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─2階・廊下─
[どこから見て回るか、と。
思案し始めた矢先に聞こえた叫び声。
肩の鸚鵡が、驚いたように羽ばたいた]
あの声……カルメンっ!?
ど、どうしたんだよっ!
[ただならぬ様子に、自分の感じている痛みの事もついぞ忘れ。
声の聞こえてきた方へ、慌てて駆ける]
カルッ…。
[涙を零すカルメンが見え唇を噛む]
お願い、誰か。
誰かカルの手を…!
[その手を掴んで引き戻して欲しいと願う。
知らず祈りの形に手が組まれる]
[覚醒は緩やかに、想いは空っぽ。
ただ呆と天井を見上げる]
今回の事件…結局なんだったんだか
[そういえば絵本をよんでない。
人狼も少しばかり我慢してくれれば二日か三日ぐらいの拘留で、ここまでならずにすんだろうに…と
それは今更言っても仕方のないことだろうけれど]
[扉を開けるには少し時間がかかった。
ノブに手がかかると勢いよく扉を開ける]
じんろー、ころす。
おわってない、いたい、おさまらない。
カルメン、やる。
やらなきゃ、いけないこと!
[扉の先に誰かが居るかまでは考えていない。
紅い蓮の視える方向、ただそこへ向かおうと足を進めようとした]
―2階廊下―
…あのさー、ゲルダちゃん。
ちょっと相談したいことがあるんだけど。
今日も子連れなんで、夜這いの可能性は零ですよー…って。
[返答を待たぬままに、扉の中に踏み込んだのは、決して着替え覗きのびっくりどっきり狙いではないが。
そこにはそれ以上の驚きが]
……、あーっと。
ハインリヒのこともあるから気をつけてって。
そう言おうと思ったのに。
…この窮状はどうしたもんかな。
ま、やっちゃったのは、仕方ないよね。
[軽く肩を竦めて、入った部屋の扉を閉める。
そうして、赤子を寝台に優しく置いた。
ゲルダの反応がどうであれ、紅を纏う男は柔く笑うのみ]
…ま、ほら。
最後までゲルダちゃんには足掻いてほしくてね。
最初っから君とハインリヒのにーさんが、「そう」だって知ってた俺だからさぁ。
……わ、と!
[勢い良く開いた扉に危うくぶつかりかけるも、ぎりぎり踏み留まる事で激突は避ける。
急制動が多少傷に響いたのは、ご愛嬌だが]
あっぶね……っと、カルメン!
どーしたんだよ、落ち着けって!
[言葉の内容から、彼女が自分と同じものを察知しているのはわかっているけれど。
錯乱しているようにも見える様への困惑は尽きず、声をかけながら、一度引きとめようと手を伸ばす]
[いつからだったろうか。
鈍くなったのは。水の上をうろつく中で人付き合いは、風にさらわれる砂か落ち葉のようなものだと思ったのは。
感情がなくなったわけではないが、薄くはあるのだろう。
それもいつかなくなってしまうのではないだろ……]
って…うん?
[ぼんやりと考えていたところで聞こえる叫び声に起き上がり、扉にいこうとして一度止まる]
…用心に越したことはないよな
[必要な身支度を整えて扉を開けた]
――集会所2階・個室――
[ダーヴィッドの来訪に、顔を上げた。
悲愴な表情を浮かべかけるも、告げられた言葉に、きょとりと瞬いた]
……なんです、それ?
見つける者は、二人居た――ということ?
[物言わぬ少女に目を落としてから、再度、男を見た]
[ユリアンに続いて、カルメンも気付く]
[全てが知れるのは時間の問題]
場が、崩れれば…
[終わるのだ、と]
[望むのは場の終焉]
[力あるものと、人狼と]
[自分はそのどちらが終わらせるのを望んでいるのか]
……終わらせてやってくれ。
[今の自分が望めるのは]
[それだけだった]
[――いつものように、ロミルダは目を覚ました]
…ふに。
[いつものように、ごしごしと目を擦って。
いつものように、下ろしたままの髪を括ろうと、辺りを見回す]
あれれ。
髪留め、どこに行ったです?
[きょとんと首を傾げた]
―二階廊下―
[一度。廊下にでて音源に行く前に、窓から外を見る。自衛団員はちらほら見えるが。この声は届いたのか?
どっちにしろ。勘弁して欲しい。昨日ゲルダと一緒に見るからに人狼の男を引き渡したのだ。何事もなく過ぎ去ってくれるのが一番ありがたいのだから]
[名を呼ぶ声は耳に入っただろうか。
気が昂ぶり、呼吸は荒い]
やる、の……。ハッ……。
やらない、と、おわら、ない…!
[眼に当てられていた手が外れ、進むための壁を探す。
痛みに眉根が寄り、涙が止めどなく流れて行く。
伸ばされた手はカルメンの肩を捕え、それにより誰かが居ることに気付いた]
は、な、して…!
[振り払おうと、捕まれた肩の方の手が動く]
…ダーヴィッド?
[今、あいつはなんと言った?]
知っていた?っていうのか?
だったらなぜ?
お前は…
[幾つか思い当たることはあった]
[だけど]
何のために…
察しが悪いなぁ。
最初っからって、俺は言ったよ?
ロミちゃんみたいに途中で理解したんじゃなくて。
もっと、ずっと最初から。
[くすり、唇の片端を上げた笑み]
人狼が誰かだけじゃなくて。
どうすれば、こういう状況になるかも、分かってた。
分かってて止めなかった。
[淡々と告げられる真実の断片]
ま、そんなことより、今のゲルダちゃんに大事なのは、この状況をなんとかすることじゃない?
望むなら、協力させてもらうけど?
この現状を招きつつ、昨日何も出来なかった分も、さ。
[そう告げながら、紅に濡れたロミの身体に手を伸ばし。
その足元の血溜まりに踏み込んだ]
[声が聞こえた]
[ゲルダの腕に抱かれていた子供]
……ロミ。
[名を呼んで、だけど目を合わす事のないように]
[自分を見ずに済むように]
[ロミルダを怯えさせると思ったから]
[殺そうとした人狼だから]
……なんですか、それ。
[先と殆ど同じ台詞。
けれど、声色は険のあるものになった]
協力って、何をする気です?
[伸ばす手がロミルダに届く前、払おうと手を持ち上げた]
[振り払おうとする手は、反対側の手で受けて]
終わってないのは、わかってるよ!
でも、ちょっとでいいから、落ち着け!
何が……誰が、見えたんだよ!
[考えられる可能性は、少ないけれど。
でも、まずはそれを確かめたくて、問う。
肩から離れた鸚鵡が、困惑するようにくるる、と鳴いた]
[そして音源の元へと向かって]
何があったんだ?…ユリアンさん…何かした?
[引き寄せようと手を伸ばすユリアンを振り払おうとするカーラの様子に。先程のカーラの叫び声も加えて、怪訝そうにユリアンを見る]
もしかして、落としちゃったですか。
[眉を寄せて、ベッドから降りる。
部屋の中では2人が話し、動かないほうのロミルダもいて、廊下ではだれかの叫び声。
だけどもロミルダにはそれが見えてないし、聞こえてもいない]
あっ…
[声を掛けられて振り返る。
ほんの一瞬、眉を寄せたのは何故だろう]
ハインおじさん、おはようです。
[それでも、まるでなんにもなかったかのように、ロミルダは挨拶をした]
[肩と手を掴まれ先へ進め無くなり。
それでも先に進もうとする意思を見せながら]
ローミュ、みえ、た…。
あかい、はす、あった、の…!
じんろー、おそわれた、しょーこ。
じんろー、まだ、いるの!
[終わったと安堵した矢先の出来事。
終わらせられなかった悔しさもカルメンを支配する]
おわらせ、ないと、ダメ、なの!
[聞こえたゼルギウスの声に、振り返る]
俺は、なんもしてねーっつの!
つうか、なんでこんなに錯乱してんのか、俺が聞きてぇよ!
[『護り手』は、対なる存在を持たぬが故か。
対を失う痛みの所以はわからない]
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