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─廃墟・屋上─
[ふわ、と気流を操り舞い降りる。
その様子だけを見たなら、翼を持ったその姿は通り名──天使そのものと見えるやも知れず]
……さて、と。
騒がしいのは、どの辺り、かな。
[もっとも、当人は天使、という言葉とはかけ離れた軽い調子で言いつつ、周囲を見回していたりするのだが]
―川辺にて―
へぇ、思ったより綺麗な川だね、こりゃ。
[清流、とまでは行かないもののそれなりに水は綺麗で。
男はぱーっと服を脱ぎ捨てて川に飛び込む。
一応下は履いてます]
っあー、いい感じだねぇ。そう深くもないし。
[ばしゃばしゃと顔を洗って、ついでに頭からも水を被ってぷるぷると首を振る。犬の水浴びのようである]
さぁて、っと…これで魚がいれば最高なんだがねぇ。
[そう言うなり水中に身を沈める]
………っ、と。
[水中から顔を出して岸に向かって手を振って。手を離れて飛ぶのは銀鱗のきらめき。
それが落ちた岸には既に何尾かの川魚]
とりあえずこんなもんかねぇ。食える魚かは知らんけど、毒がなきゃ問題ないだろ。
[岸に上がって服を着る。下が濡れたままだが気にしない。
袋から紐を取り出し、魚の尾に括り付けて一つに纏めていく]
さぁて、向こうに戻るかね。
ここで焼いて食ってもいいけど、一人で食うのも悪いしな。
[袋と魚を担いで廃墟へと戻っていく]
…そうか。
[なにやら姿がぶれ始めた小猿に呟く]
ま、準備が整ったら言ってくれ。
女相手に力任せの一撃を喰らわせるのは気がひけるが…
闘いでそう言っちゃあ、相手に失礼だわな。
ふむふむ。ドーナツがお好みなのですかね?
[他にもないものはあるというか、ないものだらけだろうに。ドーナツに拘る様子に疑問を抱くように聞き]
ええ。後は『デス』と…今は『スター』の持ち主でもあるクローディアさんですねぇ〜。
[女性について、もう一人名をあげ、肩越しに振り返るリディアをみて]
ですよねぇ〜。私はちょっと見にいってみようかと思いますが、リディアさんはどういたしますか〜?
[かつり、と。普段は鳴らない靴音が高く響く]
…聞いてはいたけど、確かに。
[朽葉色の先には白の翼。
教会に属する以上、その通り名と同意のものを幾度か聞いた]
[教会の人間は『雷鳴天使』を快くは思っていなかったのだが]
『天使』を冠するのも納得かもな。
[隠しもしない独り言は相手へと容易く届くだろう]
……?
[壊れかけているタンスの中身を漁っていると、見つけたのは丸まったポスターが一つ。
タンスが壊れているのに傷一つついていないのは珍しいと思い、それを広げてみた]
……ほう。
[なんか妙にセクシーなポーズを取ったお姉ちゃんが写っておりました。
思わず、顎に手を当ててじっくりと眺めた]
……。
[そして、それを持ったまま他の部屋に入り、入った瞬間に目が入るような場所にでかでかと張っておいた。
それは古来からの簡単なトラップの一つ。
「男はエロいものを見かけると、つい目がいってしまう」というものである。
そうでなくとも、部屋に誰かがいると思ったのならば、少しは動きが止まるという意味でも、それなりの効果は期待できるだろう]
……。
[張り終えると、男はぷかあと煙を吐き出して、また新しい場所の調査を始める]
―廃墟街―
彼女の言っていたとおり、…本当に広いな。
[森を出て歩くことしばし。
困り顔で辺りを見回す]
拠点が作れるのなら、それに越したことはないが。
[数多くのビルや住居、店舗から、より良いものを見つけるために四苦八苦]
―廃墟―
[廃墟まで戻って異様な気配に気付く。
とてもよく馴染んだ気配]
んー?今日はもう動きはねぇと思ったんだけどなぁ?
[首を傾げて気配の元を探る]
とりあえず様子見ておくに越したことはねぇわな。
巻き込まれても面白くねぇし。
[いつもの緊張感のない口調で呟いて場所を移動する。
いつもと変わらぬへらりとした笑顔のまま、風の速さで]
さすがは、『月』と言うべきか。
……それとも、不定にして可変なる『影』らしい、と言うべきかしら?
[くすくすと、笑う声が上がる。
余裕が崩れないのははったりか、それとも他に理由があるのかは、笑みからは察する事はできず。
それでも、その笑みはゆらりと揺らめく影に、す、と消える]
……そこまでしていただけて光栄、と言うべきかしら。
だからと言って、容易く落ちる気がないのは、再三申し上げている通り。
[僅かに紅を帯びた、銀の刃が上がる。
その周囲に、真紅の陽炎の如きものが、ふわりと揺らめきたった。
もう一つの気配の存在には、気づいているのか、いないのか。
否、気づいていたとしても、その意識は眼前に集中しているのだけれど]
……んん?
[耳に届いた声に、くるりと振り返る。
目に入った姿。
飴色が幾度か瞬いた]
……わー、違う意味での苦手系と遭遇したかも?
[おどけたような口調で言う。
それでも、声には棘らしきものはない]
ええと……『聖騎士』さんだっけ?
[ゆる、と首を傾げつつ、カードの伝える情報を思い返して問いを投げた。
仕種にあわせ、古びたロザリオが微かに揺れる]
ふむ。どうやらそのようで、単に争いに吸い寄せられているだけかもしれませんがね〜
[それは自分やリディアも類するし、他のものも集まるかもしれないが]
では、せっかくの機会ですしいってみましょっかね〜。
[そういって、リディアも了承するなら争いの気配がするところ…そしてそれを見物するための場所を探し移動する]
カードは使っとりゃせんよ。
言うたじゃろう、『ワシん奥の手』じゃて。
[仮面の奥でにぃと口端が持ち上がった]
そん余裕ばいつまで続くじゃろな。
こん姿ばなったワシにゃ、攻撃は効かん。
[その代わり、攻撃が出来なくなるのだが。それは口にせず、男の輪郭の揺らめきは大きくなる]
影技(かげわざ)が奥義、人影一体。
推して参る。
[その言葉と共に、男の身体は溶け、漆黒の闇の如くクローディアの眼前へと広がった]
「おっしゃ、ええどー。
目標はそん角から顔出して真っすぐん位置じゃ」
[広げた影はブラウンの射線をも塞ぐ。故にその位置を伝え、仕掛けると同時にその部分だけ、影の解除を試みる。尤も、高威力の攻撃なのであれば、影諸共突破し目標へ届くことになるだろう]
[風に乗って走り、気流に乗って少し高いところに上がる。飛べるわけではない、身軽なだけ。
辿り着いたのはそう高くない屋根の上]
っと。
なんだぁ?
[近くのビルの屋上に人影を見つけ、それが知った顔である事に少し驚いて]
今日は違うお相手かぁ?
なかなか隅に置けないねぇ。
[どうしてそういう方向に行くのかが謎である]
[棘の無い台詞の内容に朽葉色も瞬く]
…なるほど、直接文句言いに行ったのもいるのか。
[苦く笑って、それから頷いた]
間違いないですよ。
『雷鳴天使』のエリカ、だったかな?
少なくとも俺は、『天使』を特別に思ってるわけじゃないから。
[こんなナリだけど。
そう言って右手で胸元を押さえる]
[ロザリオの無い砂色の衣の裾が風に弄られた]
―廃墟・ビル内―
…どなたか先客がいらっしゃるのかしら?
いらっしゃった、の可能性もありますけれど…。
[溜まった埃が幾分斑なのを見てとり、ぽつ、と呟く。
靴音をたて階段を上った先、未だ無口な男の影はあっただろうか]
[激しくぶつかりあう音でもない、ただ闘気が相手を食い合うようなぶつかり合いの気配。その位置が近くなり、掴んだところで、近くのビルに入る]
―廃墟ビル二階―
こんな場所でいいでしょっかねぇ。…おや?あれは…クローディアさんに、ケイジさんですねぇ。いやはや
[窓から覗きみた光景には少々驚いたように呟き、さすがに気になったのか。気配を絶ち、注意深く窓から覗き込む。リディアもいたならば同じように気配を消すだろうか]
[しかし、気配を消してても、肉まん(ほかほか)をまたしてもどっかからか出して食べていたらある意味見た目は台無しであるが、それを気にせず、リディアにも食べます?と聞いたりする]
了解。
[ただ、言葉少なに答え。
曲がり角から身体を出し、一直線に目標に向かって走っていく。
前もって言われていた、巻き込んでも良い、と言う言葉に、射線に入られる事も気付いていたのか…影が見えてもそのまま左腕を引いて]
高速歯車駆動《ハイスピードギアワークス》。
[左腕の内部構造の歯車を高速回転させ、本来以上の力を拳に伝導させる。
影と重なる時、自身の身体の捻りと加速力で左腕を前に突き出し…
影諸共、クローディアを吹き飛ばそうと。
一見、シンプルな"突き"を繰り出した]
んー、屋根の上じゃ魚は焼けねぇなぁ。
[少し場違いな心配をして辺りを見渡す]
……なんだぁ?こりゃ…普通の気配と違うんじゃね?
[恐らくは向こうの人影も同じ気配を察しているのだろう。
だが男のいる位置からはそれが何かを把握できずに]
何が起こってんだ?これ。
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