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[半ばまで背を向けたまま、抑揚を押さえた声で突き放すような言葉を紡ぐ]
だったら、話す必要なんてないよ。早く僕達を封じればいい。
[精一杯の拒絶。苦しさに堪え兼ねて、口元を押さえた]
理由なんて...!
[案じる色を乗せた声に更なる拒絶を投げようとして、響いたもうひとつの鳴き声に、言葉を詰まらせる]
......ただ、重なっただけだよ。ここから逃げ出したいって思った僕と、解放されたいと思った、祈り子の願いが。
[張りつめた糸が緩むように、声は僅かに和らいで]
だって、仕方ないでしょう?僕はここに居ても何の役にも立たない。父さんにも棄てられた。
もう嫌なんだ、誰かの同情に縋って生きて行くだけなんて...
[それは、半分はホントウで、半分はウソだ]
僕一人じゃ、出て行く勇気も力も無かったけど、祈り子が力を与えてくれた。
本当は周りの人だけをみんな眠らせて、そのまま...行くつもりだったけど、邪魔された、からね。
[邪魔した当人、アルカの追ってくる気配のない事が、気にかかる。一緒にいたエリィゼは無事だろうか?魔は、人を傷付けるようなことはしないとは、判っていたけれど]
[エリィゼにだけ伝わるコエを今は使おうとは思わない。これからしようとしていることは、彼女には知られたくなかった。いや、誰にも、だ]
─ 森の中 ─
[そうして、今。
言葉かわす二人の様子を、じっと、見ていた]
…………。
[声は発さない、けれど。
険しさ帯びた表情は、端的に心情を物語って]
― アルカの家→ ―
[駆け出そうとして聞こえたのは、重いものが崩れるような音>>41]
えっ?
[アルカがそちらに向かうのをみれば、騾馬が倒れていて
そんな事をするのは一人しか思いつかなかったから]
ごめんね、アルカお姉ちゃん…
[それだけを残して、クレムを探すために駆け出した
その後の独り言>>43には気付かないままで]
― 村 ―
[遠くに探す相手の影を見つけて駆け出そうとして、聞こえてきたポラリスの声>>29に立ち止まる
ヒューゴを呼ぶ声は、誰かが倒れたことを伝えるもので]
アルビーネお姉ちゃん?
お姉ちゃんも眠らされちゃった、の?
[昨日、誰よりも頼りになる、と言っていたアルビーネ
彼女を診たヒューゴがいつもより辛そうに見えたのは気のせいだろうか?
彼女を眠らせる必要があるのが誰か、ポラリスには何かが判っているように見えて]
お姉ちゃん、見つけた、の?
[森へ行く、というポラリスにそう尋ねる。森には「彼」がいるから
返るのは、肯定だろうか。困ったような表情は、多分隠せなかっただろう]
……ごめん、なさい。
[小さく零すのは謝罪の言葉。クレムの事を知っていたのだと、そう打ち明けて]
……どうしても、封じないといけないの?
[零した声はポラリスには聞こえただろうか
自分は知っている、「彼」が悪意を持って眠らせたことなど一度もないこと
とても、とても優しいこと
だけど、それは、自分も少なからず祈り子の影響を受けているせいでそう思うだけなのかも知れず
答えを見つけるには少女はまだ子供だった
だから、ポラリスや、もしかしたら追いついたかもしれないほかの人の言葉を、ただ聞いているしかなかった。
一緒に行く、と言ったならポラリスには止められたかもしれない。だから、その時は見送った、けれど]
やっぱり、行かなくっちゃ……
[ヒューゴがアルビーネを家に運び込む、その一人になった隙に、森に向かって駆け出した]
― →森の中 ―
[森の中、やっと見つけた二人は、とても真剣で
声を掛けられる雰囲気じゃなかったから、話し声が聞こえる所で立ち止まって
クレムには、こちらの姿は見えるだろうか?
「コエ」が聞こえないのが少し不安で、だけど、こちらから「コエ」を送るのも躊躇われて
ただ、何も出来ないのがもどかしく思いながら、二人を見ていた]
………皆が、同情で貴方に接していたと、本当に思ってるの?
[声にも込められる憤り。
じっとクレムを見詰める]
同情で相手をしてもらってるなんて思ってるなら、それは他の人に失礼だわ。
…ソーヤは貴方が来てから、本当に楽しそうにしてたわ。
それも同情だと言うの?
役に立たないと思うなら、役に立ちたいと思わないの?
身体が弱くても、やれることはあるはずよ。
ねぇクレム君……お願い、”逃げないで”。
[その言葉を紡ぐ時は、眉が下がった]
―自宅―
[懇願する声に、根負けしたように溜息をついて]
…わかったよ。
これ以上…あの力を使わせちゃいけないんでしょ。
[ゆっくりと、立ち上がる]
じゃあ、どうするの。
それに…その、『祈り子』はともかくさあ、自分はどうするんだよ。
[アレッキオに気を取られている間にエリィゼはどこかへ行ってしまったのか、姿はない。
気兼ねしていないからか、独り言と思うには不審なくらいの会話]
― 森の中 ―
[ポラリスの声にこもる憤りは>>57覚えのあるもの]
(ソーヤ...)
[ともだちを、眠らせる前に交わした会話を思い出せば、ひどく苦しくて、胸元をぎゅう、と両手で握りしめる]
だって...本当に、僕は、何も出来ない...
[判っている、彼らの想いが同情と片付けられるようなものではないことは。でも、そうだとしても、それだからこそ]
ねえ、どうせ、僕は長くは生きられないんだよ?
だから、探す時間なんて、きっと無い...
[彼らが羨ましかった、大好きだったけれど妬ましかった...傍にいたかったけれど、傍にいると苦しかった、ああ、なんて我が侭で醜い...]
―自宅―
[寝ているアレッキオの傍に飼い葉と、水を入れた桶を置く。
いつ起きてもいいように、と]
さあ、行こう。
さっきから、森の方からざわざわしたのが伝わってくるんだ。
これって…ボクにもちょっとはわかるようになったってこと?
[首をかしげながら、森の方へとゆっくり歩いていく]
ところで、どうしてそんなに『祈り子』?が心配なの?
同時に封印されたわけでもないのに…?
[ぶつぶつ、独り言を言いながら]
─ 森の中 ─
……ばっかやろ。
[同情、という言葉に、小さく呟く]
自分が向けられてやーなもん、なんで、人に向けんだよ。
……ほんとに、怒るぞ、このっ……。
俺が、どんだけ、お前からもらったと思ってんだよ、この、馬鹿。
[掠れた調子で紡ぐ声は、肝心の所に届かない、けれど。
それはどうしても、言わずにはおれなかった]
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