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[――ぴき。]
[そんな奇妙な音が、傍に控えていたユーディットには聞こえたかもしれない]
誰が、“お姉さま少年”かっ!
[上がった声に、思わず反応。顔を其方へと向け、憤慨した表情]
[冷たい夜風は、色んな意味で火照りきった彼女の頬を程よく冷ましてくれた。
主の後を付いて、柔らかな光に照らされた屋台を見て回るのは、とても楽しくて。
知らず、笑みを浮かべている様は、一歩控えている態度も相まって、微笑ましく映ったかもしれない。]
[…シャラン
銀の輪が鳴る。
ゆっくりと両手にクリスを構え、男たちは彼を包囲する。
振り回され振り下ろされる棒をその手の刃で受け、始まる剣舞は次第に激しさを増していき、
銀の輪の鳴る音と、木と木のぶつかる音が、夜空に響く。]
[広場の片隅にユリアンの姿を見つけ、少女は一瞬、声をかけようかどうしようかと迷う素振り。しかし、決心のつかないうちに、舞台の上に現れた若者に、人々の注目が集まり、少女の意識もそちらに吸い寄せられる]
[声のする方に近づくと…]
ああ…リディに、それに熊少年」に、給仕兼メイドさんがいる。
熊少年、昨日は見事だったな。
[どうやら青年の中で金髪少年は熊少年にジョブチェンジしたようだ]
[突然向けられた憤慨の表情に、思わずきょとん。
一拍おいて、こてりと首を傾げた。
まぁもちろんのこと「ぴき」と言う音は聞いてもいない]
……えーと、君が?
[返すべき言葉が違う。]
…やーえへへー。
だって、エリにぃが君に「姉さん」って言ってたから
その記憶しか無いんだもん。名前もしらないし。
[ゴメンねー?と、へらりと悪びれた様子も無く笑みを向けて]
[三人の騎士姿の男が、同時に棒を振り下ろす。
それを半歩下がって避け、棒の交点を踏んでカタパルトのように高く跳躍。
夜空を切り裂く北風のように舞い、男たちの頭上を跳び越すと、祭壇へと手を伸ばす。
その手に掲げるは、舞姫が捧し花輪。]
……熊少年?
[青髪の――元紅茶男の接近に、目を瞬かせる。
続いた明るい茶の髪をした少女の言葉に、額に手を当て、深々と溜息。
“『お姉さま』少年”に、“熊少年”。一体、どんな見方をされているのか]
僕の名は、ミハエル=フォン=エーデルシュタインだ。
妙な呼び方をしないで貰いたい。
……それと、あの男の話はしない欲しい……
[かなりショックだったらしい。はとこ関係だった事が]
[そんな事を言っているうちに、響く澄んだ銀輪の音に、激しい剣舞の音]
[シャラン、シャラン、と銀の輪が鳴って、若者達の剣舞が激しさを増していく。やがて、掲げられた花の輪を見つめ、少女はほう、と吐息をついて、僅かに目を伏せた]
…大判焼き…もといノーラ
昨日は美味かった、ありがとうな。
[なんだか失礼な認識をしつつ…
エディには手を振りかえし]
[それから、名前を名乗った熊少年ことミハエルに向き直る。]
そうか、ミハエルと言うのか。
名前を知らなかったもので、印象深いもので呼んだ、すまなかったな。
俺はアーベル=エアハルトだ。
…………あの男……
[青年が言葉を続けようとしたが、
響くイベントの開始を知らせる音にそちらを振り向く]
[元気な少女と青い髪の青年の主に対する暴言に、
あわあわしつつ見守っていれば。
激昂したと見えた主は、少しげんなりしたかのように名を名乗って。
慌てて彼女も後ろでぺこりと頭を下げる。]
[ふいに響いた剣戟の音に振り向けば、昨夜彼女の髪を飾った花冠が高く掲げられていて。
思わず目が引き寄せられる。]
[振り返ると、丁度向こうも此方を見ていたので軽く会釈。勿論相手が大判焼きを思い出してるなんてちっとも知らない]
[そのまた先には先程の声の発生源]
…と、あの子は…リディちゃん?
[金髪の少年と話す茶髪の少女を見るのは久しぶりのことだった]
[背後では舞台からの音が響いてくる]
[馬屋の中、柵に肘をついて愛馬を見遣る。
何やら妙にご機嫌な]
…何があったんだ、一体。
[問いかけても馬が話せる筈も無く。
今にも鼻唄を歌い出しそうな雰囲気を纏うばかり。
何かしてやった覚えはないのにこの上機嫌。
ぐったりと伏せて溜息を吐く男の頭を馬が小突いて。
じと目で見上げれば馬はふんと息をした]
ふむ? ミハ君ね、おっけーい。覚えた覚えた。
[親指と人差し指で丸を作って、了解の意を示す。
しかし、呼び名が許可も無く渾名に変換されている辺り全然オッケーでもない。
…とエーリッヒの話題に声が沈むのを見れば、
小さく首を傾げながらも、あの行動に引いたのかと勝手に納得して。
……まさか血縁関係だとは思いも寄らない]
あたしはリディ。リディ=ティーレマン。よろしくっ!
あ、折角だしお詫び?にコレあげる。甘いもの好き?
[へらりと笑って名を名乗れば、思いついたように
手に持っていたウサギの細工飴を半ば強引に握らせる。
と、剣戟の音が耳に届けば、音のほうへと視線を向けて]
…あ、噂をすれば、ってやつだね。
エリにぃの出るヤツが始まったっ!
[今から競争が始まるのだと気がついて、少女は、一緒にいた子供の手を引いて、危なくなさそうな場所を探して下がる。去年もついでに告白してしまおうと勢い込んだ若者が数人飛び入りで駆け込んでいって、沿道はなかなかの騒ぎになったのだ]
ん、動き出す、な。
[呟きつつ、場所を変えて行く。
色々な意味で熱狂を招くこの出し物、見るのは結構、好きな方で。
なるべく、最前列を維持するようにいるのがいつもの事なのだ]
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