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そして、物語は動き出す。
目覚めたものが何処へ向かうか、それは一人一人の思うがままに。
どうやらこの中には、村人が4名、占い師が1名、霊能者が1名、守護者が1名、狂信者が1名、智狼が2名いるようだ。
いやもう、お金じゃなくて、食べ物の現物支給で充分。
米とか入っていたら、思わず喜びの舞を踊ってしまいそうよ、私。
[同じように桜に目を向けた瑞穂に一瞬だけ視線を移動して、また桜を眺める]
まあ、古来より桜には不思議な力が備わっているというからねえ。
日本の全てを飲み込めるぐらい、懐の深い樹よ。桜は。
[桜とは、日本と切っても切れない仲だ。
敬愛する存在としても、畏怖する存在としても]
ま。何か起きても何とかなるでしょ。
[あっけらかんと笑いながら言い放ち、そして、探していた人物をやっと、桜の近くで見つけた]
おお。探していた人物発見。
─中央広場─
[視線を向けられても、睨まれても、素知らぬ顔]
千恵、早く食べないと芋が不味くなるぞ。
[代わりに紡いだのは従妹への言葉。
冷めてふやけたフライドポテトを食べたくないのはオレ自身だったが、それを理由に食べようと促す。
勿論、幼馴染にも同じように声をかけた]
[呟きの後、視線は桜の枝へと向かう。
しばしの沈黙。
後、その表情が、険しさを増す]
……桜……!
[零れ落ちる掠れた声]
……どうあっても……始まると、始めると……!
……。
[捜し求めていた人物は、何やら一人で盛り上がっていた]
……ちょっとちょっと綾野さん?
[思わず、少し困ったような顔で汗を一滴流しながら、手をふるふるしてみた。
まあ、場所がまだ少し遠いので気づきもしないとは思うが]
[梢の一角、睨むように見上げる視線。
それを辿ったなら、気づくだろうか。
赤へと変わった葉の影に、小さく揺れる、一塊の蕾に。
しばし、それを見つめた後、女は公園に集まる者たちを振り返る]
……離れなさい!
この桜に、近づいては、ダメ。
魅入られ、堕ちてしまう……。
眠れるものが目覚めてしまう……。
触れなければ、近づかなければ、何事も起こりません。
だから……。
[近づくな、と繰り返す。
その言葉を嘲るように。
何処か遠くで、鈴の音が響いた──**]
―中央広場―
[伽矢に呼ばれて、ぴくんとする。]
たべるー!
[食欲一番。百華から離れると、伽矢のところへ走ってゆく。
伽矢の隣、空いたベンチに腰掛けて。包んでもらったポテトの長さを比べながら、小さい方からはむる。
にこにこ。美味しい。]
[神楽の説明に頷きながら]
確かに桜っていろいろな逸話も多いですよね。
日本人にとってはなじみの深い樹のようですし。
[楽観的な様子には静音らしいと思いながらもこちらもつられ笑顔を返し、不安な気持ちもなくなった。
探していた人を見つけたらしく、千恵にかける伽矢の声も聞こえ]
あ、私は伽矢くん達とご飯たべてきますね。
今度、何か差し入れもって行きますね。
[伽矢のことはよく話しているので幼馴染だということは神楽に伝わるだろう。
伽矢の方へと行き]
ごめんね、伽矢くん。
静音さんにはよく相談したりとかお話聞いたりしてもらってるの。
[逆に愚痴なども聞かされることもあるのだが]
ん、ああ……。
時間的には、そのくらいか。
[昼、という言葉に何気なく返し]
ああ、俺も子供の頃にはよく登ったな、あれには。
……この木、特有の話……っていうのは。
なんか、あったかな……?
[続けて向けられた問いに。
やや、首を傾げて呟いた矢先。
聞こえた、声]
……は?
何だよ、いきなり……。
[こんな所で私に出くわし、気まずいのだろう。
伽矢が千恵ちゃんと稲田さんちの瑞穂ちゃんを呼んでいる。]
ほら、伽矢が呼んでるよ。
冷めないうちに食べてらっしゃい。
[千恵ちゃんを送り出し、桜のほうに目を向ける]
……彼女、ただならぬ雰囲気ね。
桜に魅入られるって、この国の者なら誰でもなんじゃないかしら。
[伝説の事など知りはしない。
妄想に取り付かれた哀れな女。
私が彼女について思ったのは、それだけだった。
遠く聴こえる鈴の音には、大した注意も払わない。
伽矢の傍にやってきた瑞穂ちゃんに、柔らかく微笑み会釈をした]
─中央広場─
[飛んで来た千恵の頭を撫でてやってから、袋の中からそれぞれの頼んだセットを取り出す]
ふぅん、あの巫女にねぇ…。
頼りになるのか?
[失礼ながら見たところそうは思えなくて。
幼馴染に疑問を投げかけながら季節限定のセットを渡す。
最後にオレの分を取り出し、大口を開けてハンバーガーに齧り付いた]
………何だ?あの人。
[急に騒ぎ始めた紅を纏う女性。
訳の分からぬことを口走る人物に、眉根を寄せて視線を投げた。
自然と、その視界に葉の色づいた桜の樹が入る]
―中央広場―
……なんだ、いきなり。
[届いた『忠告』に、軽く眉を寄せる]
魅入られる、と言っても……今は花すら咲いていませんしね。
[千恵が「もも」と呼んでいた女性の言葉に呼応するように、シンボルツリーを見上げる。
何処かで鈴の音を聞いた気がした]
おお!それは本気で助かる!
1食浮くだけで私の命も1日増えるから、切実にお願いね!
そんじゃ、またね〜。
[瑞穂との会話を終了すると、聞こえてくるのは、綾野の叫びのような言葉]
……ふぅむ?
[そのただならぬ様子に、少しだけ頭を捻った]
畏れ。穢れ。
そういうものの一つなのかしら?その桜?
なんとなく変な感じはしたんだけど、やっぱ、アッチ関係のモノかな。
いいですね。
こんな木があったら私も登ってたかな。
[そこに届く女性の警告。
顔を向けたのは当人にではなく桜の大樹。
耳元に手を当てて軽く首を傾げる]
…意味が分かりません。
別にどうしても登りたいとも言いませんけれど。
[少しして、問題の発言をした女性に顔を向け直した]
[史人の大丈夫、にほふんと笑顔になり。
百華にはぁいと返事して、伽矢の隣で食べたポテト。
悲しいかな、地面におちて土まみれ。
悲しい時に、届いた言葉。
「桜に近づいてはダメ。」
何で駄目なんだろうかと。言われるとよけいに近づきたくなる。
鈴の音は、聞こえたけれど。聞こえただけで。少女には意味をもたない音。
じ。桜の枝を見る。
うさぎは反対むいたまま。]
相談って聞いてもらえるだけでも心がすっきりするからね。
[頼りになるかという質問には直接には答えず、千恵をはさむようにしてベンチに座り伽矢からセットを受け取る。
ポテトを適当につまんで食べていると、神楽が近づいていった女性が何かをしゃべっている]
静音さんの知り合いなのかな?
どうしたんだろう?
[先ほど神楽としていた話、女性の言葉の内容。
先ほど浮かんだ不安は浮かんですぐに消えた。
千恵がポテトを落としたから]
千恵ちゃん、ほらポテト落としたよ。
[興味はすぐに千恵のほうに移り、自分のポテトを一つ千恵に*渡した。*]
ああ、見晴らしはよかった、が。
[その後どれだけ怒られたかは、以下略]
……確かに、意味がわからんね。
唐突に、何言い出すんだか。
[気のない声を上げて、大分短くなった煙草を携帯灰皿に落とす]
……まーさか、『桜と童女の怪異』が出てくるわけでもあるまいに。
花が咲けば皆こぞって集まるけれど、
そうでなければ見向きもしない。
……人って、勝手ね。
[どこか、女に集る男達の様に思えて、小さく鼻で笑った]
ねぇ、貴方。 史さんって呼んでいいかしら?
私はママでも、ももでも、何でもいいわ。
私、貴方を店以外のどこかで見た事あるの。
思い出せなくて……
[座ったまま、首を捻り捻り尋ねた]
[聞こえたかに思えた鈴の音はすぐに意識の外へ]
あーあー、勿体ない。
悪いな、瑞穂。
[従妹が落としたポテトの代わりに自分のポテトを差し出した幼馴染へ礼を言い。
土まみれになったポテトを拾い上げ、ゴミ袋へと放り込んだ]
聞いてもらえるだけで、か…。
自分だけで溜め込むよりは、ってことかな。
[幼馴染のぼかした返答にはやや納得の色を示す。
巫女と紅を纏う女性が知り合いなのか、と言う話題になると、オレは肩を竦めるに留めた。
交友関係なんて知るはずもなかったから]
[神楽が、ゆっくりと警告の声を発した女性へと近づいていく]
ね。
良かったら、何事か私にも教えてくれないかしら?
一応、私も巫女の端くれだし、何か力になれるかもしれないよ?
そういうことは、ある程度知識があるほうだしね。修行不足であんま大したことはできないけど。
[ぱぁ。ポテトは大きくなって返ってきた。]
みずねえちゃ、ありがとお。
[桜への興味は一旦途切れ。
嬉しそうに受け取って、端っこから大事にくわえる。
あぐあぐ食べながら、瑞穂と伽矢の話は聞いていた。
なにやら難しい事を話しているらしい。]
かやにいちゃは、何かためてるの?
[ひっかかった所を尋ねた。
子供の疑問。深い意味はきっとない。]
……そうですね。
芸能界の流行みたいなものだ。
[眼鏡の奥の目がやや遠くなる。
違う連想を言葉に乗せた]
え?
……あ、はい、構いませんよ。ももさん。
[名を呼ばれて虚をつかれたように瞬いたが、ややあって頷きを返した]
……えっと。
もしかしたら、仕事の関係かな。
これでも一応、芸人やってるもので。
[頭を掻きながら、コンビ名か相方の名を出せば思い出されるだろうか。
慣れているとは言え、笑みが苦笑めいたものになっているのは*否めなかった*]
登ったら目立つでしょうね。
[大人であっても怒られるだろうことは想像に難くない]
花も咲いていませんし、童女も見当たりません。
あの子なら年齢は合うかもしれませんけれど。
[広場を見渡し、千恵の方を見た]
桜に近づきすぎたのは、あの人自身なのかもしれませんね。
[近くに親戚の姿も見つけたがここからは少し離れている。大きな声を出すことはなく、厳しい表情の女性へと視線を戻して言った]
[早々にハンバーガーの最後の一欠片を口に放り込んでいたのだが]
んっ、ぐ。
………んや、別に。
[従妹の一言にその一欠片をオレは喉に詰まらせかけ、コーラで流し込む羽目になった。
返答は、たっぷりとした間を空けた後に、ただ一言だけの否定]
ああ、目立つ目立つ。
というか、目立った目立った。
[他人事のようにさらりと言って]
……だよなぁ。
まぁ、もし咲くんなら、それはそれで、仕事のタネにはなるけど、俺の場合。
[呑気な口調で言いつつ、千恵を見やっての言葉には一つ、頷いて同意した]
……近づきすぎた、ねぇ。
もしかすると、そう……かもな。
[それから、視線は女の方へと。
そこでようやく、その傍にいる茶飲み仲間に気づいて、一つ、瞬いた]
……なんてーカッコで出歩いてんだ、あいつ。
[桜を見ているようで、見ていなかった。
死んだ夫によく似ている『あの人』の事が頭に浮かぶ。
史さんの遠い目は、視界の端にぼやけていた]
ふふ、史さん。完璧に覚えたわ。
[口の端をあげ、にやりと笑った。
店で笑った時よりきっと自然だろう。
なんたって、分厚い化粧の邪魔はないのだから]
ああ、芸人さん。
それでさっきあんな事……。
ああ、わかった!
飛び魚の舞ってネタやってるでしょう?
……ちがった、かしら。
[本当に薄っすらとした記憶しかなくて、
史さんの苦笑を見ると言葉尻はすぼんで*しまった*]
[ゆっくりと、相手に警戒を与えないように近づいてみたのだが、それは綾野の鋭い視線によりさえぎられた。
その目からうかがい知れるのは、明らかなる拒絶の感情]
いやん。
けんもほろろ。
そんな勇ましい目で見つめなくてもいいじゃない。
[大仰に肩を落としたようなリアクションを取ってみたが、少しだけそうしなければいけない意味が理解できた]
でも、ちょっと分かっちゃった。
多分、あなたには敵がいる。だから、自分以外の人を信用できないんじゃないかな。
その敵とやらが何かまでは分かんないんだけどね。
まあ、もう一度言っておくけど、良かったら私にも何が起きたのか教えてよね。
確証は持てないけど、多分、私はあなたの敵じゃないよ。
[きょと。向けられた視線とは、あいそうで合わなかった。
気のせい?とちょっと首を傾げると、うさぎも一緒に首かしげ。
両手でもったハンバーガーをはむっとして。
ちょっと喉を詰まらせた伽矢に瞬いて口をはなす。]
かやにいちゃ、だいじょうぶ?
[言ってる間にコーラで回避していて。
間が長い理由は、子供にはきっとわからない。
別にといわれれば、それが全て。]
そっかー。
[そこで終わってしまう。
隣の瑞穂は気づいたかどうか。]
ん、大丈夫。
[従妹に訊ねられて、返すのは頷き。
流石に、ここで言えるはずは無かった]
食い終ったら、オレは家戻るな。
汗流して着替えたいし。
千恵はどうする?
街中回るってなら、その後に付き合うけど。
[幼馴染がどんな視線を向けて来ても、気にしない振りをして。
話題を逸らすようにオレは従妹に訊ねかけた。
返答を聞きながら、しばらくは残ったフライドポテトを口に*運ぶ*]
ま。今すぐには信用できないかも知れないけど、そういう人もいたんだとは覚えておいて。
巫女さんに悪い人いないよ。うん。
[そんな言葉を残して、くるりと振り返った。
その時に、綾野の言葉が真実だったと仮定して、悪い影響を受けているものはいないかと、腰に両腕を当てて、周りを見渡す]
ふむ。
[特には見当たらない。
それが、まだそういう影響が出ていないのか。それとも、自分の単なる修行不足で見えないせいなのかは分からないが、とりあえず、自分の分かる範囲では見当たらない。ということだ。
そして、その見渡した範囲に札斗の姿が見えると、しゅたっと手を上げて近づいていった]
やっほ。ひふみん。
あれから溺れなかった?
大騒ぎだったでしょうね。
[他人事のよな言葉にも淡々と相槌を打つ]
貴重な体験になりますか。
…あ。
[ようやく目の前の人物がどういう仕事をしているか思い出し、横に置いたままの雑誌と交互に見た]
どちらにしても今近づいて刺激することはありませんよね。
私はお昼過ぎたならそろそろ行かないと。
帰りにも寄ってみることにしようかな。
[雑誌を手に取り立ち上がる]
…あれは本物の神社関係者さん、ですよね。
[礼斗の視線を追いかけ、確認のよな呟きを一つ。
近づいてくる姿に軽く会釈をした]
よう。
[手を上げてこちらにやって来る神楽に、ひら、と手を振って]
だから、溺死はしない、って言ったろうが。
[5分ほど、意識は飛んだがそこには触れず]
……それより、今の。
なんだったんだ?
[神楽がやって来た方を見やりつつ、問う]
[大騒ぎだった、という言葉は否定せず。
貴重な体験、という表現には頷いた]
ま、あんまり重ねたくない実体験もなくはないけどなぁ。
[雑誌との間を行きかう視線に苦笑しつつ、さらりと言って。
確認するような呟きには、一応、と答えておいた]
[こっくりして、食べかけのハンバーガーをはむり。
ぱくついて平らげると、手についたケチャップを舐めた。
行儀が悪い、ままがいればきっと言われる。瑞穂も注意するだろうか。
伽矢の問いかけには、ちょっと考える。
一緒にいてくれるのは、とても、嬉しかったので。]
ちえは………ちえ、ここで待ってる。
[帰っても今日も誰もいない。それよりは、賑やかな公園の方が好きだった。
大きく手を振り、笑顔で見送り。]
かやにいちゃ、いってらっしゃい。
[札斗のそばに移動すると、彼と話している女性が眼に入り、神楽が笑顔で会釈を返した]
や。こんちわ。
ひふみんの彼女?
[いきなり突拍子も無いことを言い出した。
そして、札斗に視線を戻し]
溺死じゃなくて、溺れたかどうかって言ってるのよ。
そりゃ、死んでたら迷わず払っているってば。
[そんなことを言いながら、札斗の視線の先を追いかけて、質問の意味を悟った]
知らん。というか、教えてくれなかった。
分かったことは、この桜が危険ってことかな?
私が見た感じは、普通の桜に見えるんだけどねえ。
[伽矢が去った後、ぷらぷら、足を動かしていたが。
やっぱりちょっと気になって、とてとてと、桜の前の女の人に気づかれないよう、後の方から桜に近づいた。
近づいて、見上げる。
今朝と一緒、何の変わりもない桜の大樹。]
………あっ。
[”それ”に気づいて声を上げると、女の人に気づかれた。
近づくなと、強い口調の警告。
大きな声はとても怖いものに思え。怯え、あわてて桜の前から逃げた。
前を見ずにまっすぐ逃げたものだから、途中で誰かにぶつかった。]
んなわけあるか。ご近所だよ。
[彼女、という言葉はあっさりと切り捨てた]
……溺れてはいない。溺れては。
[直前までは行ったりしたが]
桜が危険、ねぇ……。
あれが危険だったんなら、昔からあれで遊んでた俺はどうなるんだよ。
……ま、俺が過去に取材した事態と照らし合わせれば、それなりに推測はできるが。
確定要素は、何もないからなぁ。
[彼女じゃないとあっさり切り捨てられると、大げさに肩をすくめて]
なぁんだ。朴念仁にもついに春が来たのかと期待したのに。
そうなってくれれば、うちんとこの良縁とか、家族安泰とか、安産とかのお守りが売れたかも知れないのに。
ま。そんな話はいいとして。
昔じゃなくて、今から危険になったんじゃないの?
確か……そう、「始まる、始めるのか」とか綾野さんが言っていたから。
ああ。でもそっか。そうなると、これから。なのかな。何かが起きるのは。
神社に何か良い道具あったっけなあ。
恐怖体験は嬉しくないですね。
[礼斗の苦笑に真面目な顔で頷いて]
……。
はい、違います。
[どう答えればいいのか考えていたら先に一刀両断してくれたので、後に続けてそう言った]
こちらこそお邪魔をしまして。
お先に失礼します。
[もう一度、礼斗と神楽の両方に向けて頭を下げると、繁華街方面の公園出口へ*向かった*]
[黒江が離れていく姿を目に留めると、小さく手を振った]
お話の邪魔しちゃってごめんね。
今度は、もうちょっと落ち着けるところでお話でもしよっか。
例えば、うちの神社の縁台とか。
ああ。ついでにお賽銭に幾ばくかのお金を入れてくれると嬉しいかな。
[明らかについでではなく、そちらが本命だった]
……その、どこまでも商売に結びつけるところはどうにかならんのか。
[思わず、呆れたように突っ込みを入れて。
『今から』という言葉に、少しだけ、眉を寄せる]
……ま、なんにしても、だ。
なんかありそう、と思うんなら、備えとけばいいんじゃ?
[それでも、やはり危機感ないままさらりと言って]
ん、ああ。んじゃ、また。
[軽い口調で黒江に手を振るのと、足に衝撃を感じたのはほぼ同時]
……っと!?
[突然の事に軽くよろめくものの、倒れるには至らず]
一体、なんだよっ……て。子供?
商売に結び付けないと、若い命が一つ失われるのよ……!
具体的には私が。
[後半茶化しては見たが、結構本気だ。
何とか色々な人の善意で生活を続けられてはいるが、このままの調子では、ろくな未来にならないことは明白ではあった]
ま。そだね。
なんかあったら、適当にこなしておくよ。
[とかこちらもあまり緊張感の無い様子で軽く返して、なんだか、札斗の足に突撃を仕掛けている少女をなんだか他人事のように一部始終を見つめていた]
わお。
見事なタックル。
それで、足を絡め取ったら確実だったね。
はぅ、ごめんな、さ。
[顔をしたたかにぶつけて。
小さな両手で鼻を押さえちょっと涙目になりながら謝った。]
つぼみ、見てたら、あそこのおばちゃんに怒られたの。
怖くてびっくりしたらぶつかったの…。
[と綾野を指差そうとして、慌てて手を引っ込めて。
もういちど小さく、ごめんなさいと謝った。]
……内職でもしたら。
でなかったら、境内に畑でも作るとか。
[若い命が、という部分に入れるのは冷静な突っ込みをいれ。
涙目になる少女の様子に、がじ、と頭を掻く]
ああ、俺は大丈夫だから……って。
……つぼみ?
[余りにも季節にそぐわない言葉。
思わず、視線は桜へと向くが]
いや、気にしなくていいから。
……むしろ、そっちが大丈夫か?
[小さな謝罪に、少女の前に膝をついて。
ぽふ、と宥めるように撫でてやりつつ、軽く問いかけた]
[少しおどおどしているのは、目の前の人らを知らない事と、痛いのとが一緒にきてるから。
見上げていたが、視線を下げられ撫でられると、ちょっと固まった後で気が緩んで、ほふり。
ほっとした笑顔になる。]
ちえは、へいきだよ。
[緊張が溶けると、聞き返された言葉にこっくり頷きくり返す。]
うん、つぼみ。
はっぱの下に、ぴんくいろ。
ちと、内職も、畑も出来ない方面なのよね。
巫女としてお金を稼いで生きていけないとダメなもんで。
色々とあんのよ。これでも。
[そんなことを言った彼女の顔は少しだけ大人びて見えた。
まあ、年齢不詳気味なので、年相応になっただけなのかもしれないが]
おーおー。
ちゃんとおじさんしてるねえ。
あんたのことだから、子供の扱いなんてわかんねーよーなんて言い出すかと思った。
[茶化しながらも、少女の言葉に引きずられるように、桜を眺める]
つぼみ、か。
[一言だけ呟き、そして、もう一度綾野の姿を見つめる。
依然として彼女は、変わらぬ姿でその場に立ったままだ]
何を隠してるんだろ。
そっか、大丈夫か。
名前は、ちえちゃん、ってのか。
あ、俺はひふみ、な。
[ほっとした笑顔に、安心させるよに笑って名を告げるものの。
蕾の話を聞けば、やや、思案するよな色が過ぎる]
桜……どう、なんだろうな。
[頭の中を巡るのは、取材と趣味で溜め込んできた知識たち]
あ。ちなみに私はかぐらお姉ちゃんね。
いい?間違ってもおばちゃんなんて呼んだらダメだからね?
多分、綾野さん───そこの桜の樹のそばにいる人も、おばちゃんなんて呼ぶと怒るから、注意しなさいね。
……どんな事情なんだか。
ま、それならそれで、頑張れ。
[色々と、という言葉には、さらっと返す。
事情がわからなければ、そういうしかないわけで]
……誰がおじさんだ、こら。
まだ、そういわれるトシじゃねぇぞ。
取材先で、子供の話聞くことは多いからな。
自然と、慣れたんだよ。
[アヤカシのものには、大人よりも子供の方がより親しむ。
故に、取材対象になるのは、子供の方が多かった]
……隠してる、か。
さて、何なんだか、な……。
[礼斗は思案、神楽は咲かないで欲しいと。大人の意見は色々だ。]
冬に咲いたら、寒そうだね
おうか、さむくないのかな。
[『おうか』はさっきの怖い人が言ってた名前。
きっと桜の名前だろうと、子供ながらに思って口にする。]
[神楽に当然のようにおばちゃん、と言いかけて。
おねえちゃんと先に言われたので、素直にこっくり頷いた。]
ひふみおじちゃ、かぐねえちゃ。
…あやねえちゃ。
[言い直すも、綾野はやっぱり怖い人、という認識が出来てしまい。口にするにも少しこわごわ。
礼斗がおじさんなのは、神楽の入れ知恵というか刷り込みだ。]
おう。頑張る。というか、現在進行形で頑張ってるよ、私は。
[小さくガッツポーズを取って見せた]
いーじゃん別に。子供から見たら、あんたぐらいのは全部おじさんだよ。
ただし、女性がおばさんと呼ばれるのはダメ。絶対にダメ。
大阪ではどんな年配の人でもお姉さんと呼ぶ。分かるね?
つか、考えてみれば、あんたの仕事って子供か、偏屈そうな人間ばっかりと話しているんだもんね。
そりゃ、話し方もうまくなるか。ナンパとかにも応用できるといいね?
[ニヤと笑った]
さてさて、何を隠しているかはしらねど、そろそろ神社に戻りますかね。さすがに今日は長く空けすぎたし。
神社の書庫に参考になりそうなもんあるか探してくるかな。もうめんどくさいし、今日はこのまま神社は休日にしよう。うん。
[そうこうしていると、自分を呼んでる声がする。
何事かと心配した瑞穂か、戻ってきた伽矢か。]
あっ、よばれたの。ちえ、いくね。
ひふみおじちゃ、かぐねえちゃ。ばいばい。
[手を振るとうさぎも一緒に耳を振り。
少女は呼ばれた方へと*駆けてゆく。*]
……できれば、おにいちゃん、と言ってほしいんだが……。
[おじちゃ、といわれてがっくりきた。
こんなやり取りも、しょっちゅうと言えばしょっちゅうなのだが]
……って。
『おうか』?
[紡がれた名前。
覚えあるそれに、瞬き一つ。
同時、掠めたのは、嫌な予感]
寒そうだからさ。余計咲かないでいて欲しいじゃん?
暖を取るために、何か騒ぐよりは、最初から厚着のままですごしてもらったほうが、みんなハッピーに終わりそうだからね。
[そして、少女が敬称を復唱しているのを聞き、満足そうに頷いた]
うん。えらい。
よく覚えました。
お礼に頭を撫でてあげよう。
[笑顔で、少女の頭を撫で撫でした]
……いや、それはそうだが。
年齢不詳には、言われたくねぇぞ。
[思わず低い声で突っ込みつつ。
立ち上がり、千恵がかけて行くのを、またな、と見送る]
ナンパ、ねぇ……。
騒がしいだけの女にゃ、興味ないんだが。
[ニヤ、という笑いに返すのは大げさなため息]
……ああ。
俺も、取材資料当たってみるかね。
何か、妙に気にかかるっちゃ気にかかるし、な。
─中央広場・ベンチ─
そっか。
じゃあちょっと行って来るな。
瑞穂、千恵を頼む。
[従妹の見送りを受け、オレはベンチを立ち上がり。
ゴミを片付けてから自宅へと向かった]
─ →繁華街・自宅─
[家に戻るとさっさと汗を流し。
普段着を着て、いつも出かける時に着るカーキのショートコートを羽織る。
頭には薄茶のハンチング帽、首には蓬色の薄手のマフラー。
それから必要最低限のものをポケットに入れ、オレは再び外に出た]
[路地から表通りへと出て、不意に空を見上げた。
高い建物も多い繁華街、空はどこか狭く感じる。
その空を、建物の上を、一羽の烏が飛んで行った]
…………。
[オレは翠の瞳を細め、その軌道を追う。
街では害鳥と言う印象が強いそれも、オレにとっては憧れを抱くものだった]
─ →中央広場─
[従妹が待ってるからと、駆け足で広場へと戻って来る。
さっきまで居たベンチに戻ると、そこには幼馴染しか居なかった]
あれ、千恵は?
[訊ねれば一方を示されただろうか。
視線を向けると、一組の男女と話をしているらしい従妹が見える]
……………。
[その一方、男性を見て、オレは思いきり眉を顰めた。
先日ぶつかって、捲し立てた相手。
勿論、良い印象は残っていない]
千恵!
[節穴野郎から従妹を引き離そうとするかのように、オレは従妹の名を呼んでいた。
駆けて来る従妹には出来るだけの笑みを向ける]
それじゃあ、どこ行きたい?
[傍に来た従妹の頭を撫でながら、遊びに行く場所の要望を聞く。
返答を聞いたなら、言われるままに移動をする*だろう*]
―回想:中央広場―
[千恵の遠慮のない質問に喉を詰まらせる伽矢。複雑な気分でそちらの方を見る。
伽矢はこちらのことは気にしない様にしているので自分もそれ以上は変に意識しないようにした]
伽矢くん大丈夫?
[飲み物を渡そうとしたときには自分でコーラで流し込んでいて、
千恵が手についたケチャップを舐めるのを苦笑しながらナプキンでふき取って顔をも拭いてあげる]
千恵ちゃん、ほらちゃんと拭かないと。
[一度家に戻るという伽矢に頷いて千恵はここに残ると言えば]
わたしは千恵ちゃんとここで待ってるね。
[一人でここに置いていくのは不安だったし、自分はまだ食べ終わっていなかったのもあった。
そもそも千恵の行動力に自分はついていくことはできない。]
―回想―
[千恵が一人でどこかに行くのはとめなかった。
自分の目の届く範囲で動き回るのは問題ないだろうと思ったから。
そもそも子供にじっとしていろというのが酷な話だから]
千恵ちゃん、あんまり遠くに行ったら駄目だよ。
[千恵にそう声をかけてから自分はバーガーをはむり。
千恵は桜の方に寄っていったらしくそこに見えるのは先ほどの女性。
千恵を止めようとしたときにはすでに怒られてあわてて走り出したところで礼斗にぶつかっていた]
―回想―
あっ、千恵ちゃん。
[そちらの方に駆け寄ろうとするが神楽達と何か話している様子。
つぼみという言葉が聞こえると、その言葉がとても気になった。
なんでだろう?疑問に思っていると伽矢に声をかけられた]
千恵ちゃんは、あそこで静音さんたちとお話してるよ。
[少し複雑な面持ちで千恵のいる方を示しながら伽矢に答える。
見ておくといいながら結局面倒を見切れていなかった。]
[神社に戻る神楽にまたな、と手を振って。
もう一度、桜を見てから自宅へ向けて歩き出す。
何事か思案に耽っているのか、周りは見えていないようだった]
―自宅―
[独り暮らしのマンションに戻ると、買ってきたばかりのコーヒーを淹れてパソコンを立ち上げる。
検索するのは、過去の取材内容のデータフォルダ]
……『おうか』……『おうか』、なぁ。
あー……あんまり考えたくねぇけど。
やっぱり、『コレ』なのかねぇ。
[零れるのはため息。
ぐしゃり、と髪をかき上げながら額を押さえる]
……ったく。もし、そうだってんなら。
非力な一般人には、きっついっての……。
[過去に巻き込まれたとある『事件』。
それを思い返しつつ、また一つ*息を吐いた*]
[ベンチに座ったまま伽矢と千恵の様子を眺めている。
最後のポテトを食べて、千恵が伽矢に行きたいところを告げていた]
伽矢くんにとっては千恵ちゃんが一番なのかな?
[思わずそんなことを呟いているとこちらに伽矢達が来ていて自分はどうするのか聞かれた]
私はどうしようかな?
[きっと千恵に一緒に行こうと言われればついて*いくだろう。*]
―中央公園―
[神楽に頭を撫でられると、頬が嬉しそうにあがる。
そのせいか、礼斗の呟きは聞こえなかった。
伽矢に呼ばれて駆けてゆき、ぽふんと足に飛びつく。
勿論というか、礼斗に対し不機嫌だった事には気づいていない。
好きなところにいっていいと言われて、ちょっと傾げて考えて。]
ええと、ええと。じゃぁこっちー。
[瑞穂もいっしょとは言わずとも、当然のように二人の手を引き前を歩く。]
―繁華街―
[駆け出し行くのは繁華街。
二人の手を離れ、大人が通るには少しきつい、細い路地の間をくぐる。
ゴミ箱、新聞、なんのその。
背中のうさぎは、きゅうくつそうに壁に手足をぶつけるが、おかまいなし。
その先、高い建物に囲まれた隙間のような場所。やっと少し楽に動ける所に出ると、とてとて隅っこに走ってゆく。]
かやにいちゃ、みずねえちゃ、ねこ。
[隅っこには、古びたダンボールの中に、生まれて間もない子猫がみぃみぃ。(09)匹ほど。
統一しない背中の色は、立派な野良の証。親猫は、幸い出かけて留守のよう。
子猫をちょんちょん、撫で回し、暫く猫と戯れる。]
このこ、もってかえったら、ままに怒られたの。
[黒い子猫を指差し、ちょっとしょんぼりしながら言って。
うさぎリュックの背中から、小さな牛乳パックを取り出し、置いてあった皿にだばっと入れておいた。
ちょっとこぼれた。]
[その後。繁華街で探検中によく遭遇するのか、人の良さそうな老夫婦と出くわしジュースをもらったり。
少し怪しげなおじさんに、いつもどおり挨拶して飴玉をもらったりする。
だいぶ、危機管理能力は薄い。
それから人ん家の合間を通り抜け、他所の家にたわわに実った柿を見に行ったり。
同級生のお母さんと会うとクッキーもらったり。
高い所に行こうと丘をダッシュしたり。
とにかく、あちこち、動きまわった。]
かやにいちゃ、みずねえちゃ、こっちー。
[最後になるのか、丘の上の神社の入り口で手を振り。
おそらく少し遅れ気味の瑞穂を*待っていた。*]
―→神社―
─回想─
生命線ねぇ……吸わん俺にはまったく自覚は湧かんがそういうものなのかね。
[礼斗(>>0:192)の言葉にふむと軽く唸る。そうこうしているうちにお店に到着。]
俺も担当に教えられてここに来たんだが、中々のもんだぞ。
[そう言って入店。自分もカルボナーラを頼んで食べていたのだが、]
……『桜と童女の怪異』? ああ、あれか。
[そして、礼斗の饒舌な説明(>>0:193)を口を挟むことなく聞いていたが、]
……俺も昔そのことについて調べたことがあるが。
その時も、パターンは同じだったな。
おそらく、その少女も同一人物……いや同一存在といった方が適切か。
案外、その少女が「神隠し」として、行方不明者をここではないどこかの世界へ誘っているのかもな。
[饒舌に喋ることについては、こちらも同様であるだろうからあまり気にはしなかった。]
─回想・中央公園─
[公園の中央。そこにある桜の大樹。
その下に蹲る女性。
遠目から目を細めて彼女を見ていたが、]
まさか彼女が…………いや、それはないな。
怪異の話に来るのは決まって「少女」。あれは少女というのには、な。
……行くか。
[ポツリそう呟く。そうして、その場をあとにした。
その後集まった面々とは、顔を合わせることはなかっただろう。]
―繁華街コンビニ―
「ちょっと。お釣り間違ってるわよ」
[客から言われて目を瞬いた。
相手の掌には穴あき硬貨が4枚乗っていた]
…失礼しました。
[レジを開いて一回り大きい白銀硬貨を4枚取り直す。
頭を下げて交換させてもらった]
「誠意のない子。次は気をつけなさい!」
[感情の出ない謝り方が癇に障ったらしい。
睨みつけながら高い声で言い、女性は袋を提げて店を出て行った]
「今日はミスが多いな、珍しい」
店長。すみません。
[伝票整理をしていた人物に声を掛けられ、また頭を下げた。
お釣り間違い{1}回に反応遅れが(05)回、商品取り落とし{4}回までやると普段あまりしない分もあってかなり目立った]
「疲れてるんじゃないのか」
[気遣うような言葉には小さく横に首を振る]
「調子悪いなら夜シフト変わるよ?
そのかわり次の土曜日に朝から入ってくれれば。むしろお願い」
[茶髪のアルバイト仲間が笑いながら言う。
コンサートの準備に時間を掛けたいとか何とか話は続く]
分かった。じゃあ交代して。
[特に体調不良なわけでもなかったが受けることにした]
「それで、話変わるけど。白井先生の新刊が…」
[彼女は同じ作家の童話ファンという共通項もあったから。仲の悪くないバイト仲間の都合は聞いてあげてもいいだろう]
─中央広場─
[いつものように飛びついて来た従妹を受け止め。
行く場所を訊ねた返答は、行動で返って来た]
どこに行くんだ?
[聞いても手を引かれるのみ。
同じく手を引かれる幼馴染と顔を見合わせ、首を傾げた]
─繁華街─
[連れて行かれたのは見知った繁華街。
入り込む細い路地。
あれやこれやと物が置いてあったが、辛うじて通ることは出来そうだった。
だからと言って身体が小さいことに感謝はしなかったが]
……猫?
うわ、すごいいっぱい。
[辿り着いた場所には段ボールに入った子猫が居た。
生まれたばかりの子猫達に、オレは驚いて翠の瞳を見開く。
オレは従妹に倣うようにして、小さな生命に手を伸ばし、優しく撫でた]
…一回、持って帰ったのか?
動物を飼うには世話が大変だからな…。
[しょんぼりする従妹の頭を慰めるように撫でる。
従妹が牛乳を与えるのを眺めてから、揃ってその場を後にした]
[その後は繁華街を移動続き。
従妹が危機感無く色々貰っているのを見て、オレは少しだけ溜息をついた。
何が起こるか分からないこのご時世、もう少し危機感を持って欲しいところ]
すみません、ありがとうございます。
[従妹も礼はいつも言っているのだろうが、改めてその人達に礼を述べておいた。
あちこち従妹の先導で移動し続け、最終的には神社へと辿り着く。
石段を登り、神社の入り口まで来ると後ろを振り返った。
持久力はそこまで高い方ではないが、石段を登り切るくらいは何でもない。
オレは神社の入り口で従妹と共に、遅れ気味な幼馴染を待った]
─ →神社─
風もないのに、揺れる枝葉。
その音に紛れるよに、微かな音が響いていく。
鈴の音色と、もう一つ。
歌声のよな、笑い声のよな。
ささやかなそれは、今ははっきり聞き取れはせず。**
―繁華街コンビニ―
っと。
[保温庫に追加する缶コーヒーを取り落としかける。
幸いにも今回は未遂で済んだが]
本当に何やってるんだろう。
落ち着かない。
[中華まんのボックスの陰で目立たぬように深呼吸した]
─自宅─
……ま。
考えすぎ、と言えば、それまでなんだろーけどな。
[テキストエディタの上に連なるレポート。
それを眺めて、ため息を一つ。
滅多に見せない物憂げな様子でしばし、目を伏せた後。
パソコン横の写真立てをちらりと見やり、すぐに視線を逸らして電源を落とした]
……悩んでても仕方ない。
とりあえず、件の蕾とやら、見に行くのもいいだろ。
[そんな事を呟きながら、愛用のジャケットを羽織り、ふらりと外へ]
―中央広場→繁華街―
[駆け出す千恵に手を引かれて伽矢と顔を見合わせて、自分もわからないというように首を傾げた]
千恵ちゃん?
[その意図はまだ読めず狭い路地を行く二人を追いかけるようについていく]
待って、ちょっと、あっ、もう。
[ゴミ箱に足を引っ掛けて倒しかけ、新聞に足をとられ躓きそうになり自然と差は開いていく。
二人に遅れてついた場所、ダンボールの中には子猫がいっぱいで]
はぁはぁ、二人ともちょっと待って…。
[壁に手を着いて呼吸を整える。
体力がないわけではないが、道中が道中なので余分に消費するらしい。]
───神社───
[書庫の中には、山のように積み上げられた本がいたるところに出来ており、目当てのものを探すには一苦労だ]
はあ……いつ来ても整理する気が起きなくなるね。
[ぼやきながらも、埃の被った本の表紙を確認しながら、色々な本を読み続ける]
桜。桜ねえ。
そういう話は、本当ごまんとあるから、探すのも難しいな。
もうちょっと絞れる単語は何かあったっけな。
子猫、かわいいね。
[息が整ったところで自分も子猫の頭を撫でてから千恵ちゃんの頭を撫でながら伽矢の言葉に同意するように頷いて]
捨て猫なのかな?今度一緒に里親探してみる?
[その後の道中も自分は二人になんとかついていくような感じだった。
もはや知らないおじさんに飴をもらう千恵を注意する元気もない]
伽矢くん、はぁはぁ、先行って、追いつく、から。
[神社の石段を駆け上る千恵、伽矢には先に行ってもらった。
自分が登りきる時には二人で待っていて]
ごめんね、千恵ちゃん、伽矢くん、はぁ…はぁ…。
[鳥居に手をついて呼吸を整えながら二人に謝った]
―回想―
……ええ、まあ。
そんな感じ、ですね。
[微妙な間違いをわざわざ訂正するのも気が引けて、曖昧に濁した。
何となく気恥ずかしい気持ちもある。
それから2、3言葉も交わしただろうか]
すみません、そろそろ失礼しますね。
そのうちまた店のほうにも伺います。
[頭を下げて、樹を一度振り返ってから広場を後にした]
―神社―
[瑞穂が登りきったのを見ると、賽銭箱がある方にはいかず、その脇の方へと駆けてゆく。]
これ引くのー。
[古びたおみくじ販売機に、昼食のおつりの10円を入れるところんと転がり出る紙一枚。
あけると*凶*と大きく、手書きのような文字一言。]
─神社─
大丈夫か?
[どうにか登り切った幼馴染に声をかける。
もう少し従妹を抑えておけば良かったな、と後悔した。
幼馴染の息が整うのを待ってから、従妹が向かったおみくじ販売機へと近付く]
……まぁ、今悪いならこれから良くなるさ。
[しょんぼりする従妹の頭を撫で、慰めるように言った]
綾野さん。
フルネームなんていってたっけ。
[多少なりと会話をしていた記憶を引っ張り出す。
会話というよりも、一方的に神楽が話していたのがほとんどだが、それでも名前の交し合いぐらいはやったはずだ]
えーと、たこでなし、くらげでなし……いか……そう、いかだ。いか。
いか、るが。
いかるが。
斑鳩、綾野。
そう。『桜の覡』とかいう一族だったって記憶している。
それ、読んだのどの本だったかな。
[そこまで思い出すと、更にまたごそごそと本の山と格闘を始めた]
―神社―
[先ほどより長い時間をかけて呼吸を整えてから、
千恵の向かった方へ、途中の賽銭箱が視界にはいる。
迷った末に500円玉を中に入れておいた。
きっと神楽がいれば気持ちだけじゃお金は膨れないとかそんなこと言うから]
あ、千恵ちゃん。
[凶を引いてしょんぼりする様子に頭をやさしく撫でた]
占いとかって気休めって言うしね。
[神楽が聞いていたらなんと言われるだろうか]
─神社─
……………。
[従妹と同じく出た、手書きの凶の文字を無言で見た。
この神社に御利益はなさそうだ、と思ったのは仕方がないことなのかも知れない。
従妹のおみくじ共々、帯状にして傍の樹の枝に結んだ]
─中央公園─
[のんびり歩いて、たどり着くのは公園。
桜の前には、相変わらず紅の装いの女の姿。
警告を繰り返すことが返って人を集める結果になっているのか、周囲には野次馬らしき者の姿も多かった]
……ヒマなのが多いよなぁ。
[そんな呟きをもらしつつ、桜へと近づく。
向けられる、鋭い視線。
鬼気迫るものすら感じさせるそれに、かり、と軽く頬を掻いて]
ああ、はいはい。
必要以上に近づく気はないから。
[軽い口調で言いながら、視線は上へ]
[そこから、しばし時間が経ち、目当ての本を一冊見つけた]
お!
これだ、これ。
えーと、何々……ん?
[さて、腰をすえてじっくり読もうかと思った矢先、神社の方で声がした]
おおお!?
お客さん!?
やば!こんなことしてる場合じゃない!早速、対応にでかけなければ!
[本を適当に投げ捨てて、神楽は慌てて立ち上がると、神社の表に走っていった]
[表に出ると、見かけたのは先程の3人組。
何やら、2人ほど落胆しているような様子が見えるが、まあ気のせいだろう]
やあやあ。
いらっしゃい。
うちのおみくじは特別仕様だよ。
なんと、普段ならあまり入れてない凶もしっかりと入っているので、悪いことに目を瞑らずにしっかりと対応できるという大人のための仕様!
その他にも、良縁、学業上昇などのお守りもあるから、どうぞ買ってって。
[自分を心配する千恵に笑顔を向けて頭を再度撫でる]
うん、もう大丈夫だよ。
ごめんね、私とろくて。
[伽矢にもそう謝るように向けたのは少し複雑な表情。
心配をかけた申し訳なさと少しばかりの二人への羨望。
伽矢の引いたおみくじの結果も見ると自分のは二人に見せずに一緒に傍の樹の枝に結びつけた]
─神社─
[結んだそれを見遣りながら、オレは翠の瞳を一度瞬く。
直後に聞こえる、オレら以外の声。
視線を投げると、巫女が傍まで来ていた]
…特別仕様、ね。
9割近く凶なんじゃねぇの。
[紡ぐ言葉は辛辣。
三人引いて二人が凶なら、そこまで酷くはないのだが。
厭味も込めて言う]
[ふたりに撫でられると、しょんぼりから一転機嫌よくなって。
開いた紙は、境内の隅の木にくくりつけようとしたが上手くいかず、いとこに代わりにつけてもらう。]
あそんだー。
[どうやら満足したらしい。
もうひとつ、10円を入れておみくじを引いた。こっちは開けずに。]
かやにいちゃ、ももおばちゃにもこれあげにいく。
[と嬉しそうに伽矢を見上げた。]
あっ、静音さん。
[表に出てきたここの神社の巫女さん、神楽に挨拶をする。
おみくじのことは突っ込まないでおいた。
もう慣れたのかもしれない]
良縁…、
[その言葉にはちょっとだけ心惹かれるものがあった]
─中央公園─
…………。
[見上げた先。
確かに、そこには淡い薄紅が見て取れた。
微かに眉を寄せた所に、再度の警告。
それに、はいはい、と気のない声で頷いて、足早にその場を離れた。
それでも、公園からは出ることはなく。
桜から離れ、人も少ない場所で黒の小箱を出して一本抜き取り、銀のライターで火を点けた]
とろい?
[瑞穂の言う意味はわからない。が。
何となく、言葉に良い印象は受けなかったので。]
みずねえちゃはとろいじゃないよ。
ええと、ええと…のろい?とろとろ?
[良い言葉を探そうとして、逆に悪くなる。]
ととろ…。
[それは、おばけの名前だ。]
9割とまではいかないけど、半分ぐらいは凶だよ。
大吉・中吉・小吉・吉・半吉・末吉・末小吉・凶・小凶・半凶・末凶・大凶。
って感じに結構細かく分かれているからさ。
でも、凶が出ても悪いことじゃないんだけどね。
「凶のおみくじを利き腕と反対の手で結べば、困難な行いを達成つまり修行をしたことになり、凶が吉に転じる」って言葉もあるし、逆に悪いことを吸収してくれたって考え方もあるのよ。
だから、実は一番悪いのは末吉とか、そこらへんだったり。
ほら。
タロットカードとかでも「死」が一番悪いカードでも無かったりするでしょ?あれと同じようなものよ。
─神社─
んや、俺が千恵を抑えとけば良かったことだし。
悪い。
[謝罪を述べる幼馴染に、オレも謝罪を入れておいた。
こちらを見上げて来る従妹に気付くと]
…そっか。
お袋もきっと喜ぶよ。
[従妹には優しい笑みを向ける。
事実、母親が邪険に扱うことは無いだろう]
お。
みずちー良縁のお守りに興味津々?
[思わず口元がニヤついた]
けっこー、お守りだけはうちの商売道具の中でも人気あるほうなんだよ。結構な頻度で良くなるって。
なにしろ、効かないですたれたら困るから、私が一つ一つ丹精に念を込め上げて作っているからね。
それなりに期待はしてもいいよ。うん。
[樹がつけばもう日も傾き地平線に沈もうかというところ、
高台にある神社から降りればもう日は見えなくなっているだろう]
もうそんな時間なんだね。
[千恵が伽矢におみくじを差し出す様子に]
まだ中央広場にいるかな?
私も一緒に行くから伽矢くんも一緒にいこ?
[一緒にいかないときっと千恵が悲しそうにしそうだったから。
伽矢には視線だけで謝るように]
─神社─
ふぅん……。
そんなに細分化する意味が解らないけど。
タロットとか、って言われても知らないし。
[巫女の説明に、どうでも良い、と言うのを態度で示す。
事実占いには特に興味は無かった]
―繁華街―
店休日だったか。
うっかりしてたな。
[いつも利用している喫茶店の前で、頭を掻いて立ち尽くした。
暫く後に背を向けて、来た道を戻り始める]
……あいつは今頃仕事かな。
[手持ち無沙汰に携帯を開き、閉じる動作を幾度か繰り返す]
あ。かぐ…ねえちゃ。
[うっかりは頑張ってこらえる。]
おまもり?ちえもってるよ。これー。
[うさぎリュックから取り出したお守り。
意味は分からず買っただろうそれには、『安産』の2文字が。]
[千恵が慰めようとする気持ちは伝わったのでその頭をやさしなでながら]
うん、千恵ちゃんはやさしいね。
[神楽の食いつきには頬を赤くしてうつむき加減になりながら]
そ、そんなんじゃないです。
もう静音さんからかわないでください。
[それでも後に続く説明はしっかりと聞いていたりとか。]
─神社─
[一緒に行こう、と言う幼馴染。
軽く眉根を寄せかけたが、翠の瞳を瞼で隠し]
……ああ。
[謝るような視線にオレは、気にするな、と言う態度を返した。
行かないと言えば従妹が悲しむのは目に見えている]
[伽矢に喜ぶといわれると、嬉しそうに笑った。
きゅ、と伽矢の手を握って。]
じゃ、ももおばちゃんとこいく。まだいるかな?
[さっき会った時は公園にいた。
そろそろ暗くもなってきたが、そこに行きたいと二人にせがむ。
きっと帰っても両親はいない。
まだ外で遊びたいなと、口にはしないが心は働く。]
─神社─
どうかな……もう少ししたら仕事の時間になるだろうし。
行くなら、少し急ごうか。
[母親がまだ広場に居るだろうか、と言う話にはやや首を傾げる。
握られた手を握り返し、行くか、と幼馴染にも視線を向けた]
意味は分からなくて、そういうもんだと思っておけばいいのよ。
まあ、多い分だけ、出にくい大吉とかが出たら嬉しいとかそんな感じかしら?
[伽矢にそう答えると、千恵のほうを向き]
や。ちーちゃん。こんにちわ。
おお。お守り持ってるの?
[そのお守りに書かれた文字を見たが、特に表情を崩すことも無く]
うん。良いことだ。
それはね。自分の体。それから、自分の大事な人を守ってくれるためのお守りなんだ。
だから、しっかりと肌身離さず持っておくと、良いことがあると思うよ。
[まあ、確かに安産といっても、産む為だけではないので、この説明でも間違ってはいないし、確かにその通りの効力はあるはずだ]
うん、それじゃあ静音さん私たちは中央広場行ってきますね。
[神楽にそう告げてから傍によって神楽にだけ聞こえるように]
お守りはその、今度にでも。
[視線は自然と伽矢に向いたりとかしながら、
伽矢に知られるのは恥ずかしかったから]
それじゃあ急いで、行こうか。
[伽矢の提案に頷きながら、再びちゃんとついていけるか少し不安だった。]
むふ。
みずちーも青春だねえ。
いやー若い若い。
ま。今度またうちにお茶でも飲みにきなよ。
そんときに、何かあるなら、色々とまた相談に乗ってあげるからさ。
[にひーと笑いながら、何故か親指を一本ぐっと立てた]
―繁華街コンビニ前―
[シフトを上がる前にとゴミ箱を片付けていた。
持ち上げようとした袋はどこか引っかかっていて、思いっきり引っ張ったら今度は逆にすっぽ抜けてきた]
わっ。
[バランスを崩して歩道に転んだ。袋の口を握ったままだったのは、ゴミが散らなかった意味では幸い。手をつけなかった意味では不幸]
「大丈夫ー!?」
[レジからも見えたらしく、呆れ混じりの声が届いた]
行き過ぎる人のざわめき。
風が葉を揺らす音。
繁華街からの賑わい。
幾つもの音の交差の中。
響く、響く。
小さな、鈴の音。
はいはい。
そんじゃ、3人とも怪我しないように遊びなさいな。
ああ。そこの男の子は多少怪我してもいいよ。
男なんだし、そんぐらいやんちゃするぐらいで、丁度いい。
ま、他の人に迷惑はかけない程度にね。
それでは、まったね……?
[3人に手を振って見送ろうとして、聞こえてくる鈴の音に耳を傾けた]
(……。
以前桜を見たときに聞こえてきたオト?)
そうなんだ…。
うん、ちえ大事にするね。
[神楽の説明に神妙に、こっくり頷くとおみくじと同じ手で、きゅ、と握る。]
かぐねえちゃ、ちえこれから公園行くから、またあそびにくるね。
[ばいばいと、握っていた手をおもいっきり振り。
伽矢と瑞穂と一緒になって、神社を出ていった。]
─神社─
[お守りの話で向けられている視線は気付かなかった。
その代わり、幼馴染に向けて「行くぞ」と声をかけた]
千恵、転ばないようにゆっくりな。
[急ぐとは言ったが、降りの石段で躓いたら大変なことになる。
幼馴染のことも考え、従妹には急ぎすぎないよう注意を投げた。
そうして石段を降り、中央広場の方へ]
[神楽から帰ってきた返答に少し動揺してみせながら]
もう、静音さん。
[言い返すことはできなかった。
なんだかんだとお世話になっていることに変わりはないのだから]
お願いします。
[神楽にそういい残して「今行く」と伽矢に返しながら、二人の後ろについていくように中央広場に向かった。
今度は伽矢が気を使ってくれたおかげで息切れするようなことはなかった。
途中何か鈴の音のようなものが聞こえた気がして]
んっ?
[千恵のリュックかなとそちらに視線を向けるがそれらしいものは見当たらず、
不思議におもううちに中央広場についた]
─中央公園─
……なんだ?
[不意に、聴こえた音。
一つ、瞬いて周囲を見回す。
周囲を巡った視線はやがて桜と、その傍の女へと。
突然の音色は、彼女の耳にも届いていたのか。
その表情は、更に険しさを増していた]
[3人の姿が見えなくなってから、神楽が思いを巡らせる]
そっか。
もう一つ、鈴の音があったか。
するとキーワードは、
桜。
斑鳩一族。
桜の覡。
鈴の音。
か。
[急いで書庫に引き返して、先程放り投げた本を斜め読みで読み進める]
ゆら、ゆらり。
大気が、揺らぐ。
街の中央、要なす場の桜の周囲で。
揺らめく大気はやがて、気流となり。
赤と緑に彩られた葉を、一際大きく揺らす。
……轟、と、鳴る、風。
それは、木の葉を揺らし、巻き上げ、その全てを天へと運び去る。
―繁華街コンビニ前―
[携帯を閉じてポケットに仕舞う。
ほぼ同時、小さな声が聞こえて足を止める]
……お。
何やってんの、瑶。
[振り返ると転倒したらしき姪の姿。
助け起こすより先に、揶揄い混じりな言葉を掛けた]
[響く音(ね)は耳を掠めるように。
一度翠の瞳を足元から前方へと向ける。
数度の瞬きの後、気のせいと捉えまた足元へと視線を落とした]
─ →中央広場─
[広場についてすぐ、母親の姿を探してみたが、そこには居たのだろうか。
それよりも目に入ったのは、険しい表情をする紅を纏う女性だった]
……何か、あったのかな。
─中央公園─
[中央公園は、昼より人が増えている。
不思議そうにしながら中へ入るものの、人が多くて百華の姿は見つけられない。]
ももおばちゃ、どこだろ…。
ももおばちゃー。
[伽矢の手を握ったまま、こてんと首をまげ。
声は人垣に散らされ、すぐに消えてしまう。]
─家までの道程─
[そうして公園から立ち去り、家路についていたのだが、]
……(ジロッ)
[視線を感じて、そちらにギロリと目を向ける。
その視線の先、好奇の目で見ていた男性は慌てて視線を外すと、そそくさとその場を去る。]
……くそっ、鬱陶しい。
折角、久しぶりに楽しい時が過ごせたと思ったらコレだ。
[チッと舌打ちし、足早にその場を去ろうとする。]
音に続き、小さな声が響く。
「いのちのまつり。
おもいのめぐり。
きみゃくはめぐる、ちからのままに。
きざめ、きざめ、いのちのしるし。
ゆくかいなかはだれもしらぬよ。
さくら、さくら。
はなはひらきてみまもるのみ。
さくら、さくら」
響く、歌。
大気が一際大きく震え、そして──
これ、かな?
[該当の箇所を読み続ける。
書いてあるのは非常に抽象的で、何のことだかよく分からなかったけど、それでも理解できた項目]
憑魔。
人の心の闇に巣くうもの。
司。
憑魔を滅するもの。
───ああ。そっか。なるほど。
この力ってそういうことだったのか。
って!
やば!?結界!?
急がなきゃ間に合わないじゃん!!
[叫び、読んでいた本も取り落として、急ぎ神社を出て、桜がある中央公園へと走る]
再び、強く、吹きぬける、風。
それが過ぎた後には──はらり、舞い散る薄紅。
今の季節にはありえぬはずの、満開の桜の大樹。
リン……と。
また、鈴の音が響いて。
満開となった桜の枝の上には。
同じ色の小袖をまとった、黒髪の童女の姿があった。
あ、千恵!
[従妹はオレの手を放し、人垣の隙間を縫って行く。
見失うと拙い、と考え、慌てて駆け出す]
ちょ、っと、すいません…!
[オレ自身も人垣を掻き分けるようにして桜へと駆けて行く従妹を追った]
―中央広場―
[伽矢の母親、百華の姿を探していると千恵が伽矢の手から離れて桜の方へかけていくのが見えた]
千恵ちゃん、一人じゃだめっ。
[あわててそちらに駆け寄っていく。
桜の前にはまだ前にも見た女性の姿が見えた]
―繁華街コンビニ前―
大丈夫。ごめん。
…史兄さん。
[店内へと返した所に降ってきたのは、母よりも自分に年の近い叔父の声。
嫌な所を見られてしまったと、身内やかなりの親しい相手でなければ分からない程度に顔が引きつった]
袋が引っかかったの。
[事実だけを答えて立ち上がった。
スカートについた汚れを片手で払う]
「そろそろ時間だから上がっていいよ」
……片付けてくる。
これで終わりみたいだから。
[店長の声が飛んできた。
史人を見上げながら言うと、新しい袋だけセットして店内へ]
─中央公園─
んなっ……。
[目の前で起きた出来事。
天へと消えた葉と、唐突に開いた桜]
……マジ、かよ……。
[口をつくのは、呻くような声。
煙草が下に落ちたのも気づけないまま。
呆然と、舞い散る薄紅を見つめる]
ももおばちゃー…。
[桜の周り、野次馬の中。
人の多いところになら、百華がいるかなと思い、名前を呼びながら。
最初は探す、それが目的。
ぽす、と。一番前の人から前へ出る。
怖いおばちゃんの、そのうしろ。
満開の桜の大樹がそこに。]
[吹き抜ける風に思わずハンチング帽を押さえた。
通過し終えたのを感じると、帽子のつばの影から覗き見る]
────!
[目の前に広がったのは、この時期咲くはずのない桜。
満開の桜がそこにあった]
──はじ、まる……?
[枝の上に居る童女の言葉。
反芻するようにオレは呟いた]
[鈴の音が耳に響く、千恵に追いつくとぎゅっと抱きしめた]
千恵ちゃん、あまり私たちのこと心配させないで。
[歌声が聞こえる、何かその場にいてはいけない気がしてきた。
強く吹きぬけた風に顔しかめながら千恵をかばうようにして]
えっ、桜…?
[舞い散る花びらに視線を上げるとシンボルツリーの桜の樹は満開になっていた。その桜の上には童女の姿]
何が…?
[呟く疑問の声は桜の樹のことか童女の言葉にか]
[駆け足で走り、その領域内に入った瞬間]
え───?
[ぞわりとするような感覚。
自分の中で何かが暴れだしそうな気がする]
うわ。まさか。
[思わず、足を止めて、天を仰いだ]
私がここに来たってことも、場の構築の一部だったんだ。
かー。してやられたー。
それとも、ここまでを含めての運命とやらだったのかなぁ。
集まるものたちを見回して、桜の童女はくすり、と笑う。
小袖の帯に結わえられた鈴が、リン、と音を立てた。
「ちからある子ら、集いきて。
気脈は求める、力の輪転。
なれば桜花は見届ける。
桜花の役目は、輪転を正す事」
歌うように紡がれる、言葉。
その意を理解しているのか。
紅の女性は、鋭い視線を童女へ向ける。
[呆然としていたのは、どれほどの時間だったか。
落ちた煙草を拾い上げ、吸殻入れへ放り込み、桜へと近づく]
……なんて言うか。
……二度は、見たくなかったんだが、この光景。
[掠れた言葉は、誰かに届くか。
瞳は鋭く、桜の童女を見つめる]
非力な一般人の体験、越えてるよ……ったく。
―繁華街コンビニ前―
[天に向けていた顔を戻した]
……いや別に謝んなくても。
[決して短くない付き合いのお蔭で、瑶子の顔が引きつったのが分かって、表情は苦笑に変わる。
手を貸すまでもなく立ち上がるのを見守って]
分かった。
[短い説明には頷きを返す。
特に約束したわけでもないが、そのまま店に入った姪が出て来るのを待っていた]
─自室─
[そうして、家に帰って今の原稿の続きをやっていたのだが、]
……………駄目だ、集中できない。
[筆はまったく進まず、はぁとひとつ息を吐くと、]
そろそろ日が暮れるな。
……少し早いが、気分転換に出るか。
[そう呟くと、いつもの格好で外に出る。]
ふわ。
[瑞穂に抱きとめられて、きょとん。見上げる。
心配と言われると、小さくごめんなさいをするも。]
さくら、さいてるね。
[わぁといった様子で、満開の桜を見上げ。
背負われうさぎは、じっと真逆の方をむいていた。]
[童女が笑う、歌い続ける。
歌う内容は良く解らない。
けれど何だか息苦しい気がして、右手が蓬色のマフラーを握った]
……なんだってんだ。
何が、始まるって?
[翠の瞳は満開の桜を注視する。
異様としか思えない光景。
理解が追い付かない]
―コンビニ前―
…何?
[ゴミの詰まった袋を片付けた後、胸の上を押さえた。
すぐに首を振って着替え始める]
じゃあ、お先に失礼します。
[もう慣れたから着替えに時間はかからない。
店長と仲間に挨拶すると外へ出た]
どこか行く途中じゃなかったんだ。
[残っていた史人に首を傾げる。
けれど視線は長く留まらず、公園の方に顔を向けていた]
─ →中央公園 ─
…………(むっすぅ)
[まだ日が出ているため、向けられる目も多く。
どうにも、ストレスが拭えない。
改めて考えてみると、日を避けるためとは言えこの格好も目立つのであるが、これだけは如何とも出来ない。
ともあれ、全然気分転換にならないのはどうしたものか。]
…………はぁ。鬱陶しい。
「いのちのめぐり」
何が始まる、という疑問の声。
それに、童女は歌うよに言葉を返す。
「ちからある子ら。
集い来たれり。
力の流れをただすため。
気脈の行く末定めるため」
[童女の語る言葉、何か心の中でざわつく思いが沸き起こった]
う、うん…。
[千恵の言葉に返すのは生返事、しばし呆然としてからはっとしたように幼馴染のことを思い出す]
伽矢くんはどこかな?
[周囲に視線を巡らす、自分達が抜けてでてきた野次馬達の方に視線を向けるとそこに見知った幼馴染の姿を見つけることができた]
千恵ちゃん、ほら伽矢くんのところにいこ。
─中央公園─
[ふるり、と頭を振る]
……やっぱ、訳わからん。
[以前、これと同じ光景を見た時も、結局最後まで何が何だかわからないままだった、と思い返し。
それからふと、ある事に思い至る]
ちょっと、待てよ。
……同じ、て、事は。
[過ぎるのは、嫌な予感]
―中央広場―
……。
[待つ間、視線は広場のある方角を見ていた。
瑶子の声がし一つ瞬いて、首を横に向ける]
……あ、あー。
本当は喫茶店に行く筈だったんだけど、店休日なの忘れててさ。
しょうがねーから、広場にでも戻るかなって……
[話しながら再び広場の方角を見る。
額を軽く押さえた]
[疑問に言葉が返って来たことに、僅か驚く表情になる]
力の流れを、ただす…?
…んだよ、それ。
意味わっかんねぇ……。
[オレは眉根を寄せて、右手に込める力を増やした。
蓬色のマフラーに皺が増える]
はあい。
[桜にも『おうか』にも、興味はたっぷりあるが。
それより大事ないとこの名前を瑞穂に言われると、意識はそっちに向かう。]
かやにいちゃ。
[瑞穂の手を取ったまま、てててと伽矢に近づいて、足元にとびつく。
どこかいらいらしている様子に、きょとんとしながら下から見上げ。]
かやにいちゃ、どうしたの?
……ふむ。
[振り返り、何歩か歩いてみたが、その歩みはすぐに止まり、腕を伸ばす。
その手に感じるのは、壁。
無色透明。向こう側の風景は見えるが、動くもの姿は見えない]
まー、そうだろうなあ。
少なくとも、私は抜け出れないよね。
この壁が、行きは入れて帰りは出れない構造なのか、網目がまだでかくて力を持った人間が出入りできなくなっているのか、それとも、もう誰も出入り出来なくなっているのか。それはわかんないんだけど。
最も。
やんなきゃ行けないことがあるから、出て行くわけにはいかないんだけど。
それでも、自由に出入りできないってのは気が滅入るなあ。
うっかりだね。
[今日の所業は棚に上げて史人を評した]
そう、なら一緒に行こうかな。
時間余ったし。
[額を押さえるのにはまた首を傾げて。
けれど一緒にと言いながらもう歩き出していた]
― 回想・中央公園 ―
[史さんの曖昧な笑みは、『ハズレ』と暗に告げていた。
しばらくありきたりな会話を交わし、公園を出る彼を会釈で見送った。
子供達もどこかに移動している。
あの三人でおかしな事をする心配はなくって、
私は中断された読書を再開した]
[雑誌をめくりながら、話のタネになりそうな所には印を付けていく。
鈴の音のような微かな音には気づきもしなかった]
[従妹に飛びつかれても、受け止める余裕が無かった。
足への衝撃で、ようやくそれに気付く]
あ、ああ、千恵。
…ちょっと、気分が悪い、だけ。
―コンビニ前―
なんだろーな。
瑶にそれ言われると妙に悔しいんだけど。
[冗談のように言いながら浮かべた笑みはやはり苦笑めいていた]
……あー、そう。
[一緒にという言葉を特に拒むでもなく、やや遅れて歩き出す。
先に歩き出していたのを止める素振りもない]
[そうして不機嫌マックスで歩いていると、道の向こうに見知った顔を発見。]
あれは……神楽?
[その肝心の神楽はぺたぺたとパントマイムのような動き。
その様子を歩み寄りながら、ジィッと目を細めて見ていたが、]
…………何してるんだ、神楽?
[可哀想なものを見る目をして声をかけた。]
― 少し前 ―
[空が夕暮れの赤みを帯びた頃だった。
帰宅しようと雑誌を袋に戻していると、
一陣、公園を強い風が吹き抜けていった。
バタバタと捲れる雑誌を押さえるのに、私はやっきになった]
『……さくら、さくら……』
[遠く彼方から、女児らしき歌声が響く。
何故か声を出すのがはばかられるような気がして、
随分綺麗な声、との感想は心の中に留まった]
伽矢くん、大丈夫?
[童女のいっていた言葉を反復し、いらだつ様子の幼馴染。
かける声は遠慮がちに童女の声が聞こえる]
くらうもの?揃った?
[不安をあおる言葉、それとともに何か別の何かが自分の中でざわめく]
伽矢くん、無理しないでね。
あれなら家にくる?千恵ちゃんも一緒に。
[伽矢の家にはまた帰りづらいだろうからの提案。
千恵をあまり夜遅くまで外に連れ歩くのはという思いもあった。]
桜の下のやり取りを、童女はしばし、楽しげに見つめ。
それから、ひょい、と立ち上がる。
挙動にあわせて、鳴る、鈴。
「ちからのたまゆら。
おもいのひびき。
かなでられるは。
いかなるねいろ?」
吟ずるような言葉を残し、童女はふわり、桜色の内へと*消えてゆく*。
んお?
[かけられた声に気づき、振り向くとそこには見事な白い人間がいた]
おお。せったんじゃん。
いやね。そのね。壁がね。
……んー。せったんも壁を触れるのかなあ。
やってみると、せったんも分かると思うんだけど。
まあ、何も無かったら、アホな子が一人いたんだということで終わっておくといいと思うよ。
ほれほれ。ちょっと腕伸ばしてみ。
[言いながら、今まで自分がパントマイムのようなことを繰り返していた場所を指差す]
―中央公園入口―
だって事実だよ。
[感情を出すのは苦手だが言うことは言う。
史人のネタも、笑わないのに「面白かった」「イマイチかな」と評してしまうようなところがあった。
先に歩いてしまうのもよくあること。
けれどそうして公園に近づけば、嫌でも異変が見えてくる]
桜…?
[風に乗って届く花弁。そこで足が止まった]
─中央公園─
[吟ずるような言葉を残して消える童女。
は、と零れ落ちるのは、ため息]
……なんだかねぇ……。
[吐き捨てるように呟いて。
それから、視線は童女が消えた辺りを睨む紅の女性へと向く]
……なあ、あんた。
あんたもアレ知ってるって言うか……。
あれに会うのも、こういう状況も。
初めて、ってわけじゃ、ないんだろ?
伽矢くんがそう言うなら…。
[返す言葉にもまだ心配げな様子で千恵の手を引きながらベンチに一緒に向かう]
そういえば百華さんどこだろう?
[ベンチに向かいながら当初の目的の人物の姿を探す]
[問いかけに、向けられるのは鋭さを残した──けれど、どことなく問うような視線。
それに、軽く肩を竦めて]
いや、なんていうか。
桜に近づくなって警告してたり、さっきの様子といい。
事情知ってるとしか思えんし。
……少なくとも、ここにいる中では一番事情、詳しいと思うんだけど。
俺も、仕事で色々調べたのと……あと。
『実体験』で、多少は知ってるが。
詳しい事は、ほとんどわからないんで、ね。
だいじょうぶ?
[伽矢を引っ張っていこうにも、そんな力も背もあるはずなく。
近くをちょろちょろ、瑞穂の手を握りながら心配そうに。
うさぎもちょろっと揺れている。
瑞穂に言われ、はっとして。
百華の姿を探してきょとりと。]
ももおばちゃ、帰っちゃったかなぁ…。
[途中桜が目に止まる。
童女はどこかに消えていた。]
あれ。おうか。いなくなっちゃった。
[残念そうに呟いた。]
[軽く頭を押さえていたが、せったんという呼ばれ方にじろりと目を向け、]
……せったんと呼ぶなと言ってるだろうが。
俺もお前も、もうそんな呼び合いする歳じゃねぇんだし。
…………って壁? んなもん、どこにも……
[首をかしげつつ、そう言って手を伸ばし、]
……なん、だと。ってか、何だよコレ。
[手に感じるのは確かに壁。向こうは見えるのに押してもびくともしない。]
― 少し前 ―
[響く歌に聞き入っていると、僅か、背筋に寒気が走った。
風邪でも引いたのかと、羽織っていた上着の前を閉じた。
そして、私は目を擦った。
こんな季節に桜が。桜の花が咲いている。
そして桜の枝の上には、一人の少女]
危ないじゃない、そんなとこ……!
[ベンチから立ち上がると、少女の傍――桜の傍へ*駆け寄った*]
[ベンチへ辿り着くと、背凭れに体重を預け座り込む。
その状態で一度深呼吸をした]
……始まる、か……。
[小さな呟きは二人に届いただろうか。
母親や童女の話題が聞こえると、背凭れから身体を起こした]
…お袋、仕事のために戻ったかなぁ…。
[碌に周囲を確認していなかったが、そんなことをオレは呟いた]
― →中央広場入口―
さいですか。
[軽く肩を竦めた。
面白いなら笑って頂きたいと常日頃思っているのはさて置き。
やはりその足は広場の前まで来て止まった]
……。
[軽く目は見開かれるが、驚きの言葉はなく。
満開の桜を瞳に映した]
おうか?
[千恵の言葉に疑問の声を返しながら視線を桜の樹の方へ向ける。
童女の姿はもう見えなく代わりに百華の姿が見えた]
あっ、百華さんだ。
[千恵もそれに気づくだろうか]
えー?
だって、せったんはせったんだし。
なんかこー、愛着湧くじゃん?
嫌なら、せっちょんって呼ぶよ?
[言いながら、雪夜が壁を感じられたことには少しため息]
あー。
やっぱ私だけじゃないんだ。
んー。あの、よく私が言ってるような霊能現象の一つみたいなもんじゃないかな?
こんな感じに他の人まで感じられるタイプも珍しいとは思うけど。
[潜めて告げられた単語に、女はやや、驚いたようだったが。
それにはただ、苦笑のみを返す]
……んで?
結局のとこ、どうなんだよ。
[表情を引き締め、問いを重ねたなら。
女は深く、息を吐いて、一つ、頷いた]
「……けれど、始まってしまったからには。
もう、止める事はできない。
貴方も……『見た』というなら、わかるはず。
全ては、力の玉響……『憑魔』と『司』の求める先が定めるもの」
……『憑魔』と『司』……ね。
―中央広場入口―
[はらり。
ひとひら舞い降りてきた花弁に手を伸ばす。
ダメなの、と唇だけが動く]
桜花…って、史兄さん?
[声になったのは叔父へと問いかける部分から]
はじまる?何がはじまるの?
[伽矢の呟きを拾い、そう返すものの。
瑞穂に言われ百華を見つけ、そっちの方に向かってゆく。]
あ、おばちゃ!
[駆け寄り足元に飛びついて。]
ももおばちゃ、おばちゃもさくら、見にきたの?
[すりっと頬をよせ見上げ。
返事にはそうなんだと返しながら。]
ももおばちゃ、あのね。
おみくじ引いてきたの。おばちゃにも、はい。
[握っていた左手の中にあったおみくじを見せ、それを渡した。]
……何が始まるのかは、良くわかんねぇ。
けどああやって言うってことは、何かが始まるんだと、思う。
[そうでなくばこの状態の説明がつかない。
時季外れの桜。
怪異と言える光景。
答えの全てを聞いたかは判らないが、従妹は母親を見つけてそちらへと駆けて行く。
オレは動く気もしなくて、ただその様子を見遣るだけだった]
……結局、非力な一般人にはどうにもできん、って事なんかね。
……っとに……やってらんねぇ。
[吐き捨てるように呟いて、桜から視線を逸らす。
野次馬たちは相変わらず騒ぎ立てているが。
その内、携帯が繋がらない、という声がちらほらと聞こえ始めた]
……え?
[疑問を感じて、出した携帯。
表示されているのは、『圏外』の二文字]
静音さんなら、何か知ってるかな?
[二人の言葉にはそう返して伽矢の呟きに]
いたみたい百華さん。
[見つけた百華のほうに駆け寄る千恵、
ベンチに座った伽矢の隣に気持ち間を空けて座る]
愛着……って。ああもう、いいや勝手にしろ。
っつーか。もう、かれこれ何度目だよ、この遣り取り。
ちなみに、せっちょんなんざ呼びやがったら、頭握りつぶすぞ。
[ぺたぺた不可視の壁を触りながら、そう答える。]
……霊能現象、か。ちっちぇ頃からしょっちゅうお前から聞いてたし、実際俺もそういうこと扱う物書きになったが。
…………まさか、自分が遭遇することになるとはねぇ。
……電波障害、か?
[小さく呟いて。
女はといえば、また桜を見つめて動かなくなってしまったから、声をかけることはなく。
どこかで電波が入らないか、と入り口の方へと移動してやく。
しかし、どこまで行っても表示は変わらず]
……なんだよこれ……って。
お。あれは史さんに黒江嬢。
[その内、知り合い二人が連れ立って来ているのに気がついた]
―中央広場入口―
……。
[瑶子からの呼び掛けに反応するのはやや遅れる。
瞬き、我に返ったように隣を見て]
あ、……え、なに?
[尋ね返した]
……怪異に詳しいなら、知ってるんじゃねぇの?
[幼馴染の言葉にはどこか気のない返事。
彼の巫女をあまり信用していないと言うのが伝わるだろうか]
……も、帰っかな。
………は?
んだよ、これ。
[呟きながら、ポケットに入れていた携帯を取り出した。
時間を確認しようとしただけだったのだが、『圏外』の文字を見つける]
おい、瑞穂。
お前の携帯どうなってる?
[周囲でも繋がらないと言う声がちらほらと聞こえる。
おかしいと思い、オレは幼馴染にも訊ねた]
何度目も何もせったんが気にしなければ、いっつも次は無いわよ。
いつまでも、あだ名で呼ばれるのは仲の良い証拠だと思いなさいな。
きゃ。頭捻りつぶすですって。怖ーい。
[大げさに怖がって見せてから、もう一度不可視の壁を見つめる]
こういうのは結構すぐ隣にあるんだけど、普段はたいしたこと無いから気づかない人が多いんだけどね。
そういえば、ちょっと前にうちの庭におじさんの頭が半分だけ出ていたことあったっけ。
なんか野良猫がぺしぺし猫パンチしてたら、泣きそうな顔してたけど。
まあ、そんな話はいいとして、さすがにこれはちょっと大掛かりだよね。
一応、中央にある桜がこれの原因らしいんだけど、ちょっと一緒に近くまで見に行ってみる?
[さすがにここから500m離れていると、桜の樹はよく見えない]
[にこにこ、百華と話ていたら、程近くに怖い人がいてびくっとなる。
すすす、と百華の陰に隠れたが、向こう側に知った人ひとり。]
あ、ひふみおじちゃ。
[『おじちゃん』呼びは、百華に注意されるだろうか。
当の礼斗は、気づかず向こうに行ってしまう。
きょろ、きょろ。
怖い人は桜を向いたまま。
百華はいるが、怖い人はやっぱり怖くて。
もじもじしていたら、百華にそろそろ帰るようにと促された。]
……うん。
[ちょっと寂しいな、とは思ったものの。
一旦、伽矢と瑞穂の所に戻る。]
―中央広場入口―
聞いたのはこっちなのに。
[我に返ったかのような史人に小さな溜息を吐いた。
もう一度尋ねる前に、別方向から声が掛けられそちらを向く]
礼斗さん。
……桜、咲いちゃいましたね。
[手に提げていた布鞄に視線を落とす。
昼前にも持っていた雑誌がその中に入っていた]
静音さん、ああ見えて頼りになるところもあるんだよ?
[伽矢が持つ印象はなんとなく感じ取り返す言葉は神楽がいれば怒られたかもしれないフォローの言葉]
千恵ちゃん置いていけないし、一旦おうちに送ってからかな?
[伽矢の言葉にそう返してから、周囲の言葉と伽矢の言葉に自分の携帯を見てみる]
私のも圏外みたい。いつもならここつながるはずだよね?
[伽矢に尋ねながら満開の桜の方に視線を向ける。
思い出されるのは童女の言葉]
─中央公園・入り口─
[常の状態であれば、千恵の呼びかけにも気づけたのだろうけれど。
意識が他所に囚われた状態ではそれは難しかった。
気づいたら気づいたで、『おじちゃ』呼びにかっくりした可能性は高いのだが]
……ああ、咲いたな、桜。
個人的には、何とも微妙な気分だ。
[黒江の言葉に、ため息一つ。
それから、改めて手の中の携帯を見て]
……ところで、二人とも。
携帯、使えるか?
そう言われましても。
……オレなんか言った?
[溜息を吐かれ頭を掻き、首を傾げる。
それから瑶子の上げた声に、その視線の先を辿り]
あやみん。
[昔馴染みに軽く片手を上げた。
花片が一つ、目の前を過ぎって行く]
頼りに、ねぇ……。
[オレは軽く鼻で笑った。
きっと当人が居ても同じことをしただろう。
従妹についての提案には同意したのだが、携帯についてを返されると、軽く眉根が寄る]
この街ならどこでも繋がるはずなんだけどな。
電波障害でも起きてるんかなぁ…。
まぁ良いや、とりあえず千恵を送ってこう。
[そのうち直るだろうと考え、まずは従妹を送り届けることにする。
丁度、従妹も母親に連れられてオレらの方へと戻って来ていた]
―広場入口付近―
うん。でもいいや。
[何か言ったかと史人に言われ、聞いてもそれほど芳しい答えが返ってこなさそうだと自己帰結してしまった]
ネタになりそうでも当事者になるのはやっぱり微妙ですか。
携帯?
[礼斗の過去体験も知るはずはなく、一般論のように返し。
問われて鞄の外ポケットからシンプルな黒の二つ折りを取り出した]
あれ、こんなところで圏外になってる。
かやにいちゃ、ちえ、もうかえる。
[百華に言われたせいか、大人しく家路につくと言いだす。
家は公園から南、住宅街の真ん中。ここからはすこし遠かった。
ひとりで帰れるが、まだ二人といたくて傍にいる。
促されれば、一人ででも帰るのだが。]
―中央広場入口―
携帯?
[礼斗に言われて、先程ポケットに突っ込んだ携帯を取り出す]
……あれ。
圏外になってら。
[紺の携帯のサブディスプレイを見て、開いて閉じて。
首を横に振った]
ダメだ。
[瑶子も同じ声を返すのを聞いて、礼斗を見た]
うん、戻った方が良いな。
送ってくよ。
[従妹が帰ると言い出すと、頷いてその頭を撫でてやる。
あの危機感の無さを見て、一人で帰すつもりは流石に無かった。
促すように、オレは従妹に手を差し伸べる]
……ネタとして、ただ、書いてるだけならいいんだが。
さすがに、当事者になるのはな……。
[しかも二度目、とは。
さすがにまだ口にはせず]
ああ、やっぱり。
他でも、使えんって騒ぎになってるから、よもや、と思ったんだが。
[二人の返事に、ため息混じりに自分の携帯を閉じ、桜を振り返った]
……本格的に。
笑えん事態になってるかも、な。
―中央広場入口―
……なんだよそれ。
[瑶子の自己完結に眉を下げたりしつつ]
うん。「あやと」だからあやみん。
[繰り返す声には簡潔に説明をつけておいた]
[鼻で笑う様子にはただ苦笑を返すことしかできなかった。]
なのかな?桜が咲くくらいだし?
静音さんに聞くのは後回しかな。
[まだ現実的ではない物事を現実的に考えたかった。
百華につれられてこちらに戻ってくる千恵、意識はそちらに向く]
うん、そうだね。
[やさしく千恵の頭を撫でる]
一緒に帰ろう。
あまり遅くまで出歩くのはよくないよ。
[千恵をはさむようにして手を握る]
─中央広場・入り口─
……こらこら。
意味もなく広めるな、それ。
ったく、史さんはあやみんで、神楽はひふみん。
俺の知り合いどもは、俺の名前を何だと思ってる。
[文句は言っても強く押し止めないのは。
何だかんだと言いつつ、気を許しているからなのだが]
……嫌な物を嫌と言って何が悪い。
俺にはそんなことよりこっ恥ずかしさの方が先に立つんだよ。
[そう呟いて、ぷいと顔を背ける。
キャーキャー騒ぐのには、はぁと頭を抱えて溜め息。
そして、異変はすぐそばにあるという言葉に再び目を神楽に向けるが、]
…………なんだよ、その頭の痛くなってくるような馬鹿話は。
猫パンチって、ありえんだろ。もういろんな意味で。
[そう言って再び頭を抱える。
だが、真面目な話に移行すると、スッと目を細め、]
桜…………ああ、やっぱこれって『桜と童女の怪異』と関わりあるのか?
[ぶつぶつとそう呟いていたが、スッと顔を上げると、]
…………そうだな。見に行ってみるか。
[そう言って、桜の元へと向かうだろう。]
聞いてどうしたいわけでもなかったし。
史兄さん、礼斗さんと仲が良かったんだ。
[眉を下げる様子にも変わりなく答えて。
簡単な説明には、ふぅんと相槌を打った]
記者さんも難しいんですね。
[礼斗に返すのはやはり一般論の域。
携帯を持ち上げたり下げたりしたが圏外なのも変わらず]
ただの電波障害、でもないのかな。
こんなに人がいるのに。
[シンボルツリーの方を伺い見るようにして人影を確認して。雑誌の内容を思い出しながら、確かめるように礼斗に視線を戻した]
[二人にじゅんぐりに撫でてもらうと、はふりと嬉しそうに笑う。かまってもらえて幸せ。
百華は仕事だからと、ここでおわかれ。
ばいばいと百華に手を振って。
伽矢と瑞穂、二人に片方づつ手を握られながら、まっすぐ南側から出てゆく。]
―公園→住宅街前―
[途中で異変を感じて、止まるのはどちらが先なのか。]
………どうしたの?
[きょとんとして、前を見た。
特にどこもおかしくない、いつもの道。
手を離し、まっすぐ行こうとすると。]
(ごちん!)
[頭をぶつけた。
その場に蹲る。うさぎも心配そうにだらーんとしている。]
―中央広場入口―
ほら、名前弄りは基本だから。
[礼斗には適当なことを言った。
実際は呼びたいだけだ]
あやみん曰く腐れ縁らしーけどな。
[瑶子にはそう答えながら携帯を今一度見て、元のように仕舞う]
で、なんだよ。
笑えねー事態って。
─中央公園・入り口─
史さんとは、昔からの腐れ縁だな。
[仲がいい、という言葉にはさらりと言って。
一般論にはまあな、と頷いた]
……単なる電波障害なら、いいんだが。
桜が咲いた時、その場には、伝承に出てくる童女がいた。
俺の知る限りだと。
楽観視は、あんまりできそうにないんだよ、これ。
[ここまでは、真面目な面持ちで言うものの。
可愛くて、と真顔で言われると、さすがにがっくりきた]
……この年の男に、可愛げがいるのかと……。
……桜が咲いたのと電波障害は関係ねぇんじゃねぇの?
確かにおかしな現象だけどよ。
[繋がらない、と幼馴染の言葉に難色を示す。
従妹を挟んでのいつもの並びになると、歩幅を合わせるようにして歩き始めた]
千恵ちゃん送ってきますね。
[仕事に向かう百華にそう挨拶をしながら伽矢には気遣うような視線を向けた。
途中何かにぶつかり前に進めなくなり足を止める。
遅れて千恵が何かにぶつかり]
大丈夫?千恵ちゃん。
[自分もしゃがみこみ頭をやさしく撫でて何かにぶつけたと思わしきところの様子を伺う。
幸い怪我はしていないらしくそのまま頭を撫でたままに]
何だろう、見えない壁みたいな。
[伽矢に不安げな視線を向けた]
─ →住宅街前─
[歩きながら、空いている方の手で携帯を掴み、その変化を確認する。
歩けど歩けど、表示が変わることは無かった]
こっち来てもダメか…。
ホントに何なんだろうな。
……ん?
[不意に足が止まる。
その先に通れないと騒ぐ人を見つけたからなのだが。
それを伝える前に従妹は手を放し、何かにぶつかった]
!?
千恵、大丈夫か!?
[慌てて蹲る従妹へと駆け寄る。
携帯を仕舞い、ぶつけたらしいところを撫でてやりながら、何かがあったらしいところへと触れた]
……壁……?
何で、こんなところに壁が。
つか、見えねぇし。
[追い討ちをかけるように噴き出す史人。
睨んだ。
思いっきり、じいいい、と睨んだ。
それから、それどころではなかった事を思い出し]
……笑えん事態は笑えん事態だよ。
[史人の疑問に、は、と息を吐く。
周囲を見回すが、こちらに注意を向けているものはいない。
野次馬たちは、携帯が使えない事や、何やら他にもトラブルが起きているようで、そちらに集中しているようだった]
もしかすると。
……人の命にかかわる事に、なるかも知れない……。
オレが解るかよ。
でも……もしかしたら、桜と関係あんのかな。
[幼馴染に不安げな視線を向けられ、困ったような表情で言った。
怪異が怪異を呼んだなら、と桜のことと繋げるが、やはり首を傾げてしまう]
まー、そういうモノにも色んなのがいるってことよね。
私は見てて、すっごい和んだけど。
[おじさんは泣きそうな顔で助けを求めて、猫は楽しそうにパンチを続ける姿はシュールで楽しかった。
なんか、そのうちどっかに消えてったけど]
「桜と童女の怪異」って言うの?
私はそういう細かいところまではあんまり覚えてないからわかんないけど、多分、そうなんじゃないかな。
さっき読んだ本の概要とも大体似てるし。
ま。行ってみればなんか分かるでしょ。
後は、綾野さんに話が聞ければ大体のことは理解できるとは思うんだけどねえ。聞かせてくれるかなあ。
よし。とりあえずGO。
[進行方向を指差し、神楽が雪夜と共に桜の元へと*歩いていった*]
―中央公園入口―
腐れ縁が続く位に仲が良いんですね。
[独特の解釈法で二人に頷いた]
桜の童女も現れたんですか。
本格的に符合してるんだ。
楽観視できない…神隠しが起こるかもしれない?
[雑誌にあったのは、その程度の噂話にすぎず。
説明がなされるなら大人しく聞こうとするのだが]
別に男の人が可愛くていけないこともないと思います。
可愛くないよりは可愛い方がいいかと。
[そこだけはどこまでも真顔で返した]
―住宅街前―
いたぃ…。
[涙目になりつつも泣くのは我慢出来たけど、じいいんと頭に響く。
瑞穂に撫でてもらうと、痛みは少しゆるやかに。
遅れて伽矢にも撫でてもらうと、だんだん痛みは引いていった。]
う、ぅ。だいじょぅぶ……。
[まだちょっと痛いが、すっくと立ち上がり。]
なんか、いけない…。なんで?
[いつもは先に進めるのに。
見えるのに進めないのは不思議な事。
ぺち、ぺち、と、見えない何かを叩くが、何か変わるわけでもなく。]
そうなんだけど…。
[答えを知りたかったわけじゃない、ただ最初に頼りにしたかった。
携帯は圏外、桜は満開、通りには見えない壁]
そんな、まさかね。
路地の方とかどうかな?
[見えない壁をぺたぺたと少し触ってみてからそう伽矢に尋ねてみる。]
[家に帰れない、と呟く従妹にオレはまた困った表情になった]
まだ判んないよ。
他の道、探してみよう。
[幼馴染の提案に同意し、オレは従妹へと声をかける]
……桜の童女?
[中央の桜を見上げた。
そこには睨む視線から目を逸らす意味も多分に含まれていたが]
なんか、そんな話聞いた気もすっけど……
[聞き流した相方の話に含まれていたかも知れないと思考を巡らせる。
眉間に指を当てていると、次に聞こえた礼斗の言葉]
……は?命?
なんだそれ、幾らなんでも大袈裟な……
[見えた表情がふざけているようには見えず、途中で口を噤む]
[こくり。不安げに、伽矢に頷いて。
見えない壁をぺちぺちしながら、瑞穂の傍を歩いてまわる。
小さな手がすり抜けられるような場所もなく。
どこまで行っても、進めない。
だんだん、眉が下がってきた。
リュックのうさぎもくったり首を下げる。]
─中央公園・入り口─
……まあ、そうとも言う。
[黒江の独自の解釈にはそれだけ言って。
真顔で言われた、可愛い云々は追及しない事にした。
多分きっと、きりがないから]
……さすがに、ソレに書くには、実際のとこはきついからぼかしたんだが。
桜と童女の怪異──『桜花』が、現れる時の行方不明者っていうのは。
……神隠しじゃなくて、大抵、死んでるんだよ。
それと、その記事。
建前上、伝承扱いにはなってるけど……現実に、起きてる事だ。
[従妹と幼馴染と、揃って見えない壁を確かめながら抜け道を探す。
けれど先へ進める箇所は一向に見つからなかった]
んだよこれ……。
ぜんっぜん進めねぇ。
[段々苛立ってきて、オレは見えない壁に拳を叩きつけた]
うん、他の道から行ってみよう。
[伽矢の同意を得られてまずは通りの何箇所かを調べる。
やはり通れるところはなく今度は路地の方に向かう、
しばらく行き、やはり何かの壁にあたり先に進めない。]
なんだろうこれ。
[千恵の頭をやさしく撫でてやりながら]
通れるようになるまで私の家に来る?
[何か通りでは先に進めないことなどもあり揉め事が起きていた。
あまりこの場にとどまる気になれなかった]
―中央公園入口―
[笑う史人と睨む礼斗には特に何も反応せず。追求のこなかった部分にはそれ以上触れなかった。多分きっと大正解]
そうなんですか。
確かに死亡者が出てたら事件になってしまって、なかなか詳しくも書けないかもしれませんけれど。
…桜花って、童女の名前?
史兄さんもこの話を知ってたの?
[現実の話というのも、何故かすんなりと受け入れていた。
むしろ気になったのは桜花という名前で。
聞こうとしていたこともあって、史人の顔を見上げた]
─中央公園・入り口─
……原因不明の行方不明にするしかなかった、ってのが実情だった。
[ぽつり、と。
呟く言葉が、妙に実感を帯びているのに、果たして二人は気づいたか]
そう、桜の童女の名前。
律儀に、自分でも名乗ってたしな、さっき。
[肯定の頷きを返しつつ。
黒江が、史人に向ける問いに、不思議そうに瞬いた]
……史さんも?
あれ、俺、この記事の事、話した……っけ?
……この様子じゃ他の道もどうなってるかわかんねぇな。
[諍いを耳にしながらぽつりと呟く]
オレ達の家のところにも壁が出てないとも限らない。
確認ついでにオレ達の家に行こう。
[仕事だからと先に戻った母親なら、何か知っているだろうか。
けれどそう思っても携帯が繋がらないのでは、連絡の取りようが無かった]
…………和むのか、それ?
[桜の元に向かう道程。神楽の言葉に目を細めて訊ねる。
想像してみたが、シュール以外の何者でもなく。正直引いた。]
まあ、この呼び名は俺の知り合いが勝手に付けた名前だろうがな。
俺も詳細は知らない。切っ掛けと結果だけが調べて解って、過程はついぞ予想も付いてないんだが。
綾野? ……ああ、あの桜の前にいた女か。
何か知ってるといいってお前あれと知り合いなのか。
……知り合いは選んだ方がいいと思うぞ。
[お前が言うなという話である。そうこうしている内に中央公園にやってきたのだが、]
……何だよ。あれ。
[少し離れたところからでも見える桜の大樹。それは満開の花を咲かせていた。]
[携帯を見ればやはり圏外、連絡をすることもできないがしかたがない。
通りの先に動く者の気配がない不自然にはそのとき気づかなかった。
通れないだけならば向こうからこっちにこれない人もいなければおかしいはずなのに]
それじゃあ行こうか?
[壁を殴った伽矢の手に気遣う様に視線を送ってから、
千恵の頭をやさしく撫でて手をしっかりと握り歩き出す]
きっと大丈夫だよ。
[千恵を不安にさせないようにそう伽矢に答える]
―中央広場入口―
『桜花』?
[それと知らず、二度目の呟き]
いや、知らな……
[否定を返そうとする途中、落ちる花片が見えた。
不意に眉間を押さえ、言葉は途切れる。
少しよろめいた]
……あれ?
─中央公園入り口─
行方不明にするしかなかった…。
当時は大騒ぎだったんでしょうね。
[礼斗の言葉が帯びる実感には気づいているのかどうか。
返される言葉はここにきても淡々と感想を述べるだけ]
史兄さん、大丈夫?
[よろめく史人に手を伸ばした]
[焦りがあったのか、壁を叩いた時に従妹を怯えさせてしまったことに気付けなかった。
幼馴染の声と視線を受けて、オレは頷いてから歩き出す]
[壁を殴った手に、痛みは感じられなかった]
─ →中央広場─
[再び従妹の手を握り、経由地でもある中央広場へと戻って来る。
人集りは少しだけ減っただろうか。
それでもまだ見物人は多く居る。
見知った顔もいくつか見えたが、今は自宅へと向かうべく、繁華街の方へと足を向けた]
─ →繁華街─
―中央広場→繁華街―
[いつものように千恵を挟んで3人並んで中央広場に戻ってくる。
千恵を気遣いながらのこと周りの様子にはあまり気づかなかった。]
家の電話なら使えるかもしれないから家についたら電話してみようか。
[千恵をなるべく安心させようとそう提案しながら繁華街の方へ向かう]
─中央公園・入り口─
……史さん?
[要領を得ない、言葉。
それと、明らかに調子の悪い様子に、眉を寄せる]
……なんと言うか……立ち話するのも辛そうだな。
俺ん家来て、休むか?
どうにも騒々しいし、ゆっくりできる所で休んだ方がいいだろ。
[よろめく史人と、手を差し伸べる黒江の二人を見比べつつ、問う]
……桜についての詳しい話も。
聞きたいなら、その方が資料揃ってるし、な?
[立ち話で続けたい話ではない、というのが本音なのだが。
それは表に*出す事はなく*]
[こくっと瑞穂に頷いた。きっと大丈夫、明日になったら帰れると。
そう思いながら、連れられ歩く。
伽矢とほんの少しだけ距離をあけたのは、怒ってるような気がしたから。
じ、と視線は伽矢の手に。
痛いかな?と思いながら見ているが、怪我とかはとくに無いような。
通り抜けた中央公園に、居た人らには気づかない。
さくらも今は見ないまま、通り過ぎて繁華街へ。]
―中央公園入口―
本当にどうしたの。
[息を乱している史人に首を傾げて。
顔を上げると周囲へと向けた。
まだそれなりにある人影、視線はその中でも背後にある出入り口から繁華街へと抜けてゆく少年少女を少しの間追いかけた]
…あ。どうする?
私は行ってみたいけど。
[話はまだ聞いてみたくて、史人を振り返りお伺いを立てた。
そもそも自分の部屋に帰るなら道はずっと一緒なのだが]
―中央広場入口―
……悪い。
大丈夫。
[深く息を吐いて、顔を上げた。
そこで瑶子から差し延べられていた手に気がつけば、軽く手を振って遠慮を示す]
あーうん、それ、ちょっとありがたいかも。
あやみんとこ、こっから近かったっけ。
[息を整えながらそう返した。
そこにいつものような笑みは*浮かばなかったけれど*]
─繁華街─
[しばらく歩き続けて、オレの家と、それに隣り合う幼馴染の家の前まで来る。
ここまでの道では壁にぶつかることは無かった。
オレは一人、自宅へ向かうように歩く]
……ダメだ、ここから壁がある。
[そこはオレの家と幼馴染の家の丁度中間。
オレの家は見えない壁の向こう側にあった]
―繁華街―
[しばらく通りをいく。
もうすぐ家につくというところで先ほど見たのと似たような光景、やはり通れないらしい。]
こっちも通れない?
[口をついてもれる声、人だかりは丁度自分の家付近で近づいていくと伽矢の声、自分も手を差し出すと見えない壁に手が触れた。
自分の家と伽矢の家を隔てるように壁があるらしかった]
私の家には…入れるみたい。
[人だかりの中には百華の姿も見つかるだろうか?
複雑な面持ちで伽矢に視線を向ける]
―繁華街―
かやにいちゃも、おうち帰れない……?
[壁の向こう側、あまり連れて行ってはもらった事はない伽矢の家を見上げて。]
なんで、かえれないのかな。
あしたになったら、かえれるかな……。
[だいぶ元気なく呟いた。背中のうさぎは、ゆらりと揺れる。]
……ちえ、おなかすいた。
[ぽつりと、空腹を訴えた。]
[裏手へ回る路地に沿うように、見えない壁は続いている]
ん……オレん家もダメっぽい。
瑞穂ん家なら入れるみたいだし…。
瑞穂、悪いけど千恵休ませてやってくんねぇか?
オレはもうちょっと調べてみる。
[元気のない従妹を慰めるように撫でながら、オレは幼馴染に済まなく思いながら*頼みごとをした*]
―中央公園入口―
そう。ならいいけど。
[史人に遠慮されれば、触れないままに手を引いて。
話が纏まる間に桜の大樹の方を向いた]
気脈…。
[小さく呟き、公園内に留まっている人々へと巡らせた視線は一度途中で止まった。
けれど礼斗と史人が歩き出す気配に、踵を返して後ろに*続いた*]
[千恵の頭を撫でながらその言葉に安心させようと笑顔を向ける]
どうだろう、伽矢くん調べてみるみたいだから。
それ次第かな?
[自分ながら曖昧な返答しか返せなかった]
私も後で静音さんに聞いてみる。
伽矢くんも、駄目そうだったら家にきてね?
夕飯作っておくから。
[千恵の空腹の訴えもあってそう告げてから、すまなそうな伽矢に気にしないでと笑顔を向けた。
千恵を連れて家に入ると]
千恵ちゃん何食べたい?
何でもってわけにはいかないけど。
……ちっ、話には聞いていたがマジで咲くなんてな。
ということは……『桜の少女』もいるってわけか。
[そう呟くと、(礼斗たちがいるのとは別の)入り口から公園の中へ入り、中央広場・桜の大樹の下へ。
そこには桜を見上げる綾野の姿。それに駆け寄り、襟を掴んでこちらを向かせる。]
おい、あんた。これはどういうことだ?
季節外れの桜。不可視の壁。それと……
[そこで言葉を切ると、ちらりと視線を上─見事に咲き誇る桜花─に向け、]
……桜の少女。今は見えねーが、いるんだろ?
とりあえず知ってること、教えてもらおうか。
[そうして語られるのは、桜花が言い残した言葉と礼斗が聞き出した内容。]
……桜の童女『桜花』に、『司』と『憑魔』、ねぇ。
なるほど、合点がついた。それが行方不明の真相か。
―繁華街―
[なでなで。伽矢にされても、すぐに笑顔にはなれない。
瑞穂にも撫でられるが、曖昧な返答に、表情は優れない。
何食べたいのか尋ねられてると。]
……ハンバーグ。
[じ、と見上げてそう言った。
伽矢がどこかへ行くと知ると。]
かやにいちゃ、いってらっしゃい。
[小さな声で見送った。気をつけて、とは言えなかった。
うさぎはどこか不安げに、首を*傾げる。*]
―書店―
[千恵の返答には笑顔を返し、まずは一階に案内し店内の電気をつける。]
それじゃあ腕によりをかけて作るね。
千恵ちゃんの読みたい本持っていっていいよ。気に入ったのあったら一冊持って行ってもいいし。
[千恵が選ぶ本を手にして店内の電気を消しながら二階に上がる]
本読んで待ってて、TVとかも見たければつけていいよ。
[電話をかけるより先にまずは夕飯を作ることにした。
ほどなくしてハンバーグにレタスと胡瓜のサラダ、豆腐とご飯を二人分を食卓に*並べる*]
[そうして、綾野の襟を離すと、つかつかと桜の樹に歩み寄る。
そして、ひとつ息を吐くと、]
(ごっ!!)
……おい、聞こえてるか。
俺を怒らせたこと、絶対に後悔させてやるから覚えておけ。
[幹を思い切り殴りつけそう言うと、ギロリ桜の樹を見上げる。
もし呼応して桜花が現れたなら、その目つきはますますキツくなる*だろう*。]
幹を殴る音。
向けられる、言葉。
それに応えるように響くのは。
哀れむような響きを帯びた。
童女のわらう、声ひとつ──。
―中央公園・入り口―
ああ、ここからすぐんとこだ。
黒江嬢と同じ、っていや、早かったか。
[近かったっけ、という史人に頷き。
歩くのが辛いようなら、手を貸せるようにしつつ、歩き出す。
途中、すれ違った者たちが話す事――道の先に進めない、というそれに、僅かに表情は険しくなる。
記憶との合致は、嫌な予感を更に高めた]
―自宅―
[ざわめく人群れをすり抜け、自宅へと。
仕事場と化しているリビングに二人を通すと、パソコンを立ち上げながらキッチンへ]
コーヒー淹れるが、飲むか?
それ以外だと、野菜ジュースかほうじ茶くらいしかないが。
[微妙に偏っているのは気にしちゃいけない。
ともあれ、リクエストがあるならそれに応え。
パソコンから、ネットへのアクセスを試みるが]
……こっちも、ダメ、か。
[返されたのは、ネットワーク異常、のアラートメッセージ]
[ため息を一つつき、パソコンの横の写真立てをちらりと見る。
紅葉の山をバックに、自分と、茶髪の女と、アッシュグレイの髪の男の三人が写る写真。
そちらに視線が向いたのは一瞬、すぐに瞳はパソコンへと戻り先程も引っ張り出したフォルダを開く]
……さて。
俺も、何から何まで知ってる、って訳じゃないんだが。
一応、わかってる事は、話しといた方がいいか?
[パソコンのモニタから、史人たちへと向き直り。
投げかけるのは、こんな問い**]
─繁華街・自宅傍─
ん、分かった。
それじゃあ、ちょっと行って来る。
[従妹と幼馴染に見送られ、オレは道を小走りに駆け出す。
母親に呼び止められたとしても、「直ぐ戻る」と言って聞かなかったことだろう]
まずは移動手段の集まってる駅方面見て来るか…。
あそこが通れないなら、かなり絶望的だな。
[呟きながら駆けて行き、中央広場を経由して北へと向かう]
─ →駅方面への道─
[軽い駆け足だったが日頃の練習のお陰か息は乱れること無く。
遠目に通っている学校が見えて来る。
通りの先を見やると、案の定立ち往生している人達が何人か居た]
こっちもダメか……。
どこまで続いてんだ?
[見たところ、学校とグラウンドの間の位置に通りには壁が出来ている。
見えない壁に手を当てながら、オレは学校の敷地内へと入って行った]
……………。
何か、カーブしてる…?
[広い場所で確認出来たお陰か、壁が緩やかにカーブしていることに気付いた。
見えない壁は緩やかなカーブを描いてグラウンドを横切っている]
壁は円を描いてる、ってことか…?
中心になりそうなものって言えば……。
[視線が自ずと中央広場へと向く。
淡く光るように、桜の欠片が目に入った。
オレはそれを見て眉根を寄せる]
ホントに怪異が怪異を呼んだ、っぽいな。
どうやったらこの壁が無くなるんだか……。
[碌な収穫なく通りへと戻ると、何やら雰囲気がおかしい]
……何だ……?
[鼻につく匂い、嗅ぎ慣れぬモノ。
通れないと騒いでいた数名が、いつの間にか動かぬモノになっていた]
っ───!?
[動かぬモノに眼を奪われていると、背後に異様な気配を感じた。
息を飲んだ状態のまま、ゆっくりと振り返る]
──ん、だよ。
[そこに居たのは同級生。
見知った顔、とは言え気が抜けなかった。
その同級生の姿は、血に濡れていたから]
「伽ー矢、お前のも、くれ」
[にまりとした笑みを浮かべ、同級生は飛びかかって来た。
オレは咄嗟に横へと飛び跳ねる。
文化部だったはずの同級生は、驚異的な身体能力で更に追いかけて来た]
な、んだってんだ、よ!!
[身の危険を感じ、オレは全速力で駆け出した。
直線に逃げるだけでは追いつかれる可能性がある。
オレは撒く成功率を上げるために、傍の路地へと*駆け込んだ*]
―礼斗の部屋―
[マンションに向かう途中、進めない道の話を聞いた。
後ろからでは礼斗の表情の変化も見えない。ただ、そうなのかと事実だけを心に留めた]
コーヒー…ミルクありますか?
あ、部屋から取ってきてもいいんですが。
[初めて入る男性の部屋。どうすればいいか分からずに居間の入口で立っていたら飲み物についてを聞かれた。
当然、偏ってると思ったが、顔に出ないので平和なまま。
それでもちゃっかり自分の趣向は主張してそんな答えになった]
ありがとうございます。
[最終的にカップを手に落ち着ける体勢となり。
見せられたパソコンのアラートメッセージを無感動に眺めた]
綺麗な紅葉ですね。
…何となく予測はできていましたけど。
テレビもダメだと、史兄さんのビデオが欠けちゃうな。
[最初に見えた写真への感想をぽつり。
礼斗の溜息には淡々としながら少しずれてもいる感想を。
史人が出ている番組は全部録画してあったりするようだ]
私たちも当事者になってしまっているみたいですから、知ることが出来るものは知っておきたいです。
礼斗さんの知っている範囲内だけでも。
[問われ、史人の様子を一度窺い、向き直り頷く。
窓の外で桜の花弁が数枚*舞った*]
―瑞穂の家―
[本が沢山並ぶ一階。少しだけ目を輝かせる。
一冊もっていっていいよと言われ、うろうろ悩んだ末に手にしたのは大きく薄い童話の絵本。
著者に『白井夜』と書いてあったが、子供にはあまり意味をもたない。
こくり。二階に上がると頷いて、本を開く前にテレビをつけた。]
……あれ?
[電源を入れて、どこのチャンネルにかえても砂嵐。]
みずねえちゃ、テレビ壊れた。
[瑞穂を呼ぶものの、テレビが写ることはなく。仕方なくさっき手にした本を開いた。]
[じっと本を読みふけると、そのうちお肉の焼けるいい匂いがしてきたので顔をあげる。
並んだごはんは、とても美味しいそうで。
席に着こうとして、瑞穂に本とリュックを置いてくるよう言われたので、部屋の隅にうさぎを座らせた。
うさぎはじっと、羨ましそうに見てるだけ。]
いただきます。
[両手を合わせて行儀よく。
出されたものは、全部食べた。
だいぶ、機嫌が良くなったのは、きっとごはんが美味しかったから。]
[食事が終わると大人しく、本の続きを読んでいる。
瑞穂は食器の片付けをしていて、こちらへ注意はむけていない。終われば電話をかけにいくだろうか。]
……かやにいちゃ、遅いなぁ。
[ぽつり。呟きはうさぎしか拾わない。
暫くそわそわしていたが、うさぎのリュックを背負い、本を手にしたまま、そっと一階に降りると、家の外へと*抜け出した。*]
―礼斗宅―
うん、コーヒーでいいや。
[妙に偏った選択肢は今更突っ込むまでもない。
昔馴染みに遠慮することもなく部屋の中に踏み入り、窓の近くに腰を下ろした]
……しかしなんなんだ、進めないって。
帰れないじゃん。
[外を眺めながら、途上で聞いた話を思い出す。
そうしながらも時折眉を顰めたり、額に手を当てる仕種は相変わらずで]
さんきゅ。
……そっちもダメか。
[アラート音に嘆息しつつ、コーヒーを受け取る。
写真には目を向けただけで何も言わなかった]
あー、暫くは出演予定ねーから。
相方が今行ってる奴が再来週辺りに映るらしーけど。
[瑶子の呟きには苦笑いを返した。
時々ローカルの番組に出るくらいで、テレビ出演はさほど多くない]
……無事かな。
予定通りなら、今頃都心にいる筈だけど。
[一拍置いて、相方の身を案じる言葉が洩れた]
―礼斗の部屋―
あれ、憶え間違えてた。
[出演予定はないと史人に言われて黒瞳を瞬いた。
安否を気遣うのには、確認のしようもないので何も言わなかった]
季節外れの桜が咲いて、数日で散ってしまう。
その数日の間に神隠しが起きる。
狂い咲きの桜では童女の姿が目撃されて、散るのと一緒に童女もまた姿を隠す。
童女は桜の精かもしれないとか、子供以外でも神隠しに遭うとか。
神ではなく魔に奪われるというのもあったかな。
後はお決まりの集団幻覚説があるのとか。
礼斗さんは、他にどんなことをご存知なんですか。
命に関わるというのは、どういうこと。
[雑誌で読んだ話や、興味をひかれて他の本で読んだ話を提示しながら礼斗に尋ねる。
最初は積極的だったのに、話を聞くうちに頷く回数も減っていった]
―回想・書店二階―
[千恵にTVが壊れた呼ばれて接続とかを確認してみるがおかしいところはなく、ぺしぺしとたたいてみたけどやはり砂嵐]
買ったばかりのはずなんだけど。
ごめんねTVは見れないみたい。本で我慢して。
[千恵の頭を撫でた後に再び料理に戻った。
その後食事を済ませると千恵の機嫌が幾分か戻ったようで少し安心した]
それじゃあ食器片付けてくるね。
[時計を見ると伽矢と分かれてからそこそこの時間が経っていた。]
―書店二階―
[千恵の様子に安心していたせいか、伽矢のことに気をとられていたからか、千恵の様子には気づかなかった。
食器の片づけを終えて千恵の母親の携帯に電話をかけた]
あれ?つながらない?
[コール音はおろか受話器からはつながらない旨を伝える声すら聞こえなかった。
再度かけなおす。ボタンを押したときのプッシュ音はなるがやはりそれ以外の音は聞こえてこない]
千恵ちゃんごめん、電話出てくれないみたい。
[繋がらないと伝えるとまた不安にさせてしまいそうで、居間にいるであろう千恵に声をかける、返答はない。]
寝たのかな?
[毛布をかけてあげようと居間にいくと千恵の姿もリュックもなかった]
─自宅─
[コーヒー用のミルクは、主に担当編集が使うために常備されていたとか。
黒江の、紅葉への評価には、僅か、苦笑めいたものを掠めさせるものの、それはすぐに掻き消え。矢継ぎ早の問いに、一つ、息を吐く]
一般認識されてる概要は、その通りだな。
季節外れに桜が咲くのが、発端。桜は、早ければ一晩、若しくは数日後には、元に戻っている。
桜が咲いている間は、何か、壁のようなものに遮られて外部からは中の様子は全く伺えない。
そして、その壁が消えた後、数人が原因不明の行方不明になっている、と。
[静かな口調で、話し始める。視線は開かれたテキストエディタへ]
で、だ。
その壁が何なのか、何故いきなり桜が咲いたのか。
そして、あの『桜花』がなんのか、は、はっきりとは言えん。
……俺の推測では、何かの監視者のようなものじゃないかと思うんだが。
わかっているのは、あれは、季節外れの桜の開花と同時に始まる……ある種の生存競争。
それを最後まで見届けるためにいるらしい、って事だ。
[『生存競争』という言葉。
それに、二人はどんな反応を示すのか。
ともあれ、ここで一度話を止めて、コーヒーを一口啜る]
……ま、隠してても仕方ないんでぶっちゃけるが。
俺が、この事態に遭遇するのは、これで二度目。
今から三年前……山ん中の村の桜伝説の取材に行って……巻き込まれた。
あの時は結局、どたばたの前後に山の斜面の崩落なんかもがあったから。
全員事故死、俺だけ生存って形で処理されたけどな。
[呟くような言葉の後、視線はどこか遠くを彷徨い。
ため息の後、再度パソコンのモニタへと向けられる]
千恵ちゃん、一人で行っちゃったの?
早く探さないと。一階?ううんリュックがない。
[焦る気持ちの中考えはまとまらず、すぐに探しにいこうとして]
伽矢くん、連絡…
[携帯は繋がらず、電話も繋がらない。いる場所も当然わからない。]
置手紙、気づいてくれるといいけど。
『伽矢くんへ
千恵ちゃんどこかに行ったみたい。
探してくる。
ごめんなさい。』
[部屋の中に置手紙を残し、鍵はいつもの隠し場所郵便ポストの中の上部に貼り付けて隠した。
伽矢なら何も言わずともそこだとわかるはずだ]
───回想>>249───
名前というのは言霊が宿るから、勝手にでも何でも、意味は篭るんだけどね。
私の「神楽」にも、せったんの「雪夜」にも。
まあ、その話はいっか。あまり関連性は無さそうだし。
綾野さんは知り合いというか、茶のみ友達?いや。飲んだこと無いけど、将来的にはそんな感じの仲になる予定でいるかな。
現在は、何度か話したことがあるだけの仲かな。
何を懸念しているのか知らないけど、知り合いなんて考えてなるもんじゃないでしょ。なんとなくだよ。なんとなく。
[あまり実りの無い会話を続けながら、桜の見える場所まで辿り着き、雪夜と共に満開の桜を眺めた]
あらま。見事に咲き誇っているわね。
……困ったもんだ。
……さて。
ある意味では、ここからが本題なわけだが。
命に関わるっていうのは、この壁の中で起きるのが文字通りの生存競争……人と人との喰らいあいだから、だ。
人を喰らう、『憑魔』というもの。
そして、それを喰らって清める、『司』というもの。
一体、どういうモノなのかはわからんけど、そういう、特殊な力を持った連中が、この壁の中にいる。
龍先輩……この騒動に一緒に巻き込まれた、俺の仕事の先輩は、『司』としての力を持ってて。
『憑魔』は、自分の最も強い願い、それを叶えるために人を喰らって力をつけるんだと言っていた。
そして、『司』は、それを阻むために、森羅万象の力を借り受けて倒した後……喰らう事で、清めるんだと。
[ここで言葉は一度途切れ。
は、と小さなため息が零れる]
……ま、あんまり気分のいいモンじゃないらしいが。
─路地裏─
…………。
[オレは立ちつくしたまま眉根を寄せていた。
オレを追いかけていたはずの同級生が、目の前で地に伏せている。
頭を潰され、ところどころが欠けた状態で]
…………。
[言葉が出なかった、むしろ押し殺した。
人を喰らっていたモノが喰われていると言うことは、他にも居ると言うこと。
折角拾った命をまた危険に晒すわけにはいかない]
───回想───
[少しだけ眉根を寄せながらその桜を見つめていたが、不意に雪夜が綾野へと向かって歩き、乱暴に問いただすのを見てさすがにその目が険しくなった]
ちょっと!せったん!
女の子に乱暴なことしちゃダメ!私と同じような感覚で他の子も扱うのはさすがに失礼よ。
[そんな言葉でたしなめてみたが、あまり声は届かず効果は薄いようだ。
神楽の言葉に迫力が全く無いというのも起因しているのかもしれないが。
それから、綾野から語られた内容に、指を口に当てて考え込む]
ふむ。
大体本で読んだとおりの内容ね。っても斜め読みだったからあんまし覚えてないけど。
まあでも、役割は果たさなきゃいけないかなあ。気乗りしないな。
桜が咲いたから始まるのか、始まるから桜が咲いたのかは、知らん。
……『桜花』は、始まるから咲いた、とか言ってたが、実際はどうなんだか。あれも、単純な怪異の枠には収まらんようだし。
騒ぎと桜の関連性は、龍先輩にもわからなかったらしい。
身も蓋もない物言いをすれば、超自然の法則。
俺たちの考えうる常識で図ろうとするのが、無意味なんじゃないかって、レベルの事なんだろうけど。
[そこは、考えても考えても結局答えのでなかった事だから、到達した結論でしめて。
だいぶ冷めたコーヒーを口にする]
……ま、後わかってるのは。
生き残るには、『憑魔』をどうにかせにゃならん、って事だけだ。
『憑魔』から見れば、他は全て『餌』扱いらしいからな。
[それは、実際に『憑魔』に──『憑魔』となった、茶髪の仕事仲間に言われた言葉]
とはいえ、非力な一般人には、きつい話ではあるが。
[その時の事を振り払うよに、小さく首を振って。
最後は、冗談めかした口調で、話をしめた]
───回想───
[考え込んでいる間に、雪夜は綾野の襟を離し、怒りの形相と共に桜を殴りつけたが、神楽にもそれは気持ちは理解できたので特に何も言うことは無かった]
[風が揺れ、
ワラい声が、
鈴の音が、響いた]
……知った話を総合すると、「桜花」にとって私達は単なるモルモットだもんね。
そりゃ、笑いもするわ。
んー……気にくわないなあ。
筋書き通りの物語の演者になると思われているのが。
[桜に近づくと、更に自身の内から湧き上がる衝動の一つ一つが、その力が、神楽には気に食わない]
生憎と、貧困暮らしを続けていてもお恵みで生きていくほど落ちぶれてはいないんだよ。
アドリブの激しい役者の底力見てなさいよ。
―礼斗宅―
壁が出来て、外からは様子が分からない。
中にいると出られなくなるわけですね。
[道が通れなくなったという話に確証のようなものを得る]
生存競争。
[呟いた後、返す声も途切れていった。
桜花の名前に史人はまた反応したのだろうか。
窓の外へと顔を向けたから、それにも気づかないまま]
桜花。
見届け…る、だけ?
―礼斗宅―
[礼斗の過去体験告白が始まると、意識はそちらに戻された]
たった一人の生存者。
礼斗さんは、喰らわれなかったんですね。
[喰らいあいという言葉は実感できているのかどうか。
じっと礼斗の顔を見た。穴が開きそうなほどにじぃっと]
清める司。
求める憑魔。
力を持つ、者。
相手を喰らって力を得るモノ。
[短い言葉で確認するように、刻み込むように呟く]
[桜と怪異の関係性は礼斗も把握してはいないようで。
ただその説明をじっと聞いて]
どうにかしろと言われても。
こんな事態、どうすればいいのか。
[冗談めかされた言葉に、どうにか頷いた。
同じく冷めてしまったミルク入りのコーヒーを一口飲んだ]
RPGみたいに、街に武器調達へ行けばいいですか。
[一息ついて言った内容は冗談らしいのだが、真顔で淡々と言うと微妙だったかもしれない]
─ →繁華街─
[幼馴染の家へと向かう最中、運良くあのイキモノに出会うことは無かった。
オレは周囲も眼に入らぬまま、目的の場所へと辿り着く。
開いているはずの扉、けれど手をかけても動くことは無かった]
鍵?
何で……確か鍵は…あった。
[隠してあった鍵を引っ張り出し、扉の鍵を開ける。
閉めるのもそこそこに幼馴染の家へと駆け込んだ]
千恵!瑞穂!
……居ない……?
[名を呼び探すも、返事は無い。
しばらく探した後に視線を落とすと、テーブルの上に置手紙を見つけた]
………ったく、何で一人で……!
[それは従妹と幼馴染、両方に対して。
今、ここが危険な状況にあることを知っているため、焦りと不安が募る。
思わず置手紙を握り潰していた]
─自宅─
……俺が、喰われなかったのは、龍先輩のお陰だ。
珠……最後の『憑魔』に俺が狙われたときに、護ってくれた。
……二人はそのまま、相討ちになったんだけど、な。
[喰らわれなかった、という黒江の言葉に、小さく呟く。
視線がふ、と、写真立てへと逸れた]
……街に武器調達、なぁ。
それでどうにかなるならいいんだが、それこそ。
[真顔で淡々と言われた言葉には、一瞬どう答えていいかわからず。
言葉が返るまで、だいぶ間が空いた]
─繁華街・瑞穂の家─
千恵が家を抜け出して、瑞穂が探しに行ったなら…。
まだ瑞穂が近くに居る可能性の方が高い、かな。
後は千恵が行きそうなところ……。
[子猫達に会いに行ったのだろうか、それとも脱出口を探しに行ったのだろうか。
しばらくの間考えてみたが、答えなんて出るはずもなく。
オレはひとまず外に出ることにした。
入れ違いになる可能性もあるが、じっとしているよりは探した方が良いと考えて]
─ →繁華街─
─中央広場・桜の樹前─
[神楽の言葉にちらりとそちらに目を向け、]
…………おいおいおいおい。
[その向こう。目を細めて見ると、生気ない様相のニンゲンに見える何かが数体、こちらへとやってくる。
その服はべっとりと紅いもので濡れており。]
……これはひとまず逃げた方がよさそうだな。
[ポツリそう呟くと、]
おい、神楽。それと……綾野だったか。……走るぞ!!
[そう言うと同時。二人の手を強引に引いて、その『何か』の来る方向と逆に走り出す。]
[通りを千恵を探しながら走っていく。
先ほどまでいたはずの人の姿は通りにまったく見えなかった]
どこ?千恵ちゃん?
[声をかけるも返答はなく、路地も時折覗きながら探す。
千恵はおろか人の姿すら見つけることができない。
よくわからない不安が心の中で沸き起こってくる。]
千恵ちゃん守らないと。
[自分でもなんでそう思ったのかわからない。
でもそう思うといつもよりも走れるような気がした]
千恵ちゃんが行きそうなところ、猫がいたところ?
[千恵に案内された猫がいた向かおうとしたところで伽矢の姿見えた]
[雪夜が驚いたように見やるその先へと、神楽も目を向けると、そこにいるのは生気を失ったモノたち。
その血走った目が、何を求めているのかは明白だった]
いやん。
ゾンビ系統は、私の担当じゃないのよ。
[茶化すように言った矢先、雪夜に腕を引かれて、その場から離れるように走り出した]
……死者でさえないものは、私には送れない、かなあ。
[伽矢も誰かを探している様子で、きっと置手紙をみたのだろう]
伽矢くん、置手紙見た?
千恵ちゃんいなくなって、この辺にいないみたい。
猫のいるところにいったのかも。
手分けして探して、お願い。
ごめんね私がいながら…。
[入った時は開けっ放しにしてしまったが、出る時は流石に扉を閉めて鍵もかける。
鍵は同じように郵便ポストの中の上部へと貼り付けておいた]
瑞穂。
[いざ探しに行こうとした時、瑞穂に声をかけられ、無事な姿に安堵する]
……見た。
とにかく急いで探さないと……変なのがうろついてるんだ。
手分けするよりは一緒に行動した方が良い。
[謝るのはあと、と直ぐに移動を始めようとする]
[そうして二人の手を引きしばらく走るが、一般的ゾンビの認識とは異なり、その『何か』はヒトの走るのと変わらぬ速さで追いかけてくる。]
…………ちっ。このままじゃ……
[後ろを窺い、舌打ちをする。
このままではジリ貧だ。だったら……]
おい、神楽。お前こいつ連れて逃げろ。
……俺は、あいつらを別の方に誘導する。
[そう言って綾野を神楽に押し付けると、自分は囮となるため足を止める。
神楽が躊躇するようなら、一喝のもと、強引に送り出すだろう。]
[走りながらその目の端に見えては消えるのは、桜の花弁が風に吹かれて、一枚一枚と揺らめいて飛んでいく情景。
そして。
彼女の目に映る、地に縛られるように彷徨う魂]
黄泉桜、か。
変なの?
[聞き返すが幼馴染の様子からきっとただことではないのだろう。
今おかれてる状況すら普通ではないから]
わかった、それじゃあ急ごう。
[伽矢に頷いてついていくように走りだす]
伽矢くんはどこか思い当たりそうなところある?
─自宅─
……ん?
[空になったコーヒーカップ。
一まず片付けようか、と思い、立ち上がった時。
外が、妙に騒がしい事に気づいた]
……激しく、嫌な予感がするんだが。
気のせい……じゃ、ないよなぁ……。
[いつか、と同じであるならば。
同じことが起きているのは、容易く想像がつく]
やれやれ。非力な一般人としては、どうすべきか。
[口調は冗談めかしているものの。
表情は、真剣そのものだった]
―礼斗宅―
そうでしたか。
[予想以上に礼斗の過去は重たく、それしか返すことはできなかった。淡々とした声は確認するかのようにも響く]
素手よりは安心かと。
武器屋探しから始めないといけませんが。
[空いた間にも気にせず答える。
だから真顔で続けると、以下略]
それはさておき。
閉じこもっていても終わりそうにないなら、情報を集めるのに街に出るのもありかなと思いました。
― 回想・開花時 ―
[木の上の少女が言葉を紡ぐ。
その姿に目を奪われて、周囲の人には気が回らなかった]
力の流れ? 気脈?
[何か意味があるのだろうか。
私にはさっぱり理解できなかった。
少女に木から下りる様言おうと傍に寄ると、
鈴の音と共に、桜に溶ける様に少女は消えてしまった]
[『携帯が通じない』 周囲の人々がざわめく。
さっき時計代わりに携帯を見たときは、電波を拾えていたはず。
周囲と同じように携帯を確認するが、表示は『圏外』だった]
きみが悪い。
季節外れの桜、哀れな女、消えた少女。
電波は消える。なんなの?
[問い返されて、頷きを返す]
……遭遇すれば、命に関わる。
[説明はそれだけ。
流石に詳細を伝える気にはならなかった。
駆け出し、更なる問いが向けられると]
家に帰れない以上、後はあんまり……。
それこそ瑞穂が言ったみたいに子猫のところくらいか。
後は……。
[駆けながら少し考えて]
―礼斗宅―
『桜花』に『司』、……『憑魔』。
……なんか、非現実的な話だよな。
[礼斗の話を聞き、最初に出た声はそれだった。
言葉の割に響きは淡白で、疑念や困惑の色は薄い]
……けど、事実なんだろ。
巻き込まれたってのも、生き残ったってのも。
[そしてすんなりと受け入れる言葉。
数逡の後顔を上げて、礼斗の顔を見た]
……あやみん。
お前さ、
[何かを問おうと口を開き]
[雪夜から自分が囮になるということを聞くと]
え?いいの?
んじゃ、お願い。
[いともあっさりと了承した]
こんなときに頼りになるのは、やっぱ男の子だね。
いやあ、さっき力強く腕を引っ張ってくれたのは少しだけ胸キュンしたよ。
[笑みを浮かべながらそんなことを言おうとしたが、顔が強張るのはあまり制御出来なかったので、顔をそむけてみた]
もし、死んじゃってもさ。私がしっかりと送ってあげるから心配しなくていいよ。うん。
でも、そういうのは疲れるから、あまりやらせないようにね。
……じゃ、綾野さん。行くよ。
[綾野を引き受け、雪夜から離れるように走り出す]
[とにかく公園を離れたくて、桜の元から離れた時だった]
千恵ちゃん?
[突然姪に声をかけられた。すこし向こうに瑞穂ちゃんと、伽矢。
驚いて少し裏返った声で返事をしたが、気づかれなかったようだ]
うん、桜、すごいねぇ。
春じゃないのに、いっぱいさいたねぇ。
[無邪気な問いかけに、精一杯の笑顔で応えた]
なぁに、おみくじとってきてくれたの?
ありがとうねぇ。
[千恵ちゃんの髪を撫でつつ、おみくじをあける。
横目で桜を見ながら開いた紙には*半吉*とあった]
命に………。
[さきほど通りに人の姿が見えなかったことがその言葉をさらに重いものに感じさせた]
始まったって、そういうことなの?
[漠然とした何か、よくわからないけどよくないことが起きている。]
子猫のところいっていなかったら、仕事場に向かってみる?
[走りながら、伽矢にそう返す]
─自宅─
……素手より安心なのは認めるが、そんなものがここにあるのかと。
[突っ込みを入れて、ため息一つ]
外で、色々と動き出しているらしい。
安全とは思えんけど、閉じこもっていてもどうにもならないのは確かだし……様子、見に行くか。
[首を傾げる黒江にこう言って。それから、視線は何か問いかける史人へと向かい]
……史さん?
[歪む、表情に。訝るように、瞬いた]
[しばらく走り続けているうちに、綾野が珍しく話しかけて来た]
『……良いのですか?』
ん?せったんのことかな?
まあ、男の安いプライドだよ。女はそれを尊重してあげないとさ。
例え、命にかかわるようなことでも、プライドのほうが大事なんだから、笑っちゃうよね。
[無理に笑みを浮かべながら、その足は止めない。
進む道はただがむしゃら。のはずが、何やらゴールが明確に見えているような気がした]
『何処に向かっているのですか?』
仕事場。
せったんが頑張るように、私も頑張らなきゃ。
……ついたよ。
[神楽が向かった先、それは、憑魔が食い散らかして、まだ処理もされていない人間の死体が転がっている場所だった]
……悪くはないって事かしら。
[コメントしようのない結果を姪に見せつつ、
私がいないかのように振舞う伽矢に、小さく溜息をついた。
瑞穂ちゃんと伽矢はベンチに座ったようだった。
少しびくついて、千恵ちゃんは私の影に隠れた]
怖い事ないよ。 ……ひふみおじちゃ?
[私自身に言い聞かせるように、姪を励ました。
姪の口から知らぬ名を聞き、彼女の視線を追ったが、
反応する人物はいなかった]
もう夕方ね。
千恵ちゃんは、そろそろおうち帰らなきゃ、ね?
[ここに長居させてはいけない、そんな気がして、
ありきたりの文句で帰宅を促した]
[あまり走りなれていないのか、それとも、この死体の群れに戸惑っているのか、綾野は大きく息をついた。
一方、神楽はどちらに関しても特に問題は無い]
教えてあげる。
あやのっちが言ってた一つ。
『司』が私。
霊能者って言えばいいのかな?元々、そういう類の仕事なんだけどね。でも、この騒動に導かれて、この力がそういうものなんだって分かった。
色々と力が湧き上がってくるような気がするけど、使わない。私は、今までの私のまま、彷徨う御霊を送るよ。
[そこまで言うと、懐から扇子を取り出し、顔を引き締めて舞い踊る]
[千恵ちゃんはあっさり承知してくれて、胸をなでおろした]
じゃあ、お願いね。
瑞穂ちゃん、いつもありがとうね。
[稲田さんちの娘さんは、よく家の仕事をこなす良い子だった。
伽矢を心配してくれている様子も、私は何となく知っていた。
彼女を伽矢と瑞穂ちゃんに託すと、私は足早に公園を離れた]
………………はぁっ?!
[あまりにあっさりした返答に思わず素っ頓狂な声が漏れる。
ほら、もう少し何と言うか「でも」とか「じゃあ」とか……
まあ、神楽にそれを求めるなんてどだい無理な話か。]
はぁ……お前に期待した俺が馬鹿だったよ。
ったく、こういう時こそ、もっと女らしくしてみろよ。
[しかし、そう零す口元にはニマリとした笑み。
そうして、走り去る二人を見送ると、]
……さぁて、と。…………っつぅ!?
[おもむろに指をツプリと咬む。
ぽたりぽたりと指先から落ちる血に反応したのか、追いかけてきたその『何か』は完全にこちらに注意を向ける。]
さあ、おいっかけっこの続き、だぜ。
[不敵な笑みを浮かべると、二人とは別の方向に走り出す。]
わかんねぇ。
でも、あり得る。
[眉根を寄せながらオレは答えた。
あの童女が何を言いたかったのかは分からない。
それでも、異変が起きているのは確かだった]
そうだな、そっちに居なかったら、行ってみよう。
[行動方針の問いには頷いて返した]
―礼斗宅―
動き出して…。
はい。
[外が物騒になってきたらしいと、若干の躊躇。
けれど自分が言い出したことでもあるので礼斗に頷いて]
史兄さん?
[礼斗の視線を追い、横を向いて史人をじっと見た]
……動き出してやがるな。
クソ、まだ本調子じゃねぇってのに。
[案ずる声に対する反応でなく、不機嫌そうな呟きを洩らす。
首を動かし、窓の外を睨めつけた]
───。
[それは、まさに神秘的なまでに]
───。
[それは、まさに畏怖すべきまでに]
───。
[それは、まさに神々しいまでに]
───。
[それは、まさにただ美しく]
───。
[神楽が舞う。
別れを惜しむことなく。
悲しみの底に沈められることなく。
また、美しき花を咲かせるように。
次なる旅路へと向かうように]
神楽───舞う。
[憑魔に何事かも分からず食い殺された者も。
憑魔のまま死んでいった者も。
全てを悼み、全ての想いを抱きしめて、神楽がそれを浄化せしめようと、その身に受け止めた]
─路地裏─
[ばしゃり。水溜りを踏み散らし路地裏を駆ける。
後ろから追って来ている『何か』は順調にこちらに付いて来ている様だ。]
はっ。経過は上々。
[そう呟くと、曲がり角をスピードを殆ど落とさず、壁を蹴って強引に曲がる。]
─自宅─
……史さん?
[どこか、いつもと違う様子に瞬き一つ]
……大丈夫、なのか?
[しばしの間を置いて、投げかけたのは、こんな問いかけ]
[途中、ばいばいと手を振る千恵ちゃんが可愛くて、
足を止め手を振りかえした。
公園からしばらく歩いた所で携帯を確認するが、やはり圏外。
胸の中をざわついて、私は吐き気を堪え歩き続けた]
― 回想・繁華街の境界 ―
何があったの?
[店の前には、人々の怒声と車のクラクションが響いている。
道路の何もない空間に張り付いている人に、首を傾げた]
何遊んでるのよ。
……いったぁい!
[店に入ろうと進み出たが、見えない壁に阻まれた。
周囲のパニックに納得がいくと、穴がないか壁を触る。
けれど、穴なんてなかった]
うん、急ごう。
[まだ日が落ちる前に千恵に案内された道、今は日も落ちて路地は薄暗かった]
伽矢くん、千恵ちゃんいるかな…。
[大丈夫と言ってほしかった。
千恵に案内された時は苦労して通った道、今は息切れを起こすことなくすんなりと通れていた。自分でも気づかないままに]
『……』
[傍目には、それはまさに魂を食らったかのように見えるだろうか。
それとも、彼女の体を依り代にしたかのように見えるだろうか]
……っ。
[ただ一つ言えることは、これだけ大規模な浄化は彼女の体に大きな負担を掛けることになったということに違いない]
……黄泉への餞になったかな。
[玉のような汗をびっしりと浮かべて、神楽は舞い終えた。
その場には、先程まで見るも無残だった死体の数々は見当たらなくなっている]
だー。流石にきっつーい。
[そんな愚痴を零しながらも、その顔にはやり遂げた笑みが浮かぶ]
― 回想 ―
[稲田さんちが壁の手前にあるのを確認すると、その場を離れ違う道に向かう。
少し待っていれば、子供達と合流できたのだけど。
とにかく穴を探さなくてはいけないと、私の考えは縛られていた]
こっちもだめ? なら、このお宅の庭の中は?
[大騒ぎの中、同じように道を探す者もいて、情報を交換する。
耳に入る話を総合すると、巨大な見えない壁が発生しているらしい]
なら、空は? 空はどうなの?
[尋ねてみるも、答えられる者はいなかった]
あ?
[不機嫌な声で振り返った]
……えーえ。
お蔭様で、目ぇ覚めましたよ。
気分は最悪だがな。
よりによって、コイツの代で遭遇する羽目になるとはね。
[乱暴な口振りで、傍から聞けば意味の取り辛いことを言う。
右手はタイを解き、一番上の釦を開けた]
……居ると良いけど。
[幼馴染の望む言葉は出て来ない。
不安を覚えても、希望を抱いていても、今は大丈夫と言い切ることは出来なかった]
……お前、何ともないのか?
[不思議そうに問うたのは、息切れをしていない幼馴染を見て。
記憶に新しい道、なかなか苦労して通った道。
その素振りを全く見せない様子に、言葉不足ながら疑問の声が出た]
― 現在・住宅街 ―
はぁ、はぁ、はぁ……
[駆けに駆け、しゃがみこんだのは住宅街の地蔵堂。
祠の影に身を隠し、上がった息を整える]
なんなの。 なんなのよ。
[道を探し回るうちに、常連の男を見つけた。
声をかけるとニタニタ笑い、彼はこちらに襲い掛かってきたのだ]
『マーマ。俺にもくれよ。 ……ずっと欲しかったんだ』
[私はすぐに逃げ出した。駆けて、駆けた。
その最中、他にも逃げる者と追う者を見た気がする。
この街に一体、何が起きているのだろう]
[それから、体の調子が戻るまでその場に佇み、やがて、それも戻ってくると神楽が口を開いた]
さ、て。あやのっち。何処に行こうか?ああ。流石に、これ以上の浄化は勘弁ね。しばらくは同じこと出来ないと思うし。
『……』
[綾野は何と言っていいのか分からないという表情でしばらく神楽の顔を見つめていたが、ややして口を開いた]
『桜の元へ』
あ。やっぱそこがいいんだ。
まあ、同じようにあの場所に憑魔達が大群で襲ってくることも無さそうだしね。危害さえ与えなければ、何もしてこない感じ?うん。多分、せったん自業自得。
『……ところで、先程から気になっていたのですが、その「あやのっち」というのは?』
あなたのあだ名。私、そのままの名前で呼ぶのなんか苦手なんだ。そして、あだ名で呼ぶ人は漏れなく私の家の縁側でお茶を飲むのに誘っているから、今度良かったら一緒にお茶でも飲もうよ。
[あっけらかんと言い放つ神楽に、綾野が少しだけ微笑んだ]
『フ、フ……変な人』
……はい?
一体、何の話……?
[史人の言う言葉、その意が掴めず、一つ瞬き]
話が見えんのだが。
と、言うか。
……誰、というべきか、それとも、何、というべきか。
どっちだ。
[その聞き方もどうなのか]
─ビジネス街・表通り─
[──そうして、十数分後。路地裏から、表通りまで出てくる。
ちらり後ろを振り返るが、『何か』が追って来る気配はなし。
ふぅと、ひとつ大きく息を吐くと、]
さて、神楽たちは何処にいったのやら。
[そう呟くと、左右をきょろきょろと見渡し、ひとまず中央方向へ歩き出した。]
まあ、常日頃から色んなモノ見てるから。
とはいえ、一応これでも精神的にはきっついんですよ?
ここまで大規模な現象なんてのは、産まれてから見たことないし。
こっから先のことを考えると憂鬱だしね。
これはまだ序章なんでしょ?これから始まる物語の。
『……はい』
本を斜め読みした感じでもあんまり明るい未来は待って無さそうだしなあ。
少しでも関わっている人が少なければいいんだけどね。
[そんなこんな。
微妙に盛り上がっているのか、そうでないのか図りしねる会話を続けて、桜の元へと戻ってきた]
───桜の根元───
えっ?
[幼馴染の不意の質問、はじめ意味がわからなかった]
大丈夫って?千恵ちゃんのことは心配だよ。
[走りながら普通に返答を返して、改めて気づく]
私…普通に走れてる?
[千恵のことで夢中で気づいていなかったこと、幼馴染の疑問に答えられる答えはなく。]
火事場の馬鹿力ってやつかな?千恵ちゃん守らなきゃって夢中で。
―礼斗宅―
……物分かりの悪い奴だな、ったく。
[軽く舌打ちし、呆れたような目を向けた。
無理もないと思うが]
お前さっき自分で言ってただろうが。
『司』って。
伝承からすれば、少々特殊なケースじゃあるが。
[あっさりと口にする]
―礼斗宅―
『司』
目覚める。
桜花が呼ばれたように。
[小さく呟いたのは独り言のよに]
…でも、変。
[らしくないという意味で。
今度は首元を寛げる史人にむけて呟いた]
─自宅─
…………。
[告げられた言葉は、先の呟きから、意識の隅では考慮していた事。
では、あったが]
『司』。
史さんが、ねぇ……。
[あっさりと言われ、思わず棒読みに近い物言いになったのは、ご愛嬌。かも知れない]
特殊ケース……龍先輩とは、違うのか?
[写真立ての中で笑う、アッシュグレイの髪の厳つい男にちらりと目をやり。
それから、改めて昔馴染みを見て、問う]
そうじゃなくて。
[最初の言葉には否定を。
続く疑問に肯定の頷きをする]
前までは少し走っただけでも息切らしてただろ。
[訊ねても幼馴染も分からないらしく、返る言葉も精神論的なもの]
……でも火事場の馬鹿力って長続きしねぇんじゃねぇ?
ともかく、きつくなったら言えよ。
[疑問がまたついて出るが、気遣う言葉も向けておいた]
―住宅街・路地―
[暗い段ボールの影に隠れて、とてもとても困っていた。
瑞穂の家を抜け出して、いとこを捜しに出かけたものの、さっぱり行方はわからない。
勝手知ったる街の中、迷子になることはないけれど。
何処まで行けば会えるかな、と、気がついたら、繁華街からはだいぶ離れた所にいた。]
う、ぅ、ぱぱ、まま、かやにいちゃ…みずね
[と、小さく泣き言を呟きかけて、ばっと両手で口を押さえる。
すぐ側で人の気配がした。]
………。
[こつ、こつ、靴の音。
たぶんさっき、ぶつかった人が、自分を探してうろついている。]
[何故、は、分からない。
何故かくれるのかも分からない。
ただ本能的に、『見つかってはいけない』と何かが警告していた。]
うん、そうだけど…
[幼馴染の質問には曖昧な返答しか返すことができず]
わかんない、私も何か起きてるのかな……?
[不安げな視線を伽矢に向けるが足は止めず]
うん、でも今は千恵ちゃんのこと、急がないと。
[すぐにその視線は前へ向けられた。千恵がすぐに見つかることを祈って]
[とはいえこのままではやっぱりいつかは見つかるわけで。というのは小さい頭でも簡単に理解できた。
本を置き、きょろと辺りを見回して、手が届くところにあった、小石を拾う。
ちらり、段ボールの影から様子を伺う。
真っ赤な靴が、近くに見えた。]
[足を見ると、どっちを向いているかが分かる。
足が向こうがわを向いたその時に、小石を思いっきり遠くに投げた。]
「そこかぁ〜ぃ?千恵ちゃあん」
[声にびくっとする。誰だか分かった、飴玉のおじさん。
おじさんは小石が転がった方に向かって走って行く。
その隙に、わたわた本を抱えて全速力で反対へと逃げた。
うさぎも全力でひょこひょこしている]
―礼斗宅―
お前ら失礼だろ。
……って言いたいとこだが、正直俺もそう思う。
コイツ物凄い使い辛そうだし。
[襟元を掴んで溜息]
あぁ、色々と制約があってな。
元々素質のない血を、無理矢理司にしようと色々無茶やった代償らしい。
力自体は薄れてんのに、負の部分はしっかり残ってやがる。
戻ったら恐らく、今のことも曖昧にしか覚えてないだろうさ。
[頭を指先で示した]
― 住宅地・地蔵堂 ―
ひっ!
[目を向けた先には、倒れている男女。
男の身体には刃物が突き立ち、
仰向けの女の胸からはどくどくと血が流れていた。
周囲に襲い掛かる者がいないか確認し、そっと男女に近づく]
うぇっ……
[見なければ良かった。私は激しく後悔する。
男の口には、女のものと思しき心臓が咥えられていた。
私はその場を離れたくて、後先考えず傍の路地に足を踏み入れた]
―礼斗宅―
……まぁ、それを踏まえてだ。
少しばかり協力して頂きたいんだが。
「あやみん」とやら。
[常と少し違うイントネーションで、昔馴染みを呼んだ]
―礼斗宅―
…史兄さんであって史兄さんじゃない、のかな。
よく分からないけど。
何て呼べばいいの。司っていうのは総称でしょう。
[言いながら窓に近寄る。
外を見下ろすと、水銀灯の真下に倒れている姿]
あっ。
[遠目にもカチューシャが光を弾く。
窓ガラスに手を突いた。
交代してくれて今も店にいるはずの少女はピクリとも動かず]
さくら…。
[桜色の霞に包まれ、唐突に消えた]
…あいつらと同じ現象が起きてるなら、オレはこの場に居ないだろうけどな。
それとは違うってのだけは確かなんじゃね?
[こちらも曖昧だが、悪いものではなさそうだ、と言う旨を伝える。
続く言葉には頷いて、先を急いだ]
[以前従妹に連れられてきた場所。
子猫が居るはずのそこに、従妹も、子猫達も居なかった]
…子猫すら居ない、な。
一度ここに来て連れてったのか、それとも全く別のところに向ってるのか…。
その場合、子猫達が居ないのが気になるけど。
……仕方ない、一旦表通りに戻ろう。
子猫達には悪いが、千恵の方が優先だ。
[焦りが出始めたのか、その場から直ぐに移動し始める]
[そうして、とりあえず中央公園まで戻ってきたのだが、]
…………おい、神楽。何でお前らここにいるんだよ。
[桜の樹の下。そこにいた二人にはぁと頭を抱える。]
お前らには、俺を見失った奴らがここに戻ってくるっていう発想はないのか?
─自宅─
[なされた説明。
ふむ、と言いつつ腕を組んで思案顔]
……龍先輩は、元々、『そうなる素質』を魂に刻まれていた……とか言ってたが。
そういうケースもあるんだな。
……まあ、『他者に引き継がせる』術もあるらしいし。
[呟きと共に、やや、陰る瞳。
だが、それは刹那の事。
ふるり、と首を横に振って]
……協力?
『司』の役目、とやらに関わる事か?
……まあ、俺に出来る事なら。
[いつもと違う呼ばれ方に、やや、調子を狂わせるものの。
拒絶する理由は思いつかず、素直に頷いた]
もっとも、俺はあくまで非力な一般人。
……限界もあるからな。
[予防線は、それなりに張っておいたが]
― 住宅街・路地 ―
『そこかぁ〜ぃ?千恵ちゃあん』
……千恵?
[そこそこ歳のいった男の声。
私はそっと声のする方に近寄った。
どなたかお探し?
そう声をかけようとすると、近くの物陰からひゅんと小石がとんだ。
男は小石を追っていく。
そして、物陰から見慣れた兎が駆け出した]
(千恵ちゃんっ!)
[私は慌てて姪の後を追った]
―礼斗宅―
すーちゃん。
[残っていたコーヒーを飲み干す。
カップをテーブルに置くと、礼斗に向けて頭を下げた]
…お邪魔しました。
私はこれで。
[協力の話を背中で聞きながら玄関へと向かった。
止められなければそのまま外に、水銀灯に向かうつもりで]
[伽矢の返答に少しだけ安心できた。
先を急ぐ伽矢についていく]
誰もいないね。
[そこには子猫の姿は見えず]
伽矢くん、その変なのって襲ってきたんだよね?
それがいっぱいいるなら、千恵ちゃんどこかに逃げてるんじゃないかな?
[すぐに伽矢の後についていきながら]
千恵ちゃん街のこと詳しそうだし、路地とか多い住宅街とか。
[少し考える余裕ができたのか自分の考えを先をいく伽矢に伝える]
[かけられた言葉に気づき、雪夜に顔を向ける]
なんでと言われても、あやのっちが此処に戻りたいという話なんで、付き添いで来たの。
一人でふらつくのも不安だし。
まあ、せったんを信用しておけば、なんとかなるんじゃないかというのも此処にいる理由の一つかな?
[そう言いながらも、少しだけ安心したような顔を浮かべ]
お疲れさん。
[短く、その言葉で締めた]
―住宅街・路地―
[たたたたと、全力で逃げるも足音はどんどん近づいてくる。]
や、やぁ………!
[まさか百華とは気づかずに、逃げるが所詮子供の全力。
あるていど行った所で、すぐに追いつかれた。
じたじた、うさぎと一緒に抵抗する。]
─自宅─
……え?
[黒江から向けられた言葉。
思わず、惚けた声が上がった]
いや、呼んだのは俺みたいなものだから。
……外に出るつもりなら、誰かと行った方がいい。
それで、全く危険がなくなるってわけじゃないだろうが。
[窓の向こうに何を見たのかは知らぬけれど。
念のため、こう声はかけておいた。
……もっとも、誰かといても、完全に危険を避けられるものではないのは、わかっているのだが]
…沢山居るのかはわかんねぇ。
オレが見たのは、一匹だけだった。
[実際に見たのは確かに一匹。
けれどそれを喰らったのも居るため、複数は居るのだろう]
……そうだな、逃げてるかも、知れねぇ。
そっちの方行ってみるか。
後は……まともなのが居れば、見たかどうかも聞けるんだけど。
[居るだろうか、と呟く。
足早に路地を抜け、繁華街の通りに出て。
一旦中継地である中央広場へと足を踏み入れた]
─ →中央広場─
[シンボルツリーである桜の周囲に出来ていた人集りはもはや皆無に等しく。
疎らに人が見えるだけ。
その見える人もまともかどうかの判別をするには時間を要するか]
…瑞穂、あの人らに聞いてみねぇか?
千恵がどっか行ったなら、ここを通ってるはずだし。
[示したのは桜の樹の傍に立つ男女三名。
幸か不幸か、どれも見知った顔ではあった]
好きにすりゃぁいい。
改めて呼ばれるような名もないしな。
[窓の外を見る瑶子を止めるでもなく]
なぁに、別に大したことじゃない。
少し確かめたいことがあるだけだ。
[同時、揶揄ではなく、周囲が少し冷えた]
[神楽の言葉に、はぁぁぁっと大きな溜め息が漏れる。]
………………まったく。ほんとあんた何考えてるんだか。
……って、おい神楽。何だよその理由。バッカジャネーノ。
[そう言いつつ、ついと顔を背ける。短く掛けられた声には、]
…………ああ。
[顔を背けたまま、こちらも短くそう返した。]
―住宅街・路地―
千恵ちゃんっ!
[暴れる姪を抱きしめた。
公園で何かに怯えていた時より、もっと彼女は怯えている。
私には、そう見えた]
大丈夫、ももおばちゃんだよ。
怖くないよ。
[壁にぴったりと背中をつけ、周囲に気を配った。
今の所、こちらに向かってくる気配はなさそうだ]
─自宅─
……確かめたい……こと?
[史人から向けられる言葉。
やや、冷えた空気。
目を細めつつ、それでも動きはしない。
むしろ、何をなそうとしているのか。
それを、見極めよう、という意思がそこにはあった]
―礼斗宅―
…混乱するから、史兄さんのままにしておく。
[礼斗に話す史人から冷気を感じた。
氷、とは声に出さず唇だけ動かして]
誰かと言われても、特に親しい人がいるわけでもないので。
とりあえず下の水銀灯まで行ってきます。
[もしかしたら話だけでは済まないのだろう。
そんな気配を史人から感じていたから、もう一度頭を下げると玄関から外へ出て、小走りに非常階段へと向かった。
カンカンカンという音が響く]
―住宅街・路地―
ふぇ?
も、ももおばちゃ……!
[怯えた表情から一転、ぱああと一瞬、日の差すような笑顔になり、百華にがしっとしがみついた。]
おば、おばちゃ……ちえこわかったよ……!
みずねえちゃの家にいたけど、かやにいちゃが帰ってこなくて、さがしにでたら、飴のおじちゃに追いかけられて……
[ここまでの経緯を言うと、再び怯えに襲われたか、かたかたと震えはじめた。
うさぎもいっしょに震えている。]
さっきまで結構人がいたはずなのにまったく見ないの。
[疑問に思っていたことを口にする]
たくさんは、考えたくないけど…。
とりあえず行って見よう。
[中央広場に向かいながら]
まともなの…?
[伽矢の言葉にさきほどの変なのというのが何を指すのか、なんとなくの思うところがあった。
中央広場につき人の姿を見つけると警戒した様子を見せる伽矢。
思っていたことは確信に変わる。それは人の姿をしてるんだってことが]
うん、あれは…静音さんっ!
[見知った顔の中で一番親しい人の名前を呼んだ。
そちらの方に駆け寄っていく。]
まあまあ、無事に再会できたんだから、とりあえず喜んでおこうよ。
お互い、特にひどいことにもならなかったようだしさ。
[そう言いながら、雪夜が顔をそむけるとニヤけた顔で見つめた]
あら。何、せったん。ツンデレ?
可愛いところあるじゃん。うりうり。
『……』
[そんな様子を見る綾野はやっぱりこのノリについていけないようで、沈黙を守ったまま微妙な表情で2人を見つめていた]
……だろうな。
[人が居ないと言う言葉に、理解しているような風に言う。
オレは喰われた人も見ている。
喰ったモノも見ている。
あれが蔓延しているとしたら、人が減るのは道理だった]
巫女と、あん時の兄ちゃんと……例のおばさんか。
[見たところ、遭遇したやつのような気配は感じられない。
大丈夫そうだ、と駆け寄って行く幼馴染の後を追った]
ほよ?
[自身の名前が呼ばれ、振り返ってみると、そこにはこちらに駆け寄ってくる瑞穂の姿]
おや。みずちー。やっほー。元気?
[なんだか手を振って、まるでいつもと同じ日常であるかのような挨拶をした。
そして、近くにいる伽矢も確認して、微笑む]
良かった。2人とも無事なようだね。
あんま変なところ行くと危ないことになりそうだから、探検も程ほどにしておいたほうがいいよ?
……それどころじゃねぇ。
オレの従妹がどっか行っちまった。
ここを通ってるはずなんだけど、見てねぇか?
[軽薄な態度の巫女に軽く睨みを向けながら、オレは焦りを浮き彫りにしながら言う]
―住宅街マンション前―
[辿り着いた水銀灯の下には何も残っていなかった。
いや、数枚の桜の花弁だけが残されていた]
おやすみ、でいいのかな。
[花弁を拾いながら呟いた。
そのうちに誰かを探すような男の声が聞こえてきた]
―礼斗宅―
あぁ。
……『唯一の生還者』が、本当に人間のままで生き延びたのかどうかをな。
[一歩近付き、礼斗の頬に手を伸ばした]
だから、……避けんなよ?
[にやりと笑み。
掌から、細い棘が伸びる]
…………ああ、まあ。たしかに、な。
[神楽の言葉に、そう言って振り向こうとし。
だが、続いての神楽の言葉に大きく目を見開く。]
…………はぁ!? ツンデレっておまっ。
……ああもう、やめろ。やめろって言ってるだろうが。
[ウリウリしてくる神楽を鬱陶しそうに払う。]
…………あ?
[とその時、神楽を呼ぶ声が聞こえて、目を向け、目を細めてそちらを見る。
片方は見知った顔。]
…………ああ、お前か。
[後ろから聞こえてくる幼馴染の足音を聞きながら]
なんとか、それより静音さん何か知りませんか?
[その口ぶりから周囲の異変には気づいていることは察することができた]
千恵ちゃんがいなくなって、探してるんです。
なんだか街の様子もおかしいみたいですし。
[軽く睨み付ける伽矢をたしなめる余裕も今はなく、
幼馴染に同じく焦っている様子を明らかにしながら話しかける]
[伽矢の言葉に、眉根を寄せて考えた]
うーーーーーーーーん。
私達も、憑魔に襲われて逃げ回っていて、やっとさっき此処に戻ってきたばっかりだからねえ。
ちょっと見かけなかったかな。
力になれなくてごめんね。
[すまなそうに謝りながらも、片目を閉じて、少し周りを見渡す]
ん。でも、最悪な結果にだけはなってないよ。見えないし。
それだけは断言できるよ。
─自宅─
[下の水銀灯まで、という黒江。
そのくらいなら大丈夫か、と思った所に、かけられる声]
……人間のままで……って。
一応、そのつもりではあるが。
[呼び込みやすくなっているから、気をつけろ、と。
それは、既に亡き『司』からの警告]
……は?
避けんな、って……。
[言いかけた言葉は、伸びる棘に遮られる。
言われるまでもなくというべきか、動きは、止まった]
―住宅街・路地―
うん、怖かったか。もう怖くないよ。うん、怖くない……
[嬉しそうに飛びついてくる姪。
私を襲った男、先程倒れていた男女を見る限り、
『もう怖くない』は気休めでしかないのだけれど。
背をさすりながら、彼女の話を聞く]
瑞穂ちゃんち? 伽矢が帰って来なくて、探したの?
[途切れ途切れに伝わる要素をまとめてみると、
子供達は一度自宅の方に行った事、伽矢とはぐれた事がぼんやりとわかった]
うん、大丈夫。
……瑞穂ちゃんも伽矢も、千恵ちゃんの事探してる。
いったん瑞穂ちゃんちの方、戻ろうか。
[住宅街から繁華街の自宅まで移動するのに不安はあったが、
息子達とすれ違うのが怖かった]
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