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[そのまま]
……あぁ、そうそう。
さっき、消える前にちらっと見えたんだけどさぁ。
[本当は見る暇等無かったけれど、平然と嘯いた]
「あやみん」、心臓無かったよね。
なんで?
―中央公園―
[遠く鈴の音を聞く。
遠く遠く誰かの話す声を聞く。
意識は完全には散らず、うすぼんやりと丸まって。
生者と死者の間を漂っていた]
[私は彼女を観察する。
公園で会った時と比べ、澄んだ目をしている。
その瞳は純粋な何かを宿しているように思えた。
私はふう、と溜息をつき答える]
待ち合わせ、といえば待ち合わせよ。
―繁華街・端―
[暫く泣いて、目が本当にうさぎのようになった頃、ようやくぐしぐしと顔を擦り泣き止んだ。]
……ここ、どこだっけ。
[鼻まで真っ赤になりながら、きょとと辺りを見回すと、見覚えのある、繁華街端の端だった。]
……にいちゃ、ねえちゃ、おばちゃ。
[未だ瑞穂の死は知らず。
ほてほてと、瑞穂の家へと歩き出した。
誰か帰ってきたかな、と思いながら。]
[百華の言葉に、小さく首を振る]
そんなこと言ってられる場合じゃないですから。
憑魔を全滅させない限り、同じ悲しみが繰り返される。
それなら、憑魔を率先的に殺し、憑魔の可能性の低いあなたを憎み続けるのは、無駄なことです。
そう。
憑魔は全て滅さなければね。
[その時に浮かんだ感情は、仄暗い───喜び。
司として、憑魔を浄化出来るという役割を果たすことへの感情だった]
あなたもそう思うでしょ?
ああ。それから、ひふみん……礼斗を待っているなら無駄だよ。
何故なら───彼は憑魔に殺されたのだから!
[動き出した神楽。
正直、ちゃんと目指すところにたどり着けるのかとか、そんな余計な心配をしているうちに、どうにか正しい道を引き当てたようで。
思わず安堵した矢先──目に入ったのは、百華の姿]
ああ。
はったりかけたままになっちまったな……。
[零れたのは、そんな呟き。
それから、桜の方へも意識を向ける。
史人は無事だろうか。
過ぎるのは、そんな思い]
[さて。
私は彼女を何処まで引き込めるのか。それがキーポイントだ。
最悪でも3人グループに少しでも亀裂を巻き起こせなければ、その先は難しいだろうから]
.
─中央広場─
……平気。
死ぬほどじゃない。
[訊ねられ、短く返す。
この状況で相手が浮かべる笑みに、オレは警戒するように翠の瞳を細めた]
心臓なら、抉って、潰した。
あいつがもし憑魔なら、と思って。
どこまでやれば死ぬのか判らなかったし。
[本当は喰ったけど、そんなことを言うはずもない。
相手が本当に見たのかどうかを判ずる術は無い。
下手に逆のことを言うよりは、抉った事実を作った方が良いと判断した]
……もう良いか?
オレ、千恵探さなきゃなんねぇんだ。
[会話を断ち切るように言葉を紡ぐ。
一貫して冷静な態度、慎重な雰囲気。
この緊迫した状況で、軽薄な笑みを浮かべる相手と、オレの態度はどちらが異様に見られるのだろうか]
[史人の声が聞こえて頭をあげる。
二人の会話が聞こえてくる。]
伽矢くんのこと、ばれたのかな?
[行く末は少し気になっていたのでそちらのほうをぼーっと眺めている]
ああ。それで。
[私に声をかける事にした理由を聞き、頷く。
が、憑魔を滅ぼすと口にした彼女の表情が僅か、変わる。
野心旺盛な男のような顔]
ええ、滅ぼさなくては。
……無駄?
[礼斗君がもたらした情報は、私を大分楽観的にさせていた。
それも、続く言葉を聴くまでだった。
――礼斗君が、憑魔を見つける事ができる人が、死んだ。
私は、返事を返す事もできずに表情を凍らせた]
[『憑魔』は全て滅する。
それは、場を開くためには必須の事。
だから、それは大きな願いのひとつ]
……問題は、それまでに。
犠牲を、どこまで減らせるか……だよ、な。
[見えている、答え。
伝えられないのをもどかしく思いつつ。
神楽と、百華のやり取りをただ、見守る]
―中央広場―
……あぁ、そう。
冷静なんだねぇ、見掛けによらず。
[あっさりと身を引く。
余計な一言を付け足したのは挑発か素か]
うん。分かった。
引き止めて悪かったな。
[それ以上引き止めようともせず、両手をポケットに突っ込んだ]
[表情を凍りつかせた彼女に畳み掛けるように私は離しかける]
みずちー……瑞穂も、憑魔に殺されました。
名前は知らないけど、無表情な女の子も死にました。
残っているのは、私とあなたを含めて5人だけです。
[さて。ここからは賭けだ]
ねえ。ひふみんは、最後に何処に向かいましたか?誰に殺されたと思いますか?残っている憑魔は誰だと思っていますか?
私でもない。あなたでもない。残るは3人。
ああでも、あのメガネのお兄さんが憑魔ならば、わざわざ数少ない自身の仲間になりそうな人を殺すかな?
それに確か、あの人は何処かで司だと聞いた気がする。だとすると残っているのって誰なんだろう?そこに憑魔はいるのかな?ねえ。誰だと思います?
[史人が司だと言うことは思いつきの嘘だ。真実かも知れないが、今は確証が無い嘘だ。だが、それでも、こう言えば、あの2人に疑いがほんの少し向けられるだろう。
さて、亀裂はどのくらい浮かぶか?]
─中央広場─
アンタも見かけによらず頭のネジ飛んでんだな。
この状況で良くヘラヘラ笑ってられる。
[挑発に乗ったわけではなく、素直な感想。
口は普段から悪い]
[身を引いた相手から視線を外すと、オレは足を動かし始める。
右手にサバイバルナイフを持ち、左腕は力無く身体の横に垂らしたまま。
けれど、その腕から赤が滴る様子は無い]
[オレは男を警戒しつつも、その傍を離れて行く。
捜すにしてもあては無く、どこから捜そうかと考えながら、駅方面の道へと向かい始めた]
―繁華街→―
[誰もいない道をとぼとぼと、うさぎと一緒に歩いてゆく。]
寂しいね。
[うさぎに話すも、返事はこない。
誰もいない。ひとりぼっち。
それはとても寂しくて。
しょんぼりしながら歩いていたから、誰かの声が聞こえた時、ぱぁと明るい顔になった。]
みずねえちゃ?ももおばちゃ?かやにいちゃ?
[てててと、そっちのほうへと駆け出した。]
[表情を凍らせる百華の様子に浮かぶのは、苦笑。
そこに畳み掛ける、神楽の言葉。
伝え損ねた真実──史人が『司』という言葉が織り込まれているそれに、思わずがし、と頭を掻いた]
……よくもまあ、そこまで、いえるもんだ。
しかも、はったりなのに当たってるし。
[呟きにこもるのは、呆れと感心が半々、というところか]
うん?
まぁほら、なんかもう笑うしかないじゃん。
俺非力だしさぁ。
[あくまで無能な『人』として振る舞う。
相手の視線が外れても、表情は変わらない。
けれど血の流れない右腕は、しっかりと視界に捉えて]
彼が。死んだ。
[しばらくして我に返ると、顔から段々血の気が引いていく。
更に非情な言葉は続く]
瑞穂ちゃんが。瑞穂ちゃんまで。
無表情な子って、黒江さん?
もう、五人だけ?
[たまらず、顔を伏せる。
そのままくぐもった声を漏らす]
あと一匹が憑いてるのが誰なのかって、私が知りたいわよ……
礼斗君がいなくなってしまったら、当てずっぽうするしか。
彼、誰が憑魔か見分ける事ができるって、言ってたのに。
[彼が出来るとは一言も言っていなかったのを、私は気付いていない]
貴方が司。史さんも司。
私は違う……ねぇ、ちょっと待ってよ。
そしたら、伽矢か千恵ちゃんが憑魔ってこと?!
[大声で叫んでしまった。
少し離れている者にも聴こえてしまっただろうか。
慌てて口元を押さえた]
史さんが司って、本当なの?
[伽矢と千恵ちゃん、どちらかが憑魔である事を否定するには、
そこを否定するしかなかった]
……笑うしかないと思ってるなら、ホントにネジ飛んでんだな。
それか、笑うくらい愉しい状況だと思ってるのか。
[壊れたか、行き当たった結論はそこ。
非力だからと言って笑うその様子は、オレにしてみれば逆に警戒を強める要因にしかならなかった。
それを捨て台詞として、オレは北へ向かう道を歩いて行く]
─ →駅方面─
……たのしくは、ないけどな。
[表情は変わらなかったが、声に色は無かった。
相手の背が見えなくなるまで、手は出さずにただ見つめる]
少しも。
そうだね。当てずっぽうだね。
ただし、考えられる可能性を出来るだけ考えた上での当てずっぽうになるけどね。
[礼斗が見つけるモノだとは初耳だった。
それならば、彼が襲われたのにも納得は行く。
それと同時に、彼ならばそういうカマかけをする可能性もありうるとは思った。
どちらにせよ。彼が司だと思っているのは不都合だ。
もし、本当に史人が司で見つけるモノならば、同じ司が存在することになる。こういう些細な間違いは後々遺恨を残す。礼斗が司だったとしても、すでに意味が無いなら取り上げてしまおう]
───きっと、ひふみんは、他の司を守る為に、身分を偽ったんじゃないかな。それに惑わされた憑魔がひふみんを襲う。そして残るのは司2人……そうならば、彼の命をかけた壮大な嘘は、実をなしたと思わない?
だって、司が2人で、あなたが憑魔じゃないのならば、残る憑魔を滅することが出来る可能性はとても高くなるのだから。
そう。伽矢か、千恵ちゃん。どちらかに宿っていると思われる憑魔をね。
……まさか、人の大事な人を奪っておいて自分だけが全て残したままで終われるなんて夢物語信じていませんよね?
―繁華街→瑞穂の家―
[話し声は、やっぱり瑞穂の家の方からで。
嬉しそうに走る、あと少し、角を曲がれば
「そしたら、伽矢か千恵ちゃんが憑魔ってこと?!」
声に、ぴたり一瞬足を止める。
が、頭が言葉を一瞬、忘れた。
聞いていたけど、聞かなかったことになる。
角を曲がると、人影が見えた。]
あ!
ももおばちゃ!
かぐねえちゃ!
[もう一人、意外と思う人がいたが、そんなことは気にならなかった。
心の隅で、誰かが『つかさ』とぼつりと呟いたけど。
今はそれより、人と会えた事が嬉しかった。
神楽が自分を警戒しているなんて知らないまま―――二人の方に、飛びつこうとして
無邪気に
走りよった。
笑顔で駆け寄る様は、ともすれば脅威に見えるだろうか。]
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