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─ビジネス街・ビルの屋上─
[周囲の空気を細かく震わせる。
その震わせる速度を速めたり遅めたりしながら、オレは調整を取って行った]
………あまり遠すぎるのは無理、だな。
人が居そうなのは……中央広場か。
[はっきりした声や音は掴むことが出来なかった。
かろうじて捉えたのは、人が動く時に空気を震わせる、物理的なもの。
翠の瞳は、先程立ち去った中央広場へと向いた]
…近くまで行って様子見るか。
[再びオレは足元で圧縮した空気を破裂させる。
宙を翔け、中央広場傍の高めの建物の上へと降り立った]
─ →ビジネス街・中央広場傍─
それから、囮になんてしないわよ。
手を組むってのはそのまま、後ろを預けるに近いまでをお願いするの。
……もしも、あなたが憑魔ならば、他の全員がいなくなってから改めて勝負しましょう?
[返されたのは苦笑]
そうですね、悪い方向に突き進まなければいいんですけど。
[神楽の方に視線を向けてから]
礼斗さんは、憑魔に滅んでほしいですか?
[その質問の仕方は少し司らしからぬものだったかもしれない。
礼斗の過去も、憑魔に詳しい理由も何も知らない。
そんな中、浮かんだふとした疑問]
はん。
んなこと言われてもねぇ。
憑魔はお前が全て浄化するんじゃなかったのか。
[どちらかを見ていれば、などと言われれば鼻を鳴らす]
……そうかい。
[瑶子の名前が出され、内側に揺れる気配。
軽く息を吐いた]
……あぁ。
あの女のガキはよく知らねぇが。
礼斗緋文を殺したのは、男のガキの方だった。
……ああ。
心配なのは、そこだな。
[悪い方に、という言葉に、思いっきり、同意した。
何気に酷い]
……そう、だな……。
[それから、投げかけられた疑問に、軽く目を伏せて]
これ以上の惨劇は、見たくはない、ってのが、俺の本音。
そして、神楽や史さんには、死んで欲しくない。
……これで、答えに、なるか?
[自分は『憑魔』──伽矢の事を何も知らない。
ただ一度、ぶつかっただけで何故、あれほどに憎まれていたのかもわかってはいない。
だから、それを願う事に躊躇いはなかった]
おしごと?そっかぁ……じゃぁ、しょうがないね。
[言われると納得したというように、微笑んで見上げる。
百華の表情の変化は、不思議そうにきょとと見上げるだけ。
胸中を窺い知る事が出来るはずもなく。
途中で足が止まったので、自分も一緒に足を止める。
何やら考えている伯母をじっと見つめて。]
ももおばちゃ?
[くいくいと、繋いだ手を引いて呼んだ。
じーっと、伽矢と同じ色の大きな瞳が百華を覗き込んだ。]
─ビジネス街・中央広場傍の建物─
[屋上から中央広場を見下ろす。
桜から離れた場所に、二つの人影を見つけた]
……眼鏡の野郎と巫女か。
一人だったら隙をついて喰ってやるんだが。
[短い舌打ちが漏れた。
彼らの会話までは耳に届いていない。
先程の方法は慣れないのもあって、酷く体力を使う。
ここでチカラを使いすぎるのは抑えておきたかった]
そう…ですよね。
[俯き]
私は、自分がよくわかりません。
憑魔は浄化しないといけない、これ以上の惨劇を起こしてはいけない。
伽矢くんに、これ以上手を血で染めてほしくない。
でも…、伽矢くんに死んでほしくもない。
千恵ちゃんと伽矢くんに生きて幸せになってほしいって。
[再度顔をあげると微笑みかけて]
すみません、こんな話してしまって。
[さきほどたくさん流したはずなのにやっぱり涙がこぼれる]
浄化はともかく、判断には困るってことよ。
私だって、無駄に人を殺して確かめたいわけじゃないわよ。
[そう言い返した後に、聞こえる答えには]
充分すぎる判断材料ね。
憑魔に殺された。
伽矢に殺された。
=に近いなら、伽矢を憑魔だと仮定するにはおかしくない。
後は、他の人が納得してくれればいいんですけどね。邪魔が入るようならば、多少厳しいかな。
ん、ごめんね。
ぼーっとしてたみたい。
[手を何度か引っ張られ、ようやく姪の視線に気付いた。
あぁ。この子もそっくり。
……夫の瞳も翠色だった。私は無意識に、唇を舐めた。
再び歩き出してしばらくすると、公園の入り口がかすかに見えた]
[そこまで語り、彼女は初めて]
……ふ!
[司として、人を殺すための能力を発動させた。
先程まで、史人に突きつけていた扇子が、まるで真剣であるかのような迫力をまとわせる。
身体能力も、普段とは比べ物にならないほど高くなっているであろう。
それでも、人を、もしかしたら、司までも食らって力をつけている憑魔に肉薄できるのかは、厳しいであろうことは予想できる事態ではあったが]
─ビジネス街・中央広場傍の建物─
[反対側の通りに視線を向けると、その先からも二つの人影が見えた。
大小ひとつずつの姿。
母親と居たのか、と胸中で思いながら、オレは建物の上から路地裏へと飛び降りる。
足元で弾ける圧縮された空気。
それにより落下速度を減じて危なげなく地面へと降り立った。
そうして、路地から通りへと出て中央広場へ向い歩いて行く]
(この場で襲うのは得策じゃない、か…?
速度を上げて連れ去ればあるいは……。
いや、それも限度があるか)
[声には出さず思案しながら、中央広場へと入って行った]
―中央公園―
[唇を舐める仕草を気に留める事もなく、中央公園に入ると、桜の木の下に人の姿を見かけた。
手を繋いでいるので走り出すことは出来なかったが。]
かぐねえちゃと………ええと、ふみにいちゃ?
[遠いのとあまり会った事がないので識別がきちんと出来ないまま、遠くに居る二人に手を振った。]
[俯きながら語られる言葉。
良く似たものを、以前、聞いた]
……前に、『司』から、同じようなグチを聞かされたな。
『憑魔』になった恋人を止めたい、けれど、なくしたくない、って。
[ぽつり、呟く]
大事なものに生きて欲しいって願うのは、普通だよ。
俺だって、そう思ったから……二人の盾になろうと思ったんだし。
[言いつつ、視線は当の二人へ]
……でも。
辛い、な。
[何が、とは。
敢えて、言葉にはせずに]
……直接あのガキを確かめたわけじゃねぇから、なんとも言えねぇけど。
あいつが言うにゃ「襲われたから殺した」らしいが。
お前の言うことを信じるなら、そういうことになるか。
[女の気配が変わる。
ふ、と息を吐いた]
無茶すんなよ。
さて。
ちょっと誇張したことを叫ばさせて貰うよ。
もし、違って、私が死んだら、勝手にやったということにしておいてね。
[史人に小さくそう語りかけ、すっと息を吸う]
伽矢が最後の憑魔だーーーーーーーーーーーー!!!!
彼を還せば、結界は取り除かれるぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!
[と、叫び、小さく笑んだ]
……なーんてね。
……て、ちょ。
[聞こえた叫び。
目を、見張る]
……無茶する……。
[呟く声に混じるのは、やはり。
呆れの響きだった]
[もしも、史人が憑魔ならどうするべきか。
もしも、千恵が憑魔ならどうするべきか。
もしも、百華が憑魔ならどうするべきか。
今はそのようなことを考える必要はない。
可能性が高い、というものを滅せないことに何の意味があるというのか]
[きょと。足を止め、目を瞬かせた。]
?
[唐突な言葉に、不思議そうに神楽をじっと見つめていた。
うさぎは、いつだって物言わぬまま、ただみつめる。]
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