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─集会場・玄関─
あれ、ライさん。
[扉を閉める音もあってか、広間の中で発されたハインリヒの声は聞こえなかった。代わりに気付いたのは、顔を覗かせたライヒアルトの姿]
容疑者集めてるとは聞いてたけど……外から来た人は真っ先に疑われてるんだ。
孫であるボクですら集められるんだから、当たり前か。
[目をまぁるくした後に納得する、ライヒアルトがここに居る理由。彼の挨拶には頭を下げることで返した。流石にいつものよに話を聞こうと飛びつくことはしない]
[広間の方へ向かおうとして、背後で玄関が開く気配を感じた。冷気が廊下を走る]
───あの人も、か。
[すっと縹色の瞳が細まった。祖父から聞いた悪い噂を知るせいか、警戒の色が乗る。自衛団員と話しているようなので、エーリッヒには挨拶はせずに広間へと向かった]
─ →集会場・広間─
―集会場・玄関前―
[階段を降りる途中、こちらを見る姿が一人。忘れるはずもない人物。
気になっていたことの答えが瞬時に得られた。
階段を降りきったところで]
よぉ、何してるんだグラーツさん。
[自分と同じ苗字のその男に話しかけた]
こんなところで会うとは奇遇だな。
ライヒがこの村にいたとはな。
あいつらに連れてこられた口か?
[玄関前の自警団員を指差した。向こうはこっちにむっとした視線を送ってたけど。]
………………わかったわ。
行けばいいんでしょ、行けば。
あ、父さんはちょーっと黙っててね。
[まだ怒鳴り続けていた父親に、テーブルを拭いていた濡れ布巾を投げつけて黙らせてから]
別に、私は良いわよ。行ってもね。
ただし! 私が居ない間、うちの店の力仕事やってくれる人手を貸してくれるわよね?
まさか、そーんな冤罪でわざわざ人を呼びつけて、店の営業を出来なくするような事はしないわよねー?
疑いが晴れて帰ってきたら店が潰れて父さん餓え死にしてました――なーんて事になったらどうしてくれるの?
え? 他に人を雇え?
他人を雇えるような金があったら、最初っからそうしてるわよ。
何でまだまだ遊びたい盛りのこの年で、毎晩毎晩営業なんてしてると思ってんの。ざけんなボケ。
それで? 当然、誰か派遣してくれるのよねぇ?
[とっても良い笑顔を自警団員に向けて。そんな交渉(脅迫とも言う)をはじめるのだった]
星も、相変わらず?
……近ごろ天文台に行けなくて、残念です。
雪のころだから、あまり夜に出歩いたら行けないって、父さまが。
星はどこでも見られるけど、でも、オトせんせいのところが一番なのに。
[頭の硬い父を思い起こして、少年は物憂げに息を吐く。自由奔放な祖父とは大違いだった]
………。
[猫と向かい合うときには妙な緊張感。
身を屈め、そろそろと伸びていった手の指先が猫の頭に触れる。やたらと真剣な顔をして、黒い毛並みをそうっと撫でていく]
物思いだよ、グラーツの商人さん。
[片眉をひょいとあげて、ひらりと手を振る。
唐突に可笑しさがこみあげて、くつりと小さな笑いが喉元からこぼれる]
ああ、まあ。夏の頃からちょっとお世話になってる。
――で、そう。夏の頃からお世話になってるから、まあアレだ、疑われたんだろうな。
[肩を竦めて指の差された方向を一瞥し]
そういうエーリッヒはどうなんだよ。
ああそうか、いよいよ化けの皮が剥がれたか?
[もちろん口調は冗談じみている]
─集会場・広間─
[広間に入って中に視線を向けると、先程後姿を見た幼馴染が居るわ懐いてるもう一人の外部者が居るわと、そこに居た人数分の瞬きをした]
オトさんにミーネさんまで。
随分と掻き集めてんのね。
[呆れを含んだ口調で言い、暖炉の傍に行くとその前にしゃがみ込んだ。冷えた身体を暖炉の炎で温める]
なるほどね、これからは毎年会うことになりそうだな。
[ライヒアルトの説明に頷いて]
俺は8年ほど前から、毎冬はここですごすことにしてるんだ。
この村がなんとなく気に入ってな。
格安で物仕入れてくるから、結構歓迎されてるんだぜ?
[最後の言葉は自警団員に聞こえるように、ちょっと大きめだったかもしれない。
それでも今疑われている事実に変わりはないのだが]
お互い災難ってことか。
[化けの皮がと言われれば]
おいおい、いくらなんでも老人は売買されないと思うぜ。
それに殺したら商売になんねぇよ。
[返す口調はやはり冗談じみたもの]
星は日々変わりますよ。
ただ、それが俺たちに届くには、時間がかかるだけで。
[ほんの少し冗談めかした口調で言って]
今時が一番、綺麗に空が見えるんですがね。
[澄んだ空気の中だからこそ見られる、満天の星。
何とか見せてやりたい、とは思うのだが、どうにもその辺りは上手くいかないままだった]
[一方、猫はと言えば、伸びてきた手を厭う様子は見せず。
大人しく撫でられる。
長い尻尾がはたり、と揺れた]
―集会所―
こんばんはー。
……なに、これ。書けって?
今更こんなもの書かなくたって、たいてい皆知ってるじゃないの。
もー、めんどくさいわねぇ。
[言われたとおりに集会所に顔を出せば、身上書を書けと言われて。
ぶつぶつと文句を言いながら、ペンを手にする]
──────
■名前:ローザ=ミケーレ(Rosa Michele)
■年齢:21歳
■職業:酒場の看板娘
■経歴:村生まれの村育ち。
父親は酒場のマスター。母親は5年前に病死。
腰痛もちの父親を手伝って、未成年の頃から家業の手伝いをしている。
──────
―広間―
いやァ、容疑者にしちゃァ随分呑気だったからな。
ひ弱なのは事実だろう、フリー?
[昔馴染みを慣れた呼び名で呼び、にやりと口許を上げた。
フォルカーの声を聞き、膝で構っていた猫をそちらへ促す。
ぱちりと音を立てる暖炉に目を向けながら]
なんだいジャリンコ、遊びにでも来たのかい。
…まさかあんたまで容疑者とか言わないだろうね?
[暖炉の傍にイレーネが来るのを見て眉を顰めながら、少し脇にずれて場所を空ける]
と、おや。
[入ってきて、呆れを含んだ声を上げるイレーネに、す、と翠の瞳が向けられる]
寒かったでしょう。
お茶、飲みますか?
ああ、おかわりほしい方も遠慮なく。
[ポットを手に、周囲に投げかけるのはこんな問い]
今回の騒ぎで、俺の方が追い出されなきゃな。
[どこか自嘲気味にそんな言葉を吐いてから。
村が気に入っている、との商人の言葉には曖昧に頷く。閑散としてはいるが、悪い処ではなかった。
今回の事件が起こるまでは]
ああ、全く災難だ。
いきなり人が死んで、いきなり疑われるんだからなあ。
一応俺だって聖職者の格好はしてるんだぜ?
[冗談じみた一連のやり取りには、もう一度喉の奥を鳴らす]
そりゃあそうか。老人は駄目だな。
商売の理屈が、俺以外の奴らにも通じる事を祈ってるよ。
─広間─
容疑者扱いされたよ。
自衛団長直々にね。
[ジャリンコ呼びはスルー。この手のことは反応していてはキリがない。事実だけを伝えて、空けてもらった場所に収まった]
うん、飲む。
出来れば甘くして。
[オトフリートの申し出には頷きと共に答えた。ちゃっかりとした要望を付け添えて]
そうだった。
今、僕らを照らすも、滅びてしまった星のものかもしれない。
[天文学者の青年から教わったことを思い出しながら、少年は言う。かすかな笑みが浮かんだ]
……昔より、寝込むこと少なくなったのに。
[子供らしい、拗ねた口調の文句が零れる]
[もし猫が途中で動いたら少年の手は引っ込んでいただろうが、挑戦は上手くいって、安堵の息を漏らした。緊張はいくぶん、解けたらしい]
……せんせい、ひ弱なんですか?
―広間―
こーんばんはー、って……?
[身上書を書き終えて、広間に顔を出したところで。
その場にいる面子をひとりひとり見回して、いくつか瞬きをする]
……………何、この人数が全員容疑者って訳?
ギュンターのおっちゃん、ついにボケた?
[呆れたように呟いた]
あ、レーネ、
[ちゃっかりと暖炉の前に陣取っている幼なじみの姿に、少年にしては大きい声があがる]
ギュン爺さまのおつかい――…………
じゃあ、ない…、んだ。
[立ち上がり傍へと行こうと、踏み出した足が止まる。
眉が下がり、皺が思い切り寄った。自分の事よりずっと、泣きそうに]
誤解が晴れれば問題ないだろ?
それとも、もしかしてなのか?
[からかう様に言ってから]
一応ってなんだ、一応って。
ああ、でも人死に出れば仕事ふえるんじゃないか?
[返した言葉はいささか不謹慎だったかもしれない。]
俺はあの爺さんと口論になってたからな、なおさら疑われたのかもしれないな。
[ため息混じりにそう答えてから、さらにため息をもうひとつ吐いて]
どっちにせよ、俺は奴隷商売もなにもしてねぇよ。
どっかの有力者か、大手の承認が概ね風評落とそうとしてるんだろう。
……そこは、否定のしようもないけどな。
少なくとも、今は昔ほどじゃないぞ。
[事実、という昔馴染みの言葉に、は、とため息をついた。
イレーネの要望には、はいはい、と頷いて手際よく準備をしていく。
ヘルミーネの問いに対する少女の答えには、少しだけ眉を寄せるものの、特に何か言うでなく]
はい、どうぞ。
[常と変わらぬのんびりとした態度で、カップを渡した]
―集会場・広間―
[イレーネがやってくる前、少年の興味深そうな視線に気付けば
気になるか?と煙草をくわえたままの口元をにい、と歪めたか]
続々とご到着ってわけか?
[行商人の男が二階へ上がる姿をちらと目にしてやれやれと。
くわえた煙草が小さくなればおもむろに立ち上がって厨房の方へと。
次に広間に姿を現した時には、小さな灰皿を手に、
新しい煙草をくわえていた]
─広間─
[そこそこ身体が温まって来た頃。外套を脱いで荷物と一緒に広間の隅に纏めて置いた。暖炉の前に戻って来ると、もう一つ、人影が増える]
残念ながらジジイはボケる気配を見せないよ。
アリバイが無い人、片っ端から引っ張って来てるんじゃないかな。
[同じく呆れを含む声でローザに返した。聞き慣れた声が自分の愛称を呼び、視線を向けると泣きそうな顔をしている幼馴染が居る]
───何でフォルが泣きそうになってんのさ。
[大きな溜息が出た]
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