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─中央部・廃墟群─
[廃墟の屋上から屋上へ跳び移って散歩を楽しむ。
その服装は昨日までのシスター服ではなく、袖が大き目な長袖のシャツにジーンズ、そして髪をバンダナで纏めた動きやすい服装。
その腰には、鞘に収められた大振りのサバイバルナイフと拳銃。
トーン、トーンと軽やかに跳び回っていた彼女の頬に冷たさが走る。]
ふぅん、雪か。
[そう呟くと、タンッとビルの貯水塔の上に着地。空を仰ぎ見て、両手を広げる。]
雪よ降れ降れ もっと降れ
すべてを白く 塗りつぶせ
碧も 紅も 黄色も 黒も
すべてを白く 塗りつぶせ
[くるくると貯水塔の上で手を広げ、楽しそうに歌う。彼女の歌うは滅びの歌。すべてを無に返すことこそ彼女の歓喜。]
[遠目に見れば少女の足は靴下を履いたよう。
包帯を鮮やかに扱う手元を、
おともだちを抱き締めて見る。]
…………。
[ユリアンのため息に、びくり。さらに小さく身を竦める。]
悪魔と踊る……か。
言いえて妙、だな。
ま、カミサマを信じない俺にとっちゃ、そっちの方が付き合い易いがね。
[離脱するティルを無理に追いはせず。
その言葉に、くく、と楽しげに笑う。
胸元の、クロームシルバーのロザリオが、揺れた]
……お褒めに預かり光栄至極……と。
[軽く言いつつ、雷光を纏う刃に蒼を細め。
自身も、糸に力を込め、刃を与える]
雪は眠りを呼ぶ、
眠りは死に繋がる、
ならば雪は死を齎すもの?
冷たさは全てを奪っていく。
[手が冷たいと思うから、
冷たさは温かさを奪うと思うから、
ブリジットには温かいとは感じられない。
冷たい、ということは、何よりも恐ろしいと信じているから。]
……温かさを忘れてしまったのかも、知れないね。
……。
[気配と、何も無い言葉と、どちらのほうが今の彼の心境を表していただろうか。
あきれというか、なんと言うか、そんな顔をして立ち上がれば李雪をしばし見下ろしたかと思えば少女の体を次の瞬間には米俵のように担ぎ上げてメディカルルームを出ていく。
猫は、飼い主を先導するように、てちてちと、リノリウムの床の上で肉球の当たる間抜けな音を立てながら進む]
――…嗚呼、もう。
[面倒ですね。 ぶつぶつと文句を零しながら
薄く金へと積もる白を払うように、ふると頭を散らす。
…尤も、傍から見れば零れ落ちる白の欠片すら、
見える事は無いのだろうけれど。
他人から見やれば、どれだけ間抜けに見えるのか。
そう考えて――思わず溜息を零して。
足取りも荒くモニタールームを後にする。]
ね、
イレーネの翼って、体液で出来ている、んだよね。
固めていられるのは、念動力のおかげ。
解けてしまうことって、あるのかな?
[少女の傍を横切り、開かれた窓の外に手を伸ばす。]
雪みたいに。
<掌の温かさを知った白は、解けて、滴となった。
指の間から零れ落ちて、地を濡らす。
もう、元の形に戻ることはない>
[玄関ホールを通り過ぎ、
外へと繋がる扉を勢い良く開け放って。
目の前に広がるのは、モニタで見たままの――“鈍色”。
夜の帳が下りた、闇を纏う廃墟の群れに
……何処か安堵の吐息を、零す。]
……やっぱり、渡さなけりゃ良かったですかね。
[室内の方が寒いとか、やってられない。
小さく舌打ちを零し、乾いた地面へと足を踏み出す。
行き先は、――苛立ちの元凶である少女の下へ。
冬の冷えた風に揺れて、ちりりと小さな音が零れた。]
忘れちゃった、の?
何処にでもあるよ、だからきっとすぐ見付かるよ。
ほら。
[外気に晒され冷えていた翼に、熱を送る。
伸ばされた羽先は温かく、融解の限界の手前を留まりながら]
溶ける事は、あるよ。
溶けないように、暑い時は冷やしてあげなきゃならないの。
[翼を動かす念動力は彼女にとっては負担にはならない。
ただ、翼を維持するために熱を操作するのは結構な労なのだ]
雪、溶かしちゃったら可哀想。
折角降ったのに、いつかは溶けちゃうのに
[空気に俯いていれば、影を感じ、
ユリアンが立ち上がったのに気付き
恐る恐る視線を上げるも……]
…………!
[突如、荷物の用に抱えあげられて。
慌てるように球体が二人の周りを飛び交う]
聖印を胸にそう答えるか。
[右手を持ち上げ、振り下ろす。
先程よりも威力は低いが幅広く伸びた光がアーベルの周囲へと向かう。展開されている糸を牽制するように]
だが同じく。
神とは縁遠いな、私も。
[その一瞬後。
再び距離を縮めるように地を蹴った。
全身を覆う雷光。この出力ではそう長くもたないだろう]
こいつは、捨てられないんでね。
カミサマ信じる信じないに関わらず、持ってないとなんないんだよ!
[それが、兄との『約束』。
そこに刻まれた言葉は、忘れてはならないと。
そう、言われたから]
……はっ……やる気ですか、と!
[周辺に伸びる光。
そして、全身を雷光で包んで突っ込んでくる様子に、にやり、と笑いつつ、自身も糸に込める念を強くする。
全力には全力で当たる。
それが、こちらの流儀なのだから]
そうだ、ね。
見つけたら、いい。
でも。
[少女の羽先は、温かい。
溶けてしまいそうだった。
温かさを知ってしまったら。
何もかも。]
……昔は、好きだったんだけれどな、雪。
[可哀想、というイレーネをちらりと見た。
ブリジットの眼差しは、何処か、冷えている。]
溶かしたくなくても、溶けてしまう。
だから、触れたら、いけない。
それじゃあ、雪は、寂しいままだね。
温もりを知ることは出来ない。
きっとね、雪にとって私達は。
私達にとっての火と同じ――なんだよ。
雪にとっての温かさは、私達のよりもっと冷たいの。
[降り積もる雪を指差して]
雪は雪同士でほら、寄り添ってる。
可愛いよ、ね。
[火なんて以ての外、と言われればこくり]
[猫の後をついていけば、それは自分の向かいの部屋。
扉を開ければ、ぐっちゃぐちゃの部屋の中にまたため息が零れ、どうにか無事らしい寝台の上に少女を降ろして]
…治るまで、出歩き禁止。
[静かに一言呟いて、そのまま部屋を出て行く]
[ユリアンが少女を運び込んだのは、
ぶりじっとが教えてくれた部屋。
少女は自分の部屋の寝台に降ろされるが……]
…………!
出来ないよ!そんなこと!
[告げられた言葉に咄嗟に叫ぶ。]
それが君の基か。
[力バランスの制御、磁場の展開。
同時に行うにはそこまで引き上げるしかなく]
思いは――力に。
[制御を助ける仮面の下から、僅かに激情が瞳を走る]
互いに、望むものの為――!
[距離を詰める。相手の構える糸刃を睨みながら。
周囲へと磁場を僅かに広げてそのまま飛び込んでゆく。
左腕の刃が青白い光を帯びる]
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