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[クレメンスの動きを感じて、首を巡らせる。
あぁ、置いていかないで。
でもここからも離れたくない。
動けない。
わからない…!!]
[彼女は剣を振う事を、避ける事を選ばず、盾を翳す。
しかし力を有した盾なれども、本性を表した竜の火炎を完全に遮断する事など、出来る筈もなく。灼けつく炎は、鎧を纏った彼女の身を焦がす]
あなたが心から望めばいいの。
壊れてほしくない、というその気持ちを。
ちゃんと受け止めて、素直にその力を受け入れて。
そうすれば力のありかたはおのずとわかるよ。
[そこから先は竜の領域。
オトフリートの方をチラリと見る]
フィロメーラ!
[わずかなゆがみを持った精に、
火の竜の炎が襲い掛かる。
思わず名を呼んだのは――
かの精が望むは、本当は自らも望んでいたからかもしれないからか。
かの精と自分が、似た存在であると思っていたがゆえか。]
[命竜の子の声は届いたのか?やはり、その心の動いた様子はなく、ただ、内に溜め込んだ大きな力が膨れ上がっていく気配だけが、その場に広がる]
[刃は砕け]
邪魔を
するな…!
[叫びは咆哮に変わり
少年の姿は白い狼に変わり]
[アマンダの頭上を軽々と飛び越える。]
[その一瞬、ユリアンを睨み付け]
[こどもを取り巻く風は、フィロメーラにまでは届きません。眼の前で、もうひとりの自分とも云える存在が火の中に包まれてゆくのが見えました。]
……フィロメーラ!?
[ふつり、なにかが弾けるような感じがありました。]
[混乱しているイレーネの様子に、ぽんぽん、となだめるように頭を撫でて]
……一緒にいるだけが、つながりじゃない。
……俺は、虚を追い出される時に、『魂の父』に、こう言われたよ。
あああ、フィロメーラ!!
やめてやめて!
壊れ、ないで…!!
[ブリジットの言葉は耳に届いていたけれど。
冷静に、望む事など今の彼女には出来るわけもなく、ただ恐怖に叫ぶ。
クレメンスの気配、オトフリートやブリジットの言葉、そして燃えるフィロメーラ。
どんどん取り乱す。]
本当に、馬鹿だよ、フィロメーラ。
君は。
[火の舌が焼いたかの精に、苗床は呟くように言う。]
……過ぎた願いは身を滅ぼすというに。
[少年の姿が白き狼へと変わる。真冬のような輝く真白]
…っ、ミハエル!
[頭上を越える白き狼。向かうは少女。
跳躍では間に合わぬと、身体をしならせ長い尾を振り払う]
[氷の精が飛び掛るを見るも、
その風の力が強きを知るからか]
書を、渡すんだ、ベアトリーチェ。
封をしなければなるまいよ。
それがなければ、君のフィロメーラは、こうならなかったのだから。
[それだけの大声をあげたのは、初めてのことでした。頭の中は、まっ白でした。護りの風からも抜け出て、書の力も指環の力も使うのを忘れて、炎の収まらないその中に――フィロメーラのもとへと、駈けだします。]
「…」
[ただ一言、光の中から、呟きが漏れる。それは、古の魔法。失われし古代魔法のうち、もっとも聖なるただ一つの言霊]
[全ての障害を除くための…………]
[火の中にかけこむかの女を、
追うかは悩む必要はなかった。
かれはただ願う。
苗床は、強く願う。
書を、鍵を、
この手に入れることだけを。]
ベアトリーチェ、行くな!
危ない!
[風の守りより抜け出た少女に慌てて
旋風で絡めとろうとも、すんでのところで間に合わず]
壊れたものは、治すこともできる!
だから、自らを失するな!
[取り乱すイレーネに向けて、やや、厳しい言葉を投げて]
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