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― 住宅街・路地 ―
『そこかぁ〜ぃ?千恵ちゃあん』
……千恵?
[そこそこ歳のいった男の声。
私はそっと声のする方に近寄った。
どなたかお探し?
そう声をかけようとすると、近くの物陰からひゅんと小石がとんだ。
男は小石を追っていく。
そして、物陰から見慣れた兎が駆け出した]
(千恵ちゃんっ!)
[私は慌てて姪の後を追った]
―礼斗宅―
すーちゃん。
[残っていたコーヒーを飲み干す。
カップをテーブルに置くと、礼斗に向けて頭を下げた]
…お邪魔しました。
私はこれで。
[協力の話を背中で聞きながら玄関へと向かった。
止められなければそのまま外に、水銀灯に向かうつもりで]
[伽矢の返答に少しだけ安心できた。
先を急ぐ伽矢についていく]
誰もいないね。
[そこには子猫の姿は見えず]
伽矢くん、その変なのって襲ってきたんだよね?
それがいっぱいいるなら、千恵ちゃんどこかに逃げてるんじゃないかな?
[すぐに伽矢の後についていきながら]
千恵ちゃん街のこと詳しそうだし、路地とか多い住宅街とか。
[少し考える余裕ができたのか自分の考えを先をいく伽矢に伝える]
[かけられた言葉に気づき、雪夜に顔を向ける]
なんでと言われても、あやのっちが此処に戻りたいという話なんで、付き添いで来たの。
一人でふらつくのも不安だし。
まあ、せったんを信用しておけば、なんとかなるんじゃないかというのも此処にいる理由の一つかな?
[そう言いながらも、少しだけ安心したような顔を浮かべ]
お疲れさん。
[短く、その言葉で締めた]
―住宅街・路地―
[たたたたと、全力で逃げるも足音はどんどん近づいてくる。]
や、やぁ………!
[まさか百華とは気づかずに、逃げるが所詮子供の全力。
あるていど行った所で、すぐに追いつかれた。
じたじた、うさぎと一緒に抵抗する。]
─自宅─
……え?
[黒江から向けられた言葉。
思わず、惚けた声が上がった]
いや、呼んだのは俺みたいなものだから。
……外に出るつもりなら、誰かと行った方がいい。
それで、全く危険がなくなるってわけじゃないだろうが。
[窓の向こうに何を見たのかは知らぬけれど。
念のため、こう声はかけておいた。
……もっとも、誰かといても、完全に危険を避けられるものではないのは、わかっているのだが]
…沢山居るのかはわかんねぇ。
オレが見たのは、一匹だけだった。
[実際に見たのは確かに一匹。
けれどそれを喰らったのも居るため、複数は居るのだろう]
……そうだな、逃げてるかも、知れねぇ。
そっちの方行ってみるか。
後は……まともなのが居れば、見たかどうかも聞けるんだけど。
[居るだろうか、と呟く。
足早に路地を抜け、繁華街の通りに出て。
一旦中継地である中央広場へと足を踏み入れた]
─ →中央広場─
[シンボルツリーである桜の周囲に出来ていた人集りはもはや皆無に等しく。
疎らに人が見えるだけ。
その見える人もまともかどうかの判別をするには時間を要するか]
…瑞穂、あの人らに聞いてみねぇか?
千恵がどっか行ったなら、ここを通ってるはずだし。
[示したのは桜の樹の傍に立つ男女三名。
幸か不幸か、どれも見知った顔ではあった]
好きにすりゃぁいい。
改めて呼ばれるような名もないしな。
[窓の外を見る瑶子を止めるでもなく]
なぁに、別に大したことじゃない。
少し確かめたいことがあるだけだ。
[同時、揶揄ではなく、周囲が少し冷えた]
[神楽の言葉に、はぁぁぁっと大きな溜め息が漏れる。]
………………まったく。ほんとあんた何考えてるんだか。
……って、おい神楽。何だよその理由。バッカジャネーノ。
[そう言いつつ、ついと顔を背ける。短く掛けられた声には、]
…………ああ。
[顔を背けたまま、こちらも短くそう返した。]
―住宅街・路地―
千恵ちゃんっ!
[暴れる姪を抱きしめた。
公園で何かに怯えていた時より、もっと彼女は怯えている。
私には、そう見えた]
大丈夫、ももおばちゃんだよ。
怖くないよ。
[壁にぴったりと背中をつけ、周囲に気を配った。
今の所、こちらに向かってくる気配はなさそうだ]
─自宅─
……確かめたい……こと?
[史人から向けられる言葉。
やや、冷えた空気。
目を細めつつ、それでも動きはしない。
むしろ、何をなそうとしているのか。
それを、見極めよう、という意思がそこにはあった]
―礼斗宅―
…混乱するから、史兄さんのままにしておく。
[礼斗に話す史人から冷気を感じた。
氷、とは声に出さず唇だけ動かして]
誰かと言われても、特に親しい人がいるわけでもないので。
とりあえず下の水銀灯まで行ってきます。
[もしかしたら話だけでは済まないのだろう。
そんな気配を史人から感じていたから、もう一度頭を下げると玄関から外へ出て、小走りに非常階段へと向かった。
カンカンカンという音が響く]
―住宅街・路地―
ふぇ?
も、ももおばちゃ……!
[怯えた表情から一転、ぱああと一瞬、日の差すような笑顔になり、百華にがしっとしがみついた。]
おば、おばちゃ……ちえこわかったよ……!
みずねえちゃの家にいたけど、かやにいちゃが帰ってこなくて、さがしにでたら、飴のおじちゃに追いかけられて……
[ここまでの経緯を言うと、再び怯えに襲われたか、かたかたと震えはじめた。
うさぎもいっしょに震えている。]
さっきまで結構人がいたはずなのにまったく見ないの。
[疑問に思っていたことを口にする]
たくさんは、考えたくないけど…。
とりあえず行って見よう。
[中央広場に向かいながら]
まともなの…?
[伽矢の言葉にさきほどの変なのというのが何を指すのか、なんとなくの思うところがあった。
中央広場につき人の姿を見つけると警戒した様子を見せる伽矢。
思っていたことは確信に変わる。それは人の姿をしてるんだってことが]
うん、あれは…静音さんっ!
[見知った顔の中で一番親しい人の名前を呼んだ。
そちらの方に駆け寄っていく。]
まあまあ、無事に再会できたんだから、とりあえず喜んでおこうよ。
お互い、特にひどいことにもならなかったようだしさ。
[そう言いながら、雪夜が顔をそむけるとニヤけた顔で見つめた]
あら。何、せったん。ツンデレ?
可愛いところあるじゃん。うりうり。
『……』
[そんな様子を見る綾野はやっぱりこのノリについていけないようで、沈黙を守ったまま微妙な表情で2人を見つめていた]
……だろうな。
[人が居ないと言う言葉に、理解しているような風に言う。
オレは喰われた人も見ている。
喰ったモノも見ている。
あれが蔓延しているとしたら、人が減るのは道理だった]
巫女と、あん時の兄ちゃんと……例のおばさんか。
[見たところ、遭遇したやつのような気配は感じられない。
大丈夫そうだ、と駆け寄って行く幼馴染の後を追った]
ほよ?
[自身の名前が呼ばれ、振り返ってみると、そこにはこちらに駆け寄ってくる瑞穂の姿]
おや。みずちー。やっほー。元気?
[なんだか手を振って、まるでいつもと同じ日常であるかのような挨拶をした。
そして、近くにいる伽矢も確認して、微笑む]
良かった。2人とも無事なようだね。
あんま変なところ行くと危ないことになりそうだから、探検も程ほどにしておいたほうがいいよ?
……それどころじゃねぇ。
オレの従妹がどっか行っちまった。
ここを通ってるはずなんだけど、見てねぇか?
[軽薄な態度の巫女に軽く睨みを向けながら、オレは焦りを浮き彫りにしながら言う]
―住宅街マンション前―
[辿り着いた水銀灯の下には何も残っていなかった。
いや、数枚の桜の花弁だけが残されていた]
おやすみ、でいいのかな。
[花弁を拾いながら呟いた。
そのうちに誰かを探すような男の声が聞こえてきた]
―礼斗宅―
あぁ。
……『唯一の生還者』が、本当に人間のままで生き延びたのかどうかをな。
[一歩近付き、礼斗の頬に手を伸ばした]
だから、……避けんなよ?
[にやりと笑み。
掌から、細い棘が伸びる]
…………ああ、まあ。たしかに、な。
[神楽の言葉に、そう言って振り向こうとし。
だが、続いての神楽の言葉に大きく目を見開く。]
…………はぁ!? ツンデレっておまっ。
……ああもう、やめろ。やめろって言ってるだろうが。
[ウリウリしてくる神楽を鬱陶しそうに払う。]
…………あ?
[とその時、神楽を呼ぶ声が聞こえて、目を向け、目を細めてそちらを見る。
片方は見知った顔。]
…………ああ、お前か。
[後ろから聞こえてくる幼馴染の足音を聞きながら]
なんとか、それより静音さん何か知りませんか?
[その口ぶりから周囲の異変には気づいていることは察することができた]
千恵ちゃんがいなくなって、探してるんです。
なんだか街の様子もおかしいみたいですし。
[軽く睨み付ける伽矢をたしなめる余裕も今はなく、
幼馴染に同じく焦っている様子を明らかにしながら話しかける]
[伽矢の言葉に、眉根を寄せて考えた]
うーーーーーーーーん。
私達も、憑魔に襲われて逃げ回っていて、やっとさっき此処に戻ってきたばっかりだからねえ。
ちょっと見かけなかったかな。
力になれなくてごめんね。
[すまなそうに謝りながらも、片目を閉じて、少し周りを見渡す]
ん。でも、最悪な結果にだけはなってないよ。見えないし。
それだけは断言できるよ。
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