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ああ、チーズなら、沢山持って来たよ。さっきもドミニクに分けてやる約束をしたとこだ。
[にこにこと羊飼いは笑います。自慢のチーズをみんなが楽しみにしてくれているのは嬉しいことでした]
まったく、ホラントの野郎。
妹ほったらかして何してやがんだ。
[木こり小屋の近くまで戻った時、当の兄の姿が見えました。
ドミニクは今度は怒りで怖くなった顔で迫ります。]
……おい、ホラント。
何噂して回ってんだかしらねえが、妹を泣かすな。
そんな暇なら荷物持ちぐらいしてやれ。
[最終的にアナが泣いたのはホラントのせい。
勝手に結論付けた木こりは不機嫌さを隠しません。
それに気圧され、ホラントは例の噂話を話したのでした。]
[どれくらい時間が経ったのでしょうか、思い切ったように膝をぽん、と叩いて立ち上がりました。]
牧師様、すっかり時間を取らせてしまって申し訳ありません。よろしければ夕食も上がっていってくださいな。私はちょっとだけ用事を済まさせていただきますので。
[ゼルマはその場を取り繕うように台所へスープの煮え具合を確かめに行きました。]
ええと、足りない材料はなんだったかしら。
[呟きながら、雑貨屋さんへと歩いて行きます。]
喜んでくれるひとがいると、作るのも楽しいのよね。
[ツィンカが急用で発った事はまだ知りませんから、彼女が喜ぶのがみたい、という気持ちが強いのでした。
外に飛び出した友達は、とてもとても、大切なのです。]
ホホ、そうかそうか。
[おじいさんは、ニコニコしているアルベリヒに頷きます]
ドミニクもチーズを欲しがっていたのかい。
あやつ、昨晩は酔い潰れておったようじゃが、今朝はどうであったかのう?
[そんな風に考え事をしているから、気がつきませんでしたけれど。
買い物籠の持ち手の花、その裏側には小さな光。
それはちらちらと瞬いた後、ふわり、と花を離れてどこかへ飛んで行きます。
でも、全く気づいていないみたいですよ……?]
アルベリヒ殿。
短い間だが、よろしく頼む。
[アルベリヒに挨拶を返します。
足元で小羊が鳴いたので、旅人はまた地面を見ます。]
この羊も飼っているのか。
可愛らしいな。
[旅人は言って、目を細めました。]
ああ、二日酔いで大変そうだったな。
[くすくすと羊飼いは笑って、少女を泣かせて困っていた木こりの話を老人と旅人に披露しました]
いいえ、とんでもありません。
面白いお話を聞かせていただいて
ありがとうございました。
[牧師はお茶を飲み終えて、老女に礼を述べました]
……よろしいのですか?
[台所へと消える老女を見送ります。
女将の姿のない宿屋に、
牧師はなんとも言えない居心地の悪さを感じていました]
……お前なあ。
それが本当なら何でうろうろしてんだ。
ちっちぇえアナを一人にしといていいのかよ。
[それはホラントも少々痛かったらしく、さっさと逃げ出していくのでした。
とは言っても、あのホラントです。
まっすぐ帰るかははなはだ怪しいのでした。]
あんな兄じゃ、そらしっかりするわな。
[ぼそりと呟き、木こりは小屋で仕事を始めます。
夕食までにするべきことは山のようにあるのでした。]
ああ、こいつは春に生まれたばかりの子羊さ。双子の一匹でフリーっていうんだ。
おいらのとこの羊だから、小さくてもいい毛並みだよ、ほら、触ってみな。
[ひょい、と子羊を抱き上げて、羊飼いは旅人の目の前に差し出しました。白いふわふわの毛をした子羊が旅人を見つめてきょとんとしています]
ホホ、そりゃあなんともあやつらしい……。
[木こりと少女の話を聞いて、おじいさんはのんびりと笑っています]
酒のやめ時がわからんとは、あやつもまだまだじゃのう。
そんな時に出くわすとは、嬢ちゃんも災難じゃ。
いつもより、楽しそう?
あら、きっと気のせいですわ。
でも、お菓子作りの事を考えると、わくわくしませんかしら?
[雑貨屋さんと、交わす言葉はちょっとだけ冗談めかしたもの。]
ええ、それだけですわよ?
他に、何かありますかしら?
[お菓子だけかと問いかけられて、本当に不思議そうにこう返します。
雑貨屋さんの、呆れたようなため息の意味には気づいていない様子です。]
ドミニク殿が。
それは災難だったな。
[アルベリヒが披露したドミニクと少女のお話に、そんな風に言いながらも、旅人はぼうしの影ですこしだけ笑ってしまうのでした。]
おや、いいのか。
[それから、抱き上げられて目の前に来た小羊に、旅人はまばたきします。]
ならば、失礼して。
[こちらを見つめて来るフリーを驚かせないように、旅人はそっと触ってみました。]
なるほど。
確かにいい心地だ。
……おかしな雑貨屋さんですわねぇ?
[買い物が済むと、こんな事を呟きながらお店を出ました。
それから、宿屋へ向けて歩き出します。]
女将さんが戻っているといいんですけれど。
〔ちいさなリュックに、手にはランタンをひとつ。
あれからいくらか経った後、眉をきゅっと上げた勇ましい顔つきで、黒い森の入り口にいた。〕
……お兄ちゃんばっかり。
ひとりで、ずるいんだから。
〔理由ばかりは、なんとも子供っぽかったけれど。
まだ月の昇りきらない頃、それでも、黒い森はやっぱり暗い。〕
[ゼルマは曲がりなりにも女将の得意料理に近いものを牧師に出して一休みしています。]
ああ、そうだった。ツィンカの使っていた部屋を片づけておかないといけないわね。
[ゼルマは二階に上がっていきました。]
そうだろう?
[旅人の言葉に羊飼いは自慢気に胸を張りました]
あんたは旅の人なら宿屋に泊まっているんだね。
だったら、うちのチーズの美味さも、すぐに判るよ。
[そうして、老人と旅人としばらく立ち話してから、羊飼いは宿屋へと辿り着くでしょう**]
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