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掘る方が良いだろう。
水に沈めては、いずれ腐敗臭が泉から湧き出てしまう。
しかし土に埋めれば、いずれ彼の身体も、あの夢幻の花の栄養となり生まれ変わるだろう……。
シャベルはどこだろうな?
探せばあるだろう。玄関にほど近い倉庫かな?
花が燃えるのは、俺は別に構わんが、延焼されちゃかなわんからね。
[クインジーの問いに、肩を竦め]
泉に沈めるのは個人的には好ましくないし、埋めるのが妥当なんじゃないか?
[処置の終わった指先を、一度二度曲げて感触を確かめる]
[チリ、リィン]
ありがとうございます。
…なるべく毒に侵される事の無い様にはと。
――けれど、毒が生き延びる為に必要であるのなら。
[くれないを閉ざし、女は*俯いた*]
シャベルのある場所は知らないな
ならば適当に運んでおくか
[死体に布団ごしに触れた]
[冷たくなっている]
生憎と花には詳しくないんでな
――手伝うなら手伝え
[言いながら、両腕で持ち上げる]
[死体の頭がぐらりと垂れて、それでも凶行の痕跡を人の目からは隠した]
[ひとの声から遠ざかり、倉庫まで歩きました。
玄関から倉庫までは、距離はそう遠くなく。
とはいえ普通のひとより時間は掛かってしまうのですが。]
…ここかしら。
[杖で先を確かめながら、暗がりへと足を踏み出します。
青い色の女のひとが、先程までいた場所と同じでしょうか。
いずれにせよ、わたしにそれを知る由はありません。
中は埃っぽく、少し咳き込みました。]
酒臭い男……
ああ、あのネズミの御方か。
まあ、あれだけ生きることに貪欲な人間ならば、死体を見て、なりふり構わず人に当たり散らすのも分からないでもない。
[玄関から離れ、シャベルを探しに歩き出す。]
……終焉、か。
それをもたらす人間を探せ、ということか。そして……
(……それを殺せということか。)
倉庫になら、あるかもな。
[他にありそうな場所の心当たりもなく、軽く言い]
ああ、埋めるくらいは手伝うさ。
[運ぶのは任せる、と言外に言って。
持ち上げられる『番人』の亡骸に、微かな翳りを帯びた蒼氷を向けた]
庭師の為の倉庫くらいはあるだろう。
それより、青年。
その腕で土を掘っても大丈夫なのか?無理はしない程度に動いてくれれば十分だが。
[古城の庭にあった、小さく古ぼけた倉庫を探し出す。ガタガタと扉を動かし、強引にその場所を開けた。]
[後から倉庫に来る者達とはすれ違う形となったろうか。見えたとしても、廊下の奥に朱色のリボンが見えるだけだったかも知れない]
[歩みは広間へと向かう。冷えた空気のその空間に入り、そのまま窓辺へと歩み寄った。外には先程見た緋色と同じような色の花が咲き乱れている。惨状を思い出し、眉根が寄った]
(…あの時、何か…)
[思い出しそうになったことがあった。あの鮮やかな緋色は以前にも見たことがある。そんな気がして、何かが頭を掠めた。それが何なのかは分からずじまいなのであるが]
[広間の窓辺、その窓枠に寄りかかるようにしながら、カーテンから覗く外の緋色をしばし眺める]
体力を変に使うのは嫌なんでな
許せ
[死体に対して配慮などするつもりはなかった]
[男は引きずり出した死体を――少し痕は残ったが仕方ないと、地面に落とす]
[緋の花が咲く傍で、音を立てて落ちた死体から布がずれた]
ん、ああ。
[腕の事を言われ、視線を紅滲む包帯へと刹那、落とす]
見た目は派手だが、大して深い傷じゃないからな。
だから、大丈夫だ。
[軽い口調で返しながら、倉庫の戸が開くのを待って中を覗き込む。
倉庫の中に並ぶのは、古びた感のある庭道具たち]
[中には添え付けの灯もありましたが、隅のほうまでは分かりません。
灯で照らして、それらしき形状のものを手で触れて探します。]
…っ、
[何かに触れ、慌てて手を話します。
指先を確かめると、僅かに赤い色――血が出ていました。]
刃物?
…こんなところに、危ない。
[今度は用心して触れてみます。
小さなナイフのようでした。
その近くには不自然な、何かを抜いた跡のような隙間がありましたが、わたしは気付いていませんでした。]
………そうか。
[傷のことについては、ただ簡潔に答えるのみ。]
それにしても、時が止まったような倉庫だな。随分と埃くさい。
この鎌は切れるのか?
――無理だな。どうしようもなく錆びている。
[無意識のうちに刃物から探し出していた自分の言葉に、呆れて舌打ちをする。]
ああ、違う。シャベルはこっちだ。
こちらも錆びてはいるが、使えそうだ。
[溜息をつき、シャベルを手に取った。]
[暫くその光を見つめていましたが、やがては眼を逸らします。]
…探さないと。
[それきり、刃物のほうは見ませんでした。
保身を考えるならば、それを手に取るべきだったかも知れませんが。
結局そこではシャベルは見つからず、刃物もそのままにして部屋を出ました。]
時が止まったような、か。
あながち、間違ってないんじゃないか、それ。
城の中も、埃が大分たまっていたしな。
[冗談とも本気ともつかぬ口調で言い。
鎌を検分する様子には何も言わず、自身も錆び付いたシャベルを手に取る]
さて、それじゃ、戻るとするか。
そろそろ、外に出されているだろうし。
――…そうだな。
[自分の脳裏に浮かんだ言葉をかき消すように、栗色の髪の青年の言葉に頷き、外に出た。]
[埃と黴の臭いにまみれた倉庫の外に出ると、今度は「番人」の血と肉の臭いが、ギルバートの身体の中に流れ込んで来た。]
まったく……どこもかしこも異臭だらけだな。まずは「番人」殿を埋めよう。そうでなければ、俺の中の嗅覚が死滅しかねない。
[外に出された「番人」の遺体を見て、肩を竦めた。]
[小さくない桶に水を汲み。
抱えられるだけの布を持って玄関へと戻った。
誰もいないホールで一心に床を拭く。
手にした白い布はあかくなり。
それを漬ける桶の水もやがてあかに染まってゆく]
これでいいのかしら。
[疑問を口にしながらも、ひたすらに床を拭く。
足を包んだ布もまた赤くなっていることには気付かずに]
[倉庫を離れ外へ。
感じるのは死に纏いつく臭い。
それを認識すると、腕に疼きが走る]
……理屈はともかく、早めに埋めるのは、賛成だな。
見てて、気分のいいもんじゃない。
[『番人』の亡骸に一瞬蒼氷を向けて早口に言い放ち。
埋める場所を検分するように、シャベルの先で土をつついた]
[広間の窓。そこから番人を外に埋めようとする青年達の姿が見えた。少し遠めではあったが、何をしようとしているのかはシャベルなどを持つ様子から容易に想像出来る。その際に運ばれた番人から布がずり落ちたのが見て取れた]
………獣の爪………。
倒すべきは、もはやヒトでは無いのかしら、ね。
[ぎゅ、と胸元で左手を握った。終焉の使者を廃さねば、あの番人のようになってしまう。果たして自分の手で、それに抗うことは可能なのであろうか。握った拳がふるりと震えた]
[他に心当たりはなく。
指先の血を舐め、玄関へ戻る前に手当てをしておこうかと、廊下を進みます。
途中、広間を覗きました。
杖の音が止まったのが、聞こえたかも知れません。]
…ええと。
シャー、ロット?
[声の内容までは、遠くて聞き取れませんでしたが。
見えた青い色と声に、記憶を掘り返しながら呼び掛けました。]
[検分をしていたのは足音を聞きやめ、再び布団でくるんだ]
掘るのは任せるぜ
臭いが付いた
[腕を払って、少しでもにおいを落とそうとする]
[掘ってゆく姿を見ながら、男は緋の花へと目をやった]
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