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[朽葉の色から逃れるように、すぐに紫紺は逸らされて。
けれど、蒼の花の囁きに。
そしてカルロスの叫ぶ声に、慌てて紫紺は戻る]
血…って、
何なさってるんですか!
[少しばかり慌てた風情で真白のハンカチを取出し、傷口を圧迫しようと]
乙女の心理と、仕事の心構えは、次元が違うんだいっ!
[厳しい言葉に返すのは、どこまで本意か読めない言葉]
って、自慢になんないよ、それっ!
[要らん事には突っ込み入れつつ。
飛び込んでくる姿に、舌打ち一つ。
元より、防御は得意ではなく。
避けきるには、相手が速い]
っ、っの!
[左の一撃はタイミングよく輪を合わせて弾くが、右は間に合わず、紅が散った。
痛みに顔を顰めつつ、翼に力を入れて空へと舞い、距離を取る]
……やっぱ、厄介だなぁ、もうっ……。
ここは、出し惜しみしないで、行く、か。
[呟いて、手を触れるのはカードを収めた胸ポケット]
相手のテリトリーに不用意に飛び込むのは愚の骨頂。
…わかりきったことを体言しただけですよ。
[あの時は。裏を掻くより早いと思ったのだけれど。
甲に滲んだ紅には小さく溜息を吐いて舐め取った]
治して貰ったから剥がしても平気かと思ったんですが。
覆った皮膚ごと剥がしたかな、これは。
[何でもないような風情で、カルロスの視線の意図も認識せず]
…それは面倒だなあ。
剣はたとえば、
[予備動作も口調の変化も一切無い。
けれどカルロスの眼前には一本の十字短剣が浮遊して]
こういう感じで?
無限に湧き出る泉と、俺の片腕。
どっちが良いよ?
[皮肉ではなく、素直な賛辞に苦笑した]
やれやれ。
大一番、か…なら。
[中指で眼鏡を直す。
奇術師の出した全てが集まっているのを見やれば、其の表情は渋く変わる]
やばい、な。
[男は大一番の手品を見つつ、後ろへと跳躍…
屋根から飛び降りた]
高速射出釘《パイルバンカー》。
[先ほどは剣に向けた高速の突きを、今度は迫り来る地面に放つ。
地面はへこみ、男に衝撃が走る…]
[舐め取る前に緋色は白に奪われた]
え、あ。
[治して貰ったのを、再び傷付けてしまったのだと。
認識するのに一拍の間が空いた]
…ごめん、なさい。
[緋色の滲む手は預けて。蒼の花は逆の手に移して]
[飛翔し。天へと舞い上がる竜がおこしたカマイタチは、塔を盾にするブラウン目標とする精度もない。ただ無作為に放たれ周囲の建物だけにとどまらず破滅の塔をも破壊し]
……っっはぁっ!
[それを見届けたところで、制御の辛さに耐えかね。隙を作ることとなるとわかっていても大きく息を吐き出す]
…本当に、笑っているイメージがすぐに浮かびますわね……。
きっと、プロの意地なのでしょうけれど。
[言葉と裏腹に笑う顔を見て、微苦笑を返す]
今の私に、本気で講演して下さるかはわかりませんし…。
[はたり、紫紺の瞳は瞬く。
それはちょうど、傷口を圧迫した時のことで。
僅か嬉しそうに、それでいて恥じらった笑みを形作って]
綺麗、とは…天使さんのような方のことをいうのだと思いますけれど。
世辞がお上手ですのね。
ほんにおなごはようけ分からん。
……次おなごばなってみぃかいのぅ。
[乙女の主張には溜息一つ。続いて呟かれた言葉は極々小さなもの。剣戟の音により聞き取ることは難しかっただろう。一番最初の『記憶』がそうなのではと言う突っ込みはきっと受け付けない]
[初撃は弾かれるも、二撃目が入り。仮面の奥で小さな笑みが浮かぶ。けれどすぐさま相手が宙へと舞い、現状では攻撃が届かなくなる]
かかか、ワシも出し惜しみして勝てるたぁ思うては居らんしのぅ。
[そう言って懐から取り出すのは『ザ・ムーン』のカード]
堕ちよ、『月闇の帳』。
[相手が使う前にカードは輝きを、否、漆黒なる闇を生み出し屋上全体を包み込もうとじわじわと広がって行く。フィールドへの干渉、闇は男の極彩色や白き面すらも覆い尽くしそうな勢いだ]
影と闇は似て非なるもの。
じゃが今なら同等として扱える。
さぁ、どぎゃんするね?
[相手を試すような口調。その間も闇は広がり、まずは男をすっぽりと覆い隠した。男を包み込んだ場所を中心に、闇は広がり、エリカをも飲み込もうと侵食して行く]
うおっ、この塔も壊すか…
[塔を盾にしていた矢先、上から落ちてくるのも、塔。
慌てて塔から離れ…]
しかし、今を逃したらぁ、面倒だからな…やってみるか…!
[左手を大きく後ろに引き。
きりきり、と歯車は回転し、釘も後ろへと引かれた]
高速歯車駆動《ハイスピードギアワークス》…
[左腕の内部構造の歯車を高速回転させ、本来以上の力を拳に伝導させ]
高速射出槌《パイルバンカー》ァァァッ!
[左腕を前に突き出すと同時に釘を射出。
力を込めた拳に速度が上乗せされ…
ドガァ。
崩れた塔はひび割れながらも大きく放射線を描いて。
『塔』を崩した『愚者』へと瓦礫を降らせた]
まぁなぁ…向こうが出てこないんじゃしょうがねぇけど。
[淡々と語るのにはそれだけしか言えずに。滲むそれを舐め取るのには肩を竦めて]
治療しても簡単には治らねぇだろ、普通の奴は。
下手に弄ると跡が残るんだろう?そういうのは。
[どこか引っかかりそうな言葉を、だけどさらりと口にして。
そのあとに、なんでもないように発せられた言葉にまた視線を向け]
ん?何…って、ちょっ!
[目の前に突然現れた短剣に、思わず仰け反って]
……喧嘩売ってんのかぁ、聖騎士さんは。
んにゃ、こんな感じ。
[と、風でそれをくるくると回転させてみたり]
[大きく息を二度三度吐き出していたことで生まれた隙。
また周囲が崩壊するように崩れていたことにより状況把握が困難であったのも。
天に竜がまっており、影となっていたのもあるだろうか。
どっちにしろ]
…おや、詰めが甘かったですか
[放物線を描き現れる瓦礫に。両の手にトランプを持ち盾にして受けるも防ぎきる力は既になく。弾かれるように墜落し]
…っ……はっ
[笑みをそれでも浮かべた。
だが余力がないことは天に舞っていた竜が霧散したことが明確に示しているだろう]
[呟く声は届く事はなく。
広がる闇に、飴色が厳しさを帯びる]
……月の闇……それなら、ここは、素直にコレ、かな!
[言葉と共に引き出すのは、月と対成すものの描かれた『サン』のカード]
『陽光の剣』……闇、切り払え!
[かざしたカードが光を放つ。
生み出されるのは、闇を退けようとする、真白の光。
真白の光は剣となり、そして]
……いけっ!
[凛、とした声。
銀の輪が、剣を導くように、闇の中心へ向けて投げつけられた]
お身体は、大事になさって下さい…。
[流石に今度の謝罪には、気にせず、とは言えず。
黙殺もできず。
ハンカチ越しに握る右手はそのまま、左手でまた一枚、柔らかな葉を生み出す]
…。
[ハンカチの下、僅かな癒しの力を持つそれを滑り込ませ]
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