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[そのままじっとその場に座して、五色の玉が行き来する様を見ていたが、気付けば夕餉の時刻かな]
ああ、もうこの様な時間か―
[えいかねえさまとあやめねえさま]
[ふたりのねえさまを追って囲炉裏のそばへ]
ねえさまがたも、さみしいん?
おらぁ、ねえさまがたと一緒おれるけん、さびしうなかよ
みんな、みんな
さみしいんがなくなればよか
[頭をなでられば*うれしげか*]
そうだね――
共にあれば、さみしくはなかろう。
こいしくなるやも知れぬけれど。
やれさて、ひとのこころは難しいか、
それとも、そう思うているだけか。
〔深紫の女に、臙脂の子、笑みつつ語り、
ふたりの話を白の君は聞いていよう。
火のない囲炉裏に爆ぜる音はなく、
今は鈴も音を奏でるを止めてゐる。
代わりに人の声の満ちれば、
刻の止まりし家は息衝きて、
在りし日の姿へかえりしやう。
けれど其も僅かに一時に過ぎず、
白き夜の訪れに語らいも止みて、
帳のやうにしじまが下りる。 ]
[眠りの淵より立ち返り、ふと見やれば、部屋の隅には見慣れた衣。
藍白を滑り落として白花色に袖通し。
ふと、こぼれるのは小さな息]
……どちらでも、ないのだよね。
[小さな呟き。
それごと白花色に覆い尽くして瑠璃紺で括り。
鞠を抱えてゆうらりと、館の外へと彷徨い出る]
[野で仔うさぎに草食ませ。
水車の傍ら、その音聞きつ。
てん、てん、と鞠をつく。
唄はなく、紅緋は茫、と華を見て。
否、見やるは華か、それを託せしとおき者か。
それは何者も知る由無く]
おらぁ、むずかしかと思うんよ
[闇色のねえさまに]
[したりがお]
じゃけん、おらぁ、好きじゃよぉ。
みんな、みんな好きなんじゃ。
あやめねえさまも、えいかねえさまもじゃよ。
それがこいしい、言うことかのぅ?
[古い家はどこか嬉しげか]
[囲炉裏のそばで]
[にこにこ笑って]
[館に戻り、座敷へ向かえば、目に入るのは色とりどりの紙風船。
その色彩、視界の隅に止めつ、縁側に座り、傍らには仔うさぎを。
庭に投げ出す足を揺らしつ、茫、と思うは目覚めの記憶か]
……揺藍のにいさま、どうしておられるかな……。
[小さく呟き、そう、と小さき獣を撫でて]
[時がたち]
[やがて静かに]
んー、あやめねえさまはもどらんの?
[首を傾げてそう尋ね]
[戻るというなら、嬉しげに一緒に戻るか]
[戻らぬというなら、白のねえさまを見上げて]
[困った顔をしただろうか]
[駆けられし声に、ゆる、と顔上げそちらを見やる]
気になる……のだろか。
よく、わからないの。
ただ、揺藍のにいさまは、少しだけ舞弥のにいさまに似てらしたから。
だから、お元気でおられるといいなあ、て、思って。
……それに……。
[小さく呟き、わずか、紅緋を伏せ]
[するり]
[姿は誰もおらぬ川べりに]
[風に合わせて髪は揺れどその指は草にも花にも触れられなんだ]
…不思議なものよ。
[ほつりとつぶやく。
自らに与えられた呪が動いたのではないかと]
そうか―
[それ以上の言葉は出て来ない、何故なら―
『にいさま』に似ている―
その思いが痛い程分かる―分かってしまうが故に―]
―それに?
[ただ続きを促す事しか出来ぬ―]
子供は好く食べて好く寝て好く遊ばぬと、
背も伸びぬようになってしまうよ。
[後の問いには敢えてはぐらかすように]
さぁて、どうだろうね。
[続きを促され、ひとつ、まばたく。
それは、困ったようにも見えようか]
うん……うまくね、言えぬのだけれど。
揺藍のにいさまは、いつか、お見かけした神巫様のよな強き力はお持ちでないよう……だったから。
……慣れぬ場所においでになって、辛くなければよいのだけれど……て。
[途切れがちに言いつつ、くるり、手の中で鞠を回す]
……背は伸びんのいやじゃぁ
[真剣な顔]
[まるで一大事だというように]
[だがそれよりも]
[闇のねえさまの答えにむぅっと]
[頬をふくらませ]
あやめねえさま、おなかすいとったらあかんのよ。
おなかすいとると、かなしうなるんじゃよ!
[―ふっと柔らかな笑みを浮かべ縁側に腰を下ろせばくしゃりと頭を撫でよるか]
―きっと大丈夫さ、仲間にしようと言うのならそういう事にも気を使ってるだろう。
ねえさまはね、
そうそう腹が減らんのよ。
[くすくす笑いつつ、ぽんと頭を撫でる]
けれども、かなしゅうなるのは好くないね。
はてさて、困った、どうしようかな。
[頭を撫でられ、わ、と声を上げつ目を細め]
大丈夫……?
それなら、よいね。
[小さく呟き。
仲間に、という言葉に、またひとつ、ゆる、とまばたくか]
……仲間になったら……どうなるのだろ。
[それは、問うというより、独り言めいて]
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