音がする]
礼斗君?
[けれど、かけられた声は女性のものだった]
……あなた。
もういいの? 私の顔は見たくないっていってたのに。
[礼斗君の言う通りなら、この人は司。
警戒する必要はないはずだけれど……
罪悪感が身を強張らせた]
……へぇ。
残念だなぁ、信じてたのに。
[肩を落とすその裏で、「下手な嘘だ」と誰かが嘲る]
それ、腕怪我してんじゃん。
大丈夫?
[軽薄に、危機感の感じられない笑みで。
相手の目を覗き込むように見た]
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