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[エーファのその率直な問いに、老婆はしばし目を丸くしていたが、やがて大きく、口に手を当てて笑い出した]
ほっほっほ……。
もしも、私が人狼ならば、このようなこと言いますものか。
そんなこと言い出す前に、貴方をペロリと食べてしまえばよいだけですよ。
それに、エーファちゃんの安否を気にする必要すらありませんから。
[言葉の最後にもう一度微笑み]
大丈夫。私は人狼じゃないですよ。
それでも、私が怖いようならば、他の人に退治してもらいましょうか?ふふ。
[そこまで言うと、ヨハナはよっこいせと立ち上がり、エーファへと手を差し伸べて言った]
それよりも、そろそろお腹空いてきたでしょう?
きっと、下のほうへ行けば、何か食べるものがあるでしょうから、そちらのほうへ移動しましょうか?
[窓を開き、テーブルに置いておいた箱を手に取る。
不快感の残滓を煙と共に外に吐き出す]
ん?
[風に乗って届く音の欠片。
次第に旋律になってゆくそれに耳を傾ける]
誰が弾いてんのかね。
随分と達者なものだ。
うん、なんだか、無理やり連れて来られてた。その…エーファちゃん。
慣れ…かぁ。うん、きっとすてきなお嫁さんになれるね、ゲルダは!
[そこへ、二階から男の人が降りて来た。]
あ、薬師さんなら、まだおやすみじゃないかなぁ。
わ、顔が真っ青ですよ、大丈夫?
─ 一階・厨房─
[ふらりと揺らめくような動きで厨房の扉を開け]
[物音に視線を向けると金の髪が目に入る]
…ウェン君?
何か作ってるのか?
[未だ肌を蒼白にした状態で声をかけた]
そうね。少なくてもスープなら温まるし。
落ち着くと思うから。
[部屋の場所を知らないゆえに、頼むよう頭を下げた]
ピアノの音?
誰が引いてるのかしらね。
[この場所で弾けそうな人間は酷く限られていたが。
馴染みのある声に振り向き、二度瞬く。
普段ならば見れぬ程、顔色が悪いようで]
ゼルギウスはまだ広間には来ていないと思う。
…大丈夫?
人狼じゃ、ない。
[子供は、その言葉を疑いはせず。ただ、僅かに落胆したように肩を落とした]
怖くは、ない。
[人狼ではないなら、という意味なのか、そうであってもという意味なのかは、やはり定かでない言い方で、その言葉を証明するかのように、窓の傍からヨハナの方へと歩み寄った]
おなかは、空いた。
[ベアトリーチェに心配されて力のない愛想笑いを浮かべる]
ああ、あんまり大丈夫じゃねえな。
すまないが、水を一杯持ってきてくれないか。ええと……
[イヴァンは未だ顔見知り以外の名前を知らない]
[イヴァンの姿もここからは見えず、ゼルギウスがやって来たのは広間側とは別の入り口からだったのは、不運と言うべきか]
え。
[叫びはしなかったものの、一瞬固まった]
……おはようございます、ゼルギウスさん。
作ったのは、私じゃなくてゲルダですよ。
それより大丈夫ですか、
[気を取り直して切り出した会話は、ベアトリーチェの大声に遮られた]
はい。
それじゃ、行きましょうか。
……足元に気をつけるんですよ。
なんといっても、昨日は寝たきりだったのですから。
[老婆は優しくエーファの手を引いて、階下へと降りていった]
―2階の部屋→1階 厨房―
おはようございます。
何か、いただけるものはございますか?
[只事ではない様子に、訳のわからぬままにカップに水を汲み取り]
調子が優れないようでしたら、広間で座っていて下さい。
……とも言っていられないでしょうか。
[ゼルギウスに声をかけ、広間に赴く]
ウェンデルさーん!
[厨房に駆け込んだわたしは、そこに目指す薬師さんが、さっきの男の人(そういえば名前を知らない…)と同じ顔色でいるのを見つけて。]
あ、薬師さん!助けてくだ…さ…?
うわぁー…。
[どうすればいいか分からなくて固まった。]
[灰を落とすこと数度。右手の中身を潰すと窓を閉めて]
行くか。
[部屋を出て階段を下りる。
広間には複数の人の気配があった。
何となく避け、二階で聞いた音を追いかけた]
―二階→一階物置―
―広間―
[少なめの食事は、終わるのも早い。
食器を揃え、口許を拭う]
今はヨハナ様が傍にいらっしゃるとか。
それなら、これからは酷い事にはならないと思う。
[名前の呼び捨てを気にした様子は無いが。
すてきなお嫁さん。
子供らしい物言いに、無表情のまま、沈黙が暫し]
…料理だけじゃ、貰い手は多分出ない。
[駆け込んで来たベアトリーチェはすんでのところで避け、]
ああ、ええと。
ベアトリーチェさんはこちらをお願いします。
[端的に指示を出して、広間へ。
辿り着いた先には、イヴァンの姿があり]
……イヴァンさん?
二日酔いじゃあ、ありませんよね。
[つい確認したのは、恐らく幼い頃の恨みの所為]
ん、おはよ。
そっか、ゲルダちゃんか。
なら味の保証は確かだね。
[いつもの笑みを浮かべようとして、逆に弱々しいものが浮かんだ]
[未だ精神の安定が取れていないのだろう]
[ウェンデルに返しながら流しへと向かい、グラスに水を注ぐ]
[薬箱から安定剤を取り出すと、グラスの水で流し込んだ]
…っは…。
ん、何か言った…。
[遮られた言葉を聞き返そうとして]
[聞こえた「倒れそう」との言葉に声のする方に視線を向けた]
…どうも、仕事みたいだな。
俺のはその内戻るから、大丈夫。
[再びウェンデルへと視線を向け、浮かべた笑みはいつものものに少し戻っていた]
平気、今行くよ。
[固まってしまったベアトリーチェに苦笑を漏らし]
[すれ違いざまにその頭にぽんと軽く手を乗せて直ぐ離して]
[幾分しっかりとした足取りで広間へと歩を進めた]
[ヨハナの後について、ゆっくりと、自分の足で階段を降りる。見知らぬ顔ばかりの人々の前に立つと、頭も下げずに、子供は、じっとその一人一人の顔を見つめた]
え、ここをって、えー…
ゼルギウスさん、大丈夫です?が、頑張ってー
[わたしは、自分でも見当違いかなぁ、と思う努力を*続けた*。]
[イヴァンが言葉に詰まる様子を翠玉が眺めた]
あの子の名前、ベアトリーチェ。
私も詳しくは知らないけど。
[駆け出した少女の背を眼差しが追って]
あれを見るに、良い子。
─ 一階・物置─
[扉の向こうの気配には気づくことなく。
旋律に乗せるのは、虚ろな物思い。
それは、思わぬ形での『過去』との遭遇によるものか。
自身にも、推し量る事は叶わぬけれど]
……こうやって、呑気に過ごせる時間。
それを求めることも、許されんのかね、俺は……。
[旋律に紛れ。
零れ落ちたのは、小さな呟き]
─広間─
何だ、倒れそうってイヴァンなのか?
怪我以外で俺の世話になるってのも珍しいな。
何がどうなってる?
[イヴァンが座るソファーの前にしゃがみ込んで]
[症状を伝えるように促した]
うん?
[言葉の内容までは聞こえなかった。
ただもう聞きなれてしまった声と、続いた小さな猫の声に弾き手が誰であるのかに気付く]
へえ、弾けたんだ。
[旋律の流れを見計らって、軽くノック。
そのまま応えは待たずに扉を開けた]
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