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―西殿→東殿・自室―
[暫くすると、ゆらり元の自分の部屋へと戻ってくる。
どことなく疲れているのは気のせいではないだろう。
少し休んでから再び部屋の外に出る。]
……お主、はきとせぬ現状に参ってはおらぬか?
思いつめておるように見えるぞ。
[じ、とミリィを見つめる。眉が顰められたその視線は、心配の念を含んだものであったか。
ティルの頷きを見た直後、動きが止まるような様子に訝しげに]
どうした?
…また何か感じたか?
[焦りにも似た声色で訊ねた。返答を待つ間に、近くに気配が近付くのを感じる。見ればそこには樹竜王の御子の姿]
おや、ベアトリーチェ殿。
如何なされたかな?
この感じ……また?
[呟きは、周囲に届いたかどうか。
それでも、精神の竜の言葉に、は、としたよにそちらを見て]
……恐らく、ね。
それが誰かはわかんないから、いらつくんだけど……。
[言いつつ、軽く頭を振る。
違和感。
昨日も感じたそれは]
……これ、陽光のちまっこの時と……同じ?
て、事はっ!
[低い呟きの後、跳ね上がるよに立ち上がる。
回廊を行くのももどかしい、と思ったか、窓から外へと]
あ、こりゃティル!
窓から出るなどと…!
[突っ込みどころはそこですかと。意識がティルへと向かうが、傍に来たベアトリーチェのことも気になり、その後を追うのは憚られた]
あの、ね。 おじいちゃん。あのね。
[己へ地竜殿が気付いた事に安堵したか、左手に小袋を携えたまま仔は彼の竜の元へと駆け寄った。
そこまで離れれば声は良く聞えねど、はたと気付いた様子の後小袋を地竜殿へと翳しているのを見るに、美味しかった、有難う等の言葉を告げているに違いない。
ふと地竜の近くに居るだろう風竜の様子が常とは異なるのを感じるも、その様子は私からは良く見えぬ。
影竜殿も姿を消した故、居座っても仕方無かろう。仕方無しに椅子の脚を伝い床へと降りた。]
リーチェ、聞きたいことが、あってね。
[地へと降りれば、私の視界は随分と低くなる。僅かに聞える仔の声に僅かな不安を覚えた。四方や、本当に直に聞くつもりではあるまい――否、仔に限って有り得る話ではあるが。]
…思いつめて。
そう、なのでしょうか。
でもあまりに曖昧に進む事が、どうにも耐え難いのですよね…。
[ザムエルの目を少しの間見つめ返し、心配を感じ取れば俯いて手元を見た。
翠樹の竜がザムエルに近づくのを目を細めて見、そのまま空のカップを両手で包み、周りの会話に耳を傾けた**]
―東殿傍―
[突然あがった息は、されどすぐに落ち着き。
ゆるく首を振った。
ただそれだけ。]
[まだ雨は降っている。
いつのまにかびっしょりと、濡れていた。
口唇が、困ったような、そんな笑みの形になる。]
見つける力があったって、止めることもできねぇんじゃ…
[虚空へと消え去った場所を眺めたまま。
気配も、残り香すらもそこにはない。]
[声をかけてくるベアトリーチェに高さを合わせるよう椅子から降り傍へとしゃがみ込んで。掲げられた小袋と共に礼を述べられると、嬉しげに目尻が垂れる]
喜んでもらえたなら何よりじゃ。
して、聞きたいこととな?
[訊ねられようとしていることはおそらく予想の範疇を超えたものとなるだろうか。訊ねたきことの言葉よりも先に漏れ聞こえた、「真似」の言葉には]
…お父上が嘆きなさる故、真似をしてはなりませんぞ。
[流石にあの行動は真似て欲しく無かった]
─ →西殿・結界前─
[制止の声や、仔竜の呟きは届いたかどうかも定かではなく。
雨の中、駆ける先は結界の側。
たどり着いたその場で、呼吸を整え。
風を呼び集めつつ、両手を触れる]
……やっぱ、し。
[微か、感じ取るのは、天聖の気配。
先日感じた、ギュンターからのものとは、違うもの]
天竜の、姉さん……か。
[なお、お前の方が年上だろ、の突っ込みは無用。らしい]
―東殿/食堂―
[属性ゆえか苛烈な電撃の竜の言動に僅かに視線を流し、疾風の竜の答えにまた戻す]
……わかれば話は早いのに、ですね。
[口元に指先を当てたまま同意の頷きを返すと同時、窓から飛び出る姿を見送る。
そして座席に残された黄蛇に気付き、視線をめぐらせて大地の竜にいつの間にか近づいていた翠樹の仔竜に留めた]
…だめ?
たのしそう、なのに。
[萎れる様な声に、内心私は安堵する事になる。
窓から飛び出て行ったのは見て取れたが――まさか真似したいなどと言い出すとは夢にも思わなかった故に。
地竜殿にお止め頂き助かったと云わざるを得ないであろう。]
うん、あのね。
[目線の近しくなった地竜殿を真直ぐに見据えつつ、仔は先を促され地竜殿の耳元へと顔を近づける。――不要に口外してはならぬという言葉に従ったか、さては秘密裏の会話で話すのを気に入ったのやも知れぬ。
何れにせよ地を這い、未だ仔よりも距離を置く私の耳元には声は届かぬ。]
けん、もってる?
すっごい、つよいやつ。
―東殿・個室前の廊下―
[西殿の方を見ていた時、不意に風が動くのが見えた]
あの影は、風竜……ティルの?
[何が起きたのだろう。
感じた胸騒ぎは、徐々にではあるが、膨れて行く。
先に西殿へ向かおうと、踵を返したところで。
部屋から出てきた、命竜の姿が見えただろうか]
なんつーか……わっかんねぇ。
[ぽつり。
雨の中に零れるのは、小さな呟き]
どいつもこいつも……そろいもそろって。
何がしてぇんだよ?
揺らされた連中も、竜王も。
ひそひそこそこそして……ワケわかんねぇよ!
[吐き捨てるよに言いつつ、結界を殴りつける。
鈍い音が、雨の向こうに響いた]
風邪をひきますよ?
[ そっくり同じ口調で、影は言う。
外へと歩み出せば、同じく濡れるのだが。水を含んだ土は普段よりも柔らかく、微かに沈んだ。数歩の距離を置いて立ち止まる。]
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